経済

「利上げしたらインフレになる」ケルトンの珍理論

MMTの提唱者であるステファニー・ケルトンが日本に来て、マスコミ各社を集めた記者会見を開いた。質問が集中したのはインフレの部分だ。彼女は「20年デフレが続く日本でインフレの質問ばかり出てくる」と笑っていたが、それは彼女のインフレについての説明が破綻しているからだ。



続きはアゴラで。

世代間格差は「誤解」ではない

朝日新聞が「年金、誤解の果ての不信」という記事を電子版で掲載している。何かと不安をあおる朝日には珍しく、政府の年金政策を擁護する記事だ。何が誤解かというと、公的年金を「払った分受け取れる私的年金と混同」しているのだというが、そんな誤解をしている人がどこにいるのか。

世代間格差を問題にしている多くの経済学者は、公的年金を私的年金と同じにしろといっているのではない。今の賦課方式の年金制度が、超高齢化する社会では将来世代との受益と負担の格差を拡大するといっているのだ。

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朝日新聞(少なくともこの記事を書いた太田啓之という記者)の考え方は厚労省の年金マンガと同じだが、厚労省も世代間格差がないとはいっていない。格差はあるが、公的年金は保険だから金銭の損得で判断してはいけないというのだ。これは奇妙な話である。保険を金銭で判断しなかったら、何で判断するのだろうか。

朝日新聞は「世代間格差は受け入れざるを得ない副産物」だというが、これは嘘である。年金制度としては積立方式もある。積立方式だと原理的には世代間格差をなくすことができるが、別のコストが発生する。それは費用対効果の問題である。賦課方式のメリットは、将来世代との生涯所得1億円の格差に見合うのだろうか。

続きは7月22日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

「素朴ケインズ主義」に転向するアベノミクス

アベノミクスの指導者である浜田宏一氏が、MMTを意外に高く評価している。MMTは彼が1970年代に教えていた(私も学生として聞いた)素朴ケインズ主義である。おもしろいのは、彼がリフレ派を卒業したと明言していることだ。
金融緩和の効果がいろんな意味で薄れてきているのは事実です。デフレ脱却では、金融政策だけでなく財政政策も両方が必要なことは、私も「シムズ理論」にふれるまでは、十分、理解していたわけではありませんでした。
そして「私も国際的なマネタリズムという視点でみてきたわけですが、なかなか貨幣の需給だけでは説明が十分でないところが出てきています」という。「国際的なマネタリズム」という言葉は初めて聞いたが、たぶんかつて彼が力説していたマンデル=フレミング理論のことだろう。

これは「変動相場制では財政政策はきかないが金融政策はきく」という理論だが、実際に起こったのはその逆だった。その原因は単純である。金利がゼロに張りついた状況では、利下げで円安にもインフレにもできないからだ。彼もようやくそれを認めたわけだが、こうして誠実に間違いを認める人は少ない。

リフレ派は今、MMTを否定する分派と転向する分派で大混乱だ。財政政策の効果を認めない原理主義的リフレ派は旗色が悪く、間違いを認めないで「本当のMMTはリフレ派と同じだ」と称して転ぶ上念某のような手合いが多い。今後アベノミクスも「第2の矢」の財政政策に重心を移すだろう。

続きは7月22日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

どうやって「減らない年金」にするの?

参議院選挙で年金問題がよく話題になりますが、肝心の年金制度をどう改革するのかという政策がはっきりしません。ただ一つ「年金を減らさない」と明確に公約に掲げているのが共産党です。どうやって減らない年金にするんでしょうか?

それは簡単です。年金を減らすマクロ経済スライドという制度を廃止するのです。これによって「年金が7兆円減るのを防げる」と共産党は主張しています。マクロ経済スライドという言葉は何のことやらわからないと思いますが、日本年金機構の説明によると次のような制度です。
賃金や物価による改定率から、現役の被保険者の減少と平均余命の伸びに応じて算出した「スライド調整率」を差し引くことによって、年金の給付水準を調整します。
これでもよくわかりませんね。簡単にいうと、これは共産党のいうように年金を減らし続けるしくみです。図1のように、本来は上がるはずの年金支給額(実質)を減らすのがマクロ経済スライドですが、役所が「減らす」という言葉を使わないのでややこしいのです。

図1

続きはアゴラで。

誰も負担しない「見えない賃金税」

今度の参議院選挙の最大の争点は年金問題だが、公約で「マクロ経済スライド廃止」という方針を明確に打ち出している共産党以外は、どう改革するのか(あるいはしないのか)わからない。自民党に至っては、金融審議会の「年金が2000万円足りない」という報告書の受け取りを拒否して、事実も認めない。

その一つの原因は、今の公的年金の負担感が少ないためだろう。国民年金は税で補填されるので年金保険料より給付のほうが多いが、厚生年金にはトリックがある。その保険料は2017年に18.3%で打ち止めになったが、サラリーマンの源泉徴収票に出てくる数字はその半分、つまり9.15%である。

ところがサラリーマンの実際の負担はそれより大きい。次の図は鈴木亘氏の試算だが、ざっくり言って今の50歳以下は年金の払い損になる。これは保険料というより賃金税と考えたほうがいいが、その負担感は実際より小さい。

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このトリックのタネは単純だ。社会保険料の半分を事業主負担としてサラリーマンを雇う会社が負担しているからである。しかし会社からみると事業主負担も人件費なので、そのほとんどは労働者に転嫁される。つまり社会保険料の分だけ手取り賃金が下がるのだが、その負担の半分は見えない。

続きは7月15日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

日本には「よいバブル」が必要だ

バブルは事前にわからないといわれるが、そんなことはない。1980年代後半の地価は収益還元価格(理論地価)の数倍になっていた。不動産業者も賃料で回収できないことはわかっていたが、高値で転売できればいいと割り切っていた。バブルは自己実現的な均衡であり、それが実体経済と一致する必要はないのだ。

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バブル期の地価(日本不動産研究所の推定)

1990年代末のITバブルでも、ドットコム企業の株価が将来の収益で正当化できない水準に上がり、そのほとんどは消滅した。しかしアマゾンもヤフーもグーグルも、ITバブルがなかったら生まれなかった。日本の楽天もソフトバンクも、ITバブルで成長した企業である。アップルもマイクロソフトも、1970年代のPCバブルで生まれた。

アゴラにも書いたようにバブルは悪ではない。借金ができるのは「貸したカネが金利をつけて返ってくる」とみんなが信じるバブルのおかげで、誰もそう信じないと企業は現金だけで経営しなければならない。企業が萎縮して銀行は国債を買う悪いバブルが、この20年の日本経済である。

どんなバブルでもいいわけではない。PCバブルやITバブルで生き残った(ごく少数の)新企業は、急成長してグローバル企業になったが、日本の不動産バブルは銀行の不良債権を残しただけだった。今の国債バブルも、非効率な社会保障や公共投資を残すだけに終わるおそれが強い。

続きは7月15日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

史上最大の「国債バブル」をゆるやかに崩壊させる方法

バブル崩壊は10年ごとにやってくるというが、今のところ2008年のリーマンのような大型のバブル崩壊(金融危機)の兆候はない。日本国債のマイナス金利は20世紀の常識で考えるとバブルだが、それが崩壊する兆候もみえない。それどころか、国債を長期保有している邦銀は大もうけしたはずだ。


10年物国債先物の価格(右軸)JPX調べ

これは10年物国債先物の価格だが、1990年に87.08円だった価格が2015年には148.68円。バブル崩壊直後から70%ぐらい値上がりした。日本国債は世界史上最大のバブルといわれる所以である。

続きはアゴラで。

インフレ目標から名目成長率目標へ

安倍首相が党首討論会で、消費税の10%を超える増税について「安倍政権でこれ以上引き上げるとはまったく考えていない」と明言し、「責任を持てるのは安倍政権(の間)だが、例えば今後10年間ぐらいの間は上げる必要はないと思う」とのべた。これは当たり前のようだが、大事な約束である。10月の増税のとき、税法に明記してはどうだろうか。

ただ今までの消費増税のように法律を改正すれば変更できるので、その条件をつけるのだ。たとえば2028年までにプライマリーバランス(PB)を黒字化するという今の中期財政計画を変更し、「名目成長率が4%を超えるまでPBの赤字を減らさない」という名目成長率目標を設けてはどうだろうか。

 名目成長率=実質成長率+インフレ率

だから、今のようにインフレ率が1%未満だったら、実質成長率が3%を超えるまでPBは黒字化しない。インフレ率が2%になっても成長率が2%未満だったら、金融引き締めをしない。したがって日銀のインフレ目標は廃止する。これは政治的には論議を呼ぶだろうが、Woodfordの提案している名目GDP目標と同じような考え方だ。

ただ金融政策で長期の成長率を動かすことはできないので、この目標を実行するには統合政府のバランスシートを一体としてコントロールする制度が必要だ。財政政策は財務省の権限だが、これには政治的バイアスが強いので、財政を監視する独立行政委員会をつくって統合政府のB/Sをコントロールする必要がある。

続きは7月8日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

長期停滞は本当に長期の問題なのか

長期停滞の現象はゼロ金利とか低成長とか低インフレとかいろいろあるが、本質的な問題は一つしかない:それが一時的な循環か構造的な停滞かということだ。それは誰にも断定できないが、確実に予想できるのは人口減少である。次の図は今後の生産年齢人口増加率の予測だが、2040年まで下がり続け、マイナス2%に近づく。これが長期停滞の最大の原因である。

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2060年までの生産年齢人口増加率の予測(出所:国立社会保障・人口問題研究所)

「マイナス金利になるのは日銀が国債を爆買いしているからだ」という人がいる。そういう面はあるが、現実の実質金利が(実体経済で決まる)自然利子率とそれほど大きく乖離しているとは思えない。金利が人為的に自然利子率より低く設定されたらインフレになるはずだが、インフレ率は1%に満たないので、自然利子率も実質金利に見合う水準(マイナス)だと思われる。現に日銀の資産買い入れは減っているが、長期金利は上がらない。

自然利子率はおおむね潜在成長率に等しいので、生産性が上がると自然利子率も上がる。生産性上昇率は予測がむずかしいが、これを技術進歩率で近似すると、日銀の予測では、自然利子率はベースラインで2060年までに0.5%程度だが、現実の自然利子率はマイナスで、次の図の緑の点線に近い。サマーズの「自然利子率は今後50年マイナスが続く」という予測も荒唐無稽とはいえない。

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2060年までの自然利子率の予測(出所:日銀)

つまり日本の超低金利は、かなり遠い将来まで続くと予想される。それは停滞というマイナス面だけでなく、財政赤字が増えても金利が上昇しないというプラス面もある。アゴラ経済塾「長期停滞の時代」第2部では、日本の長期停滞が今後どうなるのか、どうすればそれを脱却できるのかを歴史的な視野から考える(教室受講の申し込みは木曜午前中まで)。

続きは7月8日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

「物的資本主義」の時代は終わった



マイナス金利が構造的な長期停滞の兆候だとすれば、それは資本主義の黄金時代が終わったことを暗示している。ロバート・ゴードンもいうように、物的資本を投下して収益(金利)を生む産業革命以来の物的資本主義は終わったが、その後に来るのも資本主義だろう。

しかしこれから価値を生むのは物的資本でも人的資本でもなく、情報や権利などの無形資本である。それが半導体としてハードウェアになるか、文字列としてソフトウェアになるかは本質的な問題ではない。重要なのは、それをコントロールするルールである。「知的財産権」は情報の配分に大きなゆがみをもたらしたが、それよりましな制度は実用化できない。

市場経済が「資源の効率的な配分」をもたらすので、政府の役割は外部性などの例外的な「市場の失敗」を補正することだけだという新古典派の物語の適用範囲は、最初から限られていた。この物語の元祖とされるロナルド・コースは、実は社会的コストの問題を財産権で解決することには限界があると述べていた。市場では財産の初期分配を決めることができないからだ。

7月5日(金)からのアゴラ経済塾「長期停滞の時代」第2部では、こうした問題をみなさんと考えたい(申し込みはまだ受け付け中)。

続きは7月1日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。






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