経済

「有事の円買い」はなぜ消えたのか

1ドルは119円台になり、120円を抜くのは時間の問題である。特にロシアのウクライナ侵略以降、円は5円も下がった。これは珍しい現象である。普通は世界経済が不安定になると、円は買われる。図のように名目為替レートが1ドル=80円前後の最高値になったのは、1995年と2011年だった。

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名目為替レート(赤・左軸)と実質実効為替レート(青)日銀

2011年の円高を安倍政権は「デフレが原因だ」と考え、黒田日銀は「異次元緩和」を実施したが、これでは1995年の円高は説明できない。その原因は、上の図のように実質実効レート(全通貨に対する円の実質レート)をみればわかる。

1990年代前半に実質実効レートが最高値をつけた原因は、ヨーロッパにあった。90年代に日本ではバブルが崩壊したが、東ヨーロッパでは国家が崩壊し、政府や企業のデフォルトが続出した。このためヨーロッパの債権のリスクが大きくなり、安全な円が買われたのだ。

同じ現象は、2008年のリーマンショック以降も起こった。このとき日本の輸出産業は大きな打撃を受け、成長率はマイナスになったが、2011年にドル円は史上最高値の79円台になった。このときは、アメリカの金融危機でドル建ての不良資産を売った資金が円に逃避してきた。

こうした過去の経験則からみると、ヨーロッパで深刻なエネルギー危機が起こっている今は、その打撃が相対的に少ない円が上がってもおかしくないが、円は下がり続け、実質実効レートは史上最低だ。これはなぜだろうか。

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ウクライナがロシアに降伏するのは「合理的」である


こういう無抵抗平和主義を今回いう人はさすがに少ないが、まだ一部にいるようだ。これは論理的には、それほどナンセンスな話ではなく、人質問題というゲーム理論の例題である。テリー氏はこういう。
このまま行くと、プーチンのことですから、さらに攻撃をするってことは民間人の死者がどんどん増えていくってことが現実になっていく時、私はそれは一番いけないことだと思うんですよね。命を落とすことをいとわないという考え方は避けたい。

これに対してウクライナ人のゲストは激怒したが、テリー氏を説得できなかった。彼の話は論理的には間違っていないからだ。ウクライナが降伏して人的被害を最小化することは、事後的には合理的なのだ。これを簡単な展開形ゲームで考えてみよう(数字はロシアとウクライナの利益)。

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まず先手のロシアが撤退して原状回復すれば、上のように両国ともプラスマイナスゼロだ。問題はロシアがウクライナを占領したまま「クリミアの主権を認めろ」とか「東部の独立を認めろ」などと要求したときのウクライナの選択である。

ここでウクライナが要求をのんで降伏すると、ロシアはAの利益を得るが、ウクライナは-Aの損害をこうむるとしよう。ウクライナが要求を拒否して戦争を継続すると、ロシアは-1の損害、ウクライナは-Bの損害をこうむるとする。

ここでウクライナの降伏が合理的になる条件は、降伏による損害Aが戦争継続による損害Bより少ないとき、すなわち

 A<B

である。これはウクライナの戦力が、ロシアに大きく劣る場合は成り立つ。テリー氏がいうように、ウクライナ人が無駄死にするより、プライドを捨てて停戦すれば、人的被害は少なくなるのだ。

これが橋下徹氏や玉川徹氏などもいう論理で、事後的には正しい。降伏によってロシアは利益を得るとともに、ウクライナは損害を最小化できる。どちらのペイオフも改善するという意味で、降伏はパレート改善なのだ。
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自国通貨建て国債がデフォルトするとき

ロシア国債が、デフォルトの危機に直面している。ブルームバーグによれば、ロシア政府は2日、ルーブル建て国債のクーポン支払いを実施したが、ロシア中央銀行が外国への送金を禁止したため、外国人がクーポンを受け取れず、売却もできない。

外国人投資家は約3兆ルーブル(約3.4兆円)相当のルーブル建て国債を保有しているが、ルーブルはウクライナ侵略の前から30%以上暴落し、1ドル=110ルーブルを超えた。ロシア国債のCDSプレミアムは、2008年の金融危機のときの10%に近づいている。

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「自国通貨建ての国債はデフォルトしない」というのがMMTのセントラルドグマだが、ロシア政府は2回目のデフォルトをするおそれが強い。1998年のデフォルトについてMMTは「ルーブルがドルにペッグしていたので為替レートをコントロールできなかった」と言い訳しているが、今回のように変動相場制でもデフォルトは起こるのだ。

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LNGに依存したエネルギー政策を転換するとき


ドイツのショルツ首相は、ロシアからのパイプラインで供給されている天然ガスへの依存度を下げるため、エネルギー政策を大きく転換する方針を示した。ハーベック経済・気候保護相(緑の党)は、原発の運転期限延長を検討していると明らかにし、石炭火力の運転延長についても「検討においてタブーはない」と強調した。

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ロシアのウクライナ侵略で「天然ガスショック」がやってくる



ロシア軍はウクライナ国内のパイプラインへの爆撃を開始し、ヨーロッパのガス先物は4日間で41%も上がった。


ヨーロッパのガス先物価格(ブルームバーグ)


これは1973年の第4次中東戦争に似ている。当時アメリカ政府はベトナム戦争で大きな赤字を抱え、インフレになっていた。そこに1973年10月のOPECの原油輸出禁止で原油価格が一挙に4倍になり、世界のサプライチェーンは大混乱になった。

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コロナ対策の「全体最適」を考えなおせ

最近、政府の新型コロナ分科会のメンバーである大竹文雄氏が、分科会で蔓延防止措置の延長に反対意見を述べたことが話題になっている。

その内容はおおむね妥当なものだ。大事なことは、感染対策と社会経済活動との間にトレードオフがあるという認識だ。感染の被害が甚大な緊急時には、感染対策を優先させて失業や自殺などの被害を無視する判断もありうるが、今のオミクロン株については、そんな緊急性があるとは考えられない。

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自社株買いで株価は上がるのか

岸田首相が国会で「株主還元という形で成長の果実等が流出しているということについてはしっかりと受け止め、この現状について考えていくことは重要」と答弁したことで、株式市場がざわめいている。首相が持論の自社株買い規制に踏み込んだとも受け取れるからだ。

自社株買いについては誤解が多い。首相のブレーンといわれる原丈二氏はこう述べている。

自社株買いは会社法が商法の時代には禁止されていた。今もドイツでは禁止だ。自社株買いは資本主義の大原則に反している行為だが、常態化して多くの会社が使っているので、商法の時代に帰るわけにもいかない。原則として自社株買いをどこまで認めるのか、これから議論するのが重要だ。

これは事実誤認である。ドイツでは1998年に自社株買いは解禁された。「資本主義の大原則に反している」というのも意味不明だ。自社株買いは配当と同じ株主還元策である。日本で商法の時代に禁止されていたのは、自社株買いで株価を上げることができると思われていたためだが、これは誤解である。

それを会計の教科書にも書いてある図でみてみよう。企業のバランスシートを単純化して、図の左のように事業資産が8億円で現預金が2億円あり、株式が7万株で1株1万円だとする。

自社株

この現預金で会社が株主から2万株の株式を買うと、図の右のように時価総額は5億円になるが、株式も2万株減るので、5億円÷5万株=1万円で株価は同じだ。ところが現実には、自社株買いで株価が上がることが多い。それはなぜだろうか?

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国民負担率って何?

2021年度の国民負担率が過去最大の48%になったという数字が、意外に反響を呼んでいます。これは今に始まったことではないのですが、「五公五民だ」などという誤解もあるので、ちょっと解説しておきましょう。

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ジョブ型雇用って何?

このごろ日本の雇用慣行についてジョブ型雇用という話がよく出てきます。たとえば日立製作所が今年7月から、全世界の社員30万人をすべて「ジョブ型人事」にすると発表したことが話題になりました。


fizkes/iStock

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国債バブルって何?

世界的にインフレになる中で、各国の中央銀行が金利を引き上げる動きが出ていますが、日銀は国債を買い支える指し値オペを宣言しました。これはバブル状態になっている国債を買い支えようということでしょうが、よい子のみなさんにはむずかしいので簡単に解説しましょう。



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