経済

消費増税も軽減税率もポイント還元も中止しよう

有地浩氏の記事に私も同感だ。長期的には消費税の増税は必要だが、今回の増税案は軽減税率やポイント還元など複雑怪奇になり、消費税の最大のメリットである「一律で透明な税」という特長がなくなった。

政府債務を削減することは必要だが、ゼロ金利では優先順位は高くない。政府債務が増加した最大の原因は社会保障給付の増加だが、それを削減できないとすると、負担増にはざっくりいって次の三つの方法がある。

・消費税の増税
・社会保険料の増額
・国債の増発

続きはアゴラで。

毎月勤労統計と原発の「脆弱性」

アゴラの記事には、SEのみなさんから大きな反響があって「いいね!」が6000以上ついた。「COBOLが悪いわけじゃない」というコメントも湧いてきたが、私はそんなことを書いていない。これはプログラミング言語の問題ではなく、レガシーシステムの脆弱性の問題である。

これはタレブの指摘した問題で、システムが大きくて冗長性の小さい銀行や霞ヶ関にみられる。絶対に事故が起こらないように多重の安全装置がついているため、誰もが「安全神話」に呪縛され、事故が起こったときの対策を考えていない。そういう「まさか」と思うような事故はめったに起こらないが、起こると大事故に発展する。

その典型が原発事故である。1961年に原子力損害賠償法ができたとき、国の最大補償額は50億円だった。それでは足りないだろうということで1200億円まで増額されたが、福島第一原発事故の賠償額は8兆5000億円を超える。こういうテールリスクは、通常の確率論で考えることができないのだ。

続きは1月28日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

毎月勤労統計の「抽出率逆数」の謎

厚生労働省の毎月勤労統計調査の不正事件で、政府は予算案を修正する異例の閣議決定を行った。厚労省の発表によると、従業員500人以上の企業について2004年以降、他の府県では全数調査を求める一方、東京都だけはその1/3の企業の名簿で抽出調査をしていた。

これ自体は大した問題ではない。抽出率の逆数3をかけて集計すれば、精度は落ちるが、サンプルに偏りがなければ平均賃金は大きく変わらない。ところが厚労省は東京都の抽出調査を全数調査と偽り、他の県の全数調査の数字と単純に合計したため、賃金の高い東京の比重が下がり、全国の平均賃金が過少に集計された。

続きはアゴラで。

政府債務は「輪転機ぐるぐる」で解決できるか

6年前、安倍首相が「輪転機をぐるぐる回して日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう」と宣言したとき、多くの経済学者は嘲笑した。そんなことをしたらハイパーインフレになって財政が破綻する、というのが経済学の常識だからである。しかし最近は状況が変わってきた、とEconomistは指摘している。

日銀は「輪転機ぐるぐる」で資産を激増させたが、インフレは起こらず、長期金利はゼロに近づいている。もしこの状況が永遠に続くとすれば、増税は必要ない。政府支出を増やして中央銀行が国債を買えば、子会社が親会社の社債を買うようなもので、統合政府のバランスシートで考えると問題ない――そう主張するのがMMT(Modern Monetary Theory)である。

これは日本でいうと財政バラマキを求めるネトウヨに近いが、アメリカではバーニー・サンダースなどの民主党左派に支持されている。「政府がすべての人の最低所得を保障し、財源が足りなければ紙幣を印刷すればいい」というわけだ。そんなことをしたらハイパーインフレになるという批判に対して、彼らは「インフレになったら印刷をやめて増税すればいい」という。

MMTはバカバカしいようにみえるが、本質的にはFTPLと同じトートロジーだから、論理的には間違っていない。金利が上がると危険だが、むしろゼロ金利でも貯蓄過剰になっている日本では、民間の代わりに政府が投資するという発想は、まったくナンセンスともいえない。問題は、この財政インフレを政府がコントロールできるのかということだ。

続きは1月21日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

リフレ派と財政タカ派の敗北

アゴラを創立した2009年1月には、まだ「リフレ論争」があった。経済学界では2000年代前半に論争があり、理論的には効果がないことがわかっていたが、やってみる価値はあった。日銀も福井総裁の時代に世界初の「量的緩和」を始めたが、だめだった。しかし「リーマンショック」で論争が再燃し、政治家がまた騒ぎ始めた。

民主党政権は日銀を敵視し、副総裁や審議委員の人事に拒否権を発動した。安倍政権も日銀総裁や審議委員にリフレ派を起用したが、やはりだめだった。最近は彼らもリフレとはいわなくなり、財政拡大派のネトウヨと合流したようだが、いまだに政治家には人気がある。その原因は考えてみる価値がある。

いつの時代にも拡張的な財政・金融政策は人気があるが、長期的にはインフレが起こって誰もが損する、というのがフリードマンの自然失業率の理論だった。これで「ケインジアン対マネタリスト」の論争には決着がついたが、21世紀にはこういう古典的な理論で説明できない状況が起こっている。

景気刺激を続けても、よくも悪くもインフレにならない。金利が上がって財政が破綻するという状況も起こらない。この意味でリフレ派だけでなく、財政タカ派も敗北したのだ。効果はないかもしれないがコストもないなら、インフレが起こるまで実験してみればいい(起こったら止めればいい)という安倍政権の発想は成り立つが、問題はなぜこうなったかわからないことだ。

続きは1月14日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

「モラルハザード」という危険な神話


平成の30年を振り返ると、日本経済の最大の危機は1990年代の不良債権問題だった。その話がいろいろなメディアで出てくるが、同時代に取材した者としては違和感を感じる。今月放送されたNHKスペシャル「バブル 終わらない清算」も「平成史スクープドキュメント」というタイトルが恥ずかしくなるものだった。

この番組が取り上げた1997年11月の山一証券の破綻は、たしかに不良債権問題が「爆発」するきっかけだったが、その原因は山一が「飛ばし」を隠したからではなく、それを破綻処理したからでもない。大蔵省の長野証券局長が「自主廃業」という前代未聞の処理で山一を消滅させてしまったからだ。

この事件のちょっと前に長野氏に討論番組に出演してもらったことがあるが、彼は「金融ビッグバン」の急先鋒で、不良債権処理を機に日本の金融機関を抜本的に改革しようと考えていた。彼は「ビッグバンは仲介者の問題ではない」と強調し、「モラルハザードをまねく護送船団方式から訣別する」という決意を語った。

彼にとって山一の破綻は、ビッグバンの実験場だった。その破綻処理は不可避だったが、山一の社員は会社更生法で再建されるだろうと思っていた。ところが長野氏は、山一の野沢社長に「金融機関としてこんな信用のない会社に免許を与えることはできない」と宣告した。それは護送船団方式から訣別してモラルハザードをなくす決意だったのだろう。

続きは12月31日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

安倍政権の「一国ケインズ主義」はなぜ挫折したのか

アゴラが2009年1月1日にスタートしてから間もなく10周年になるが、この10年の世界経済の最大の課題は「リーマンショック」からの回復だった。アメリカは未曾有の危機を乗り切ったが、日本のアベノミクスは空振りに終わった。

それでもこりない安倍政権は、来年度予算でも「ポイント還元」などのバラマキを続けている。こういう一国ケインズ主義は20世紀のレガシーだが、日銀の黒田総裁も経産省の官僚も、その欠陥を理解していない。

続きはアゴラで。

バブル崩壊は防げないが金融危機は防げる

バブル崩壊は10年ごとにやってくるという経験則から考えると、来年は危険信号だ。相場の動きも不気味になってきた。NYダウは10月の最高値から20%近く下げ、日経平均も昨年末より下げて終わった。バフェット指数(時価総額/名目GDP)でみると、ダウは2013年以降は一貫して割高で、今でも2008年の「リーマンショック」前より高い。

キャプチャ


このチャートを見てもう一つ気づくのは、今年の相場が2000年のITバブルに似ていることだ(時間軸の違いに注意)。株価でみるとアメリカの戦後最大のバブルはITバブルだったが、その後遺症は3年ぐらいで終わった。それに対してリーマンショックの後遺症は今も世界的に残り、金余りの中で長期停滞が続いている。

ITバブルとリーマンの違いは、前者が株式市場で起こったのに対して、後者が債券市場(住宅ローン)で起こったことだ。株価は値下がりしたらあきらめるが、債務不履行になると債務者は破産して資産が差し押さえられ、企業は倒産し、銀行は債務超過になる。銀行預金は元本を保証しているので取り付けが起こり、社会全体に危機が波及する。

金融危機の本質は取り付けなので、資産価格の崩壊は防げないが、金融危機は(理論的には)防げる。取り付けの原因は決済機能をもつ銀行が企業に融資してリスクを取ることにあるので、コクランの提案するように、金融機関を決済専門の「ナローバンク」とリスク資産を扱う「投資銀行」に分割し、ナローバンクにはリスクテイクを禁止すればいいのだ。

続きは12月31日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

日本人が豊かになれない単純な理由

株式市場が世界的に変調を来している。私の金融資産の8割はドル建ての投信なので、かなり売ったが、この10年で(ドル高効果も含めて)2倍ぐらいになった。ところが日本人の家計金融資産は、この20年で1.47倍にしかなっていない。同じ時期に、アメリカ人の金融資産は3.11倍になった。

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米英日の家計金融資産(金融庁調べ)

これほど大きな差がついた原因は明らかである。日本人が金融資産の51%をゼロ金利の銀行預金で運用しているからだ。アメリカ人の預金比率は13%で、株式・投信が29%だ。その(労働所得を除いた)運用リターンだけで、20年間に2.32倍になっている。日本人が豊かさを実感できない大きな原因は、この現金志向にある。

政府がキャッシュレス決済の「ポイント還元」などの政策で現金志向を是正しようとしているが、決済なんて大した問題ではない。最大の問題は、金融資産の60%以上をもつ高齢者の現金志向が特に強いため、高齢化で個人投資家が減っていることだ。ゼロ金利と長期停滞はその結果であり、日銀がいくら資金を供給しても変わらない。

続きは12月31日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

社会保険料は「社会保障税」と呼ぶべきだ



消費税を2%増税するかどうかは、日本経済全体からみると大した問題ではない。ネトウヨは「景気が悪くなる」と騒ぐが、増税で可処分所得が下がるのは当たり前だ。実質可処分所得は1997年から下がり続けているが、その最大の原因は消費税ではなく、社会保険料(特に年金保険料)の「増税」である。

厚労省によると国民年金は「払った保険料の平均1.5倍受け取れる」ことになっているが、その財源の半分(75%)は税金だから、あなたが払った年金保険料の75%しか返ってこない。これは保険ではなく、平均25%損する競馬と同じ公営ギャンブルであり、収益率は超高齢化でさらに悪化する。

賦課方式の年金保険料は税と同じで、健康保険料も介護保険料も強制加入の税だが、天引きで「痛税感」がないので、保険だと思って素直に払う人が多い。消費増税は政権をゆるがす大事件だが、社会保険料の引き上げは厚労省令だけでできる。この制度的なバイアスが、消費税をめぐる混乱の原因だ。

社会保障負担をどう呼ぶかは各国で違うが、アメリカでは年金以外の社会保険料は「給与税」(payroll tax)と呼ばれている。日本でも「痛税感」を強めるため、年金保険料を含めて社会保障税と呼ぶべきだ。半分近くを税金でまかなう社会保障特別会計は、もはや特別会計とはいえないので、一般会計と統合することが望ましい。

続きは12月10日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。






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