経済

新しい独占資本主義?

バイデン政権の大きなテーマは、巨大企業との対決である。ウォーレンやオカシオ=コルテスなどの民主党左派は、格差の元凶として敵視するGAFAを分割しようとするだろう。10月には司法省がグーグルを反トラスト法違反で提訴したが、この背景には独占についての考え方の変化がある。

マルクスは資本主義は必然的に独占に向かうと予言し、20世紀前半は彼の予言が当たったようにみえた。企業は垂直統合されてGMやIBMのような巨大企業が世界を支配し、競争政策も独占企業を分割することがテーマだった。

しかし1980年代から巨大企業は没落し、マイクロソフトやアップルなどの新しい企業が恐竜を倒した。インターネットで新しいスタートアップがたくさん登場して企業は競争的になると思われ、規制改革で参入を自由化して競争を促進することが競争政策の主流になった。

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アメリカの公開企業の利潤率(青線)と上位5社の売り上げ比率(右軸)

ところがインターネットの生み出したGAFAは、国境を超えた超独占企業になった。これはIT業界だけではない。図のようにアメリカの各業界上位5位までの企業の売り上げ比率は、2000年代に大きく増えてほぼ50%になり、労働分配率は下がった。

しかし成長率は上がらず、投資は減り、金利はマイナスになった。大企業はもはや成長のエンジンではなく、その敵だという考え方が、最近の反企業的な動きの原因だろう。しかし本当に企業の独占レントは増えたのだろうか?

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マイナポイントで「使わないと消える給付金」ができる

政府は年内にも10~15兆円の第3次補正予算を組む見通しだが、GoToのような裁量的補助金は政治的ゆがみが大きいので、これ以上やるべきではない。特別定額給付金10万円のような直接給付が望ましいが、これは麻生財務相のいうようにほとんど貯蓄に回り、貯蓄率は45%にのぼる。



現状ではまだ大きな需給ギャップがあるので追加給付が必要だが、これも貯蓄されては意味がない。それを消費に回すしくみとして、永江さんの提案したマイナポイントを使う給付金という案はおもしろいと思う。

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経済学は「科学革命」の前夜か

リフレ派がいなくなったと思ったら反緊縮やらMMTやら、ニセ経済学の種は尽きない。その最大の原因は、20年以上ゼロ金利が続いていることだろう。「財政赤字が大きくなると金利が上がり、財政が破綻する」と主流派の経済学は警告してきたが、何も起こらなかった。これは日本だけの現象ではなく、今はアメリカでもコロナ対策で世界金融危機の2倍の財政赤字が出ているが、何も起こらない。

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このように経済学の常識に反する現象が続くのは、1970年代のスタグフレーション以来である。このときは、財政赤字でインフレになっても失業率が下がらないのはなぜかが謎だった。これはフリードマンの自然失業率の理論で見事に解決され、このパラダイムがその後40年近く続いた。

いま世界が直面しているのは、財政赤字が増えても金利が上がらないのはなぜかという謎である。主流派の経済学がこれを説明できないので、永遠に金利はゼロと(理由もなく)仮定するMMTが正しいようにみえる。これはフィッシャーやサマーズもいうように70年代以来のマクロ経済学の危機だが、今は新しいパラダイムの生まれる「科学革命」の前夜かもしれない。

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年金制度で若者は損するの?

このごろベーシックインカムがちょっと話題になっています。先日は「1人7万円のベーシックインカムにすれば社会保障はいらなくなる」という竹中平蔵さんの話がネットで炎上しました。おもしろいのは若者のほとんどがベーシックインカムに反対で「今の社会保障を守れ」という意見だったことですが、これは錯覚です。

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反緊縮って何?

このごろ政治家に「反緊縮」を掲げる人が増えてきました。山本太郎さんみたいな極左がいうのは昔からですが、このごろ自民党にもそういう政治家が増えてきました。こういう人のいうのは「政府はお札を印刷できるんだから、もっとお金をばらまけ」という話です。

これはよい子のみなさんにもわかりやすいですね。国債(国の借金)をいくら発行しても、日銀がそれを買い取ればいいんだから、借金がいくら増えても気にしなくていい。給付金をどんどん国民にばらまき、インフレになったら止めればいい――というのはだれでもわかる単純な理屈ですが、本当でしょうか?

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マイナポイントで「マイナス金利」ができる

わが家にもマイナンバーカードがやってきた。7月8日に申請して受け取ったのが10月19日という事務処理の能率の悪さにも驚いたが、そのデザインにもあきれた。笑ってしまうのは、裏面のマイナンバーを袋で隠していることだ。これでは袋から出したら丸見えである。

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これはマイナンバーがIDかパスワードかという設計思想に迷いがあるからだが、マイナンバーはIDである。それは本人を識別する記号だから氏名と同じで、隠す必要はない。本人認証はICカードでするので、パスワードがあればいいのだ。パスワードが4種類もあるのも設計が混乱している。

しかしマイナポイントをプリペイドカードなどにチャージできるしくみはおもしろい。これでマイナンバーと銀行口座が紐づけられ、1人5000円の給付金を出すのと同じ効果がある。事務コストはいちいち申請して現金を配るよりはるかに小さいから、永江一石さんのいうように、ポイントを使えば簡単に給付金が出せる。

このポイントを期限つきにすれば、マイナス金利をつけることができる。たとえば国民全員に5万円のマイナポイントをつけ、これが5年間有効だとすると、毎年マイナス20%の金利をつけるのと同じだ。これは2008年にTyler Cowenが提案した期限つき電子マネーと同じで、貯蓄に回らないので景気対策としての効果が大きい。

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国民年金をベーシックインカムにする幻の改革案

本来の意味でのベーシックインカムは政治的に不可能だが、国民に最低所得を保障するという目的は他の方法でも実現できる。これは年金改革では昔から議論され、民主党は2009年のマニフェストで「7万円の最低保障年金」を公約した。

その具体案はなかったが、自民党の河野太郎、野田毅、亀井善太郎が協力し、民主党の年金担当だった岡田克也、枝野幸男、古川元久、大串博志と協議して超党派の年金改革案をまとめた。その内容は図のように全国民に毎月7万円の「基礎年金」を支給し、それに加えて所得比例の「積立保険料比例年金」を支給するものだ。

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河野氏の説明では、基礎年金の財源は消費税とし、所得比例の部分は本人負担の積立方式とする。これだと現行の賦課方式との二重の負担が生じるが、積立保険料を国債で立て替え、50年で償還する。高額所得者については基礎年金を減額する(クローバック)。

この案は国民年金をBIのような税方式の定額給付とし、それ以外は自己負担の年金保険にするものだが、巨額の税負担と所得移転が発生するため、弱体な民主党政権では具体化できなかった。2012年に「社会保障と税の一体改革」で実現したのは消費税の10%への増税などの財源確保だけで、積立方式は議論にもならなかった。

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老人に搾取される現役世代がベーシックインカムに反対する

竹中平蔵氏のベーシックインカム論が炎上しているが、驚いたのは95%以上がBIを理解しないで批判していることだ。これは社会保障を廃止するものではなく、全国民に同じセーフティネットを提供する社会保障である。生活保護はBIに吸収され、国民年金をBIに置き換えることは考えられるが、月額7万円では厚生年金は廃止できない。

今の生活保護の受給者は163万世帯、国民年金(1号受給者)は1471万人である。その対象を1億2600万人の国民に拡大する政策を「福祉切り捨て」と呼ぶのはお門違いで、むしろ社会保障支出は大きく増える。問題は今の社会保障がそれほどすばらしいのかということである。


これは国民民主党の玉木代表の2年前のツイートだが、専門家の常識である。日本の社会保障は超高齢化の中で給付を削減しなかったため世界一不公平で、20歳以下の生涯所得は60歳以上より1億円以上も少なくなる。BIはこの大きな世代間格差を是正し、年齢に関係なく最低所得を保障しようという提案だが、それを搾取されている現役世代がいやがるのはなぜだろうか。

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月額10万円のベーシックインカムを考えてみた



竹中平蔵氏が「毎月7万円のベーシックインカム」を提唱して話題になっている。ネット上の反応のほとんどは「7万円では生活できない」という批判だが、支給額だけ問題にするのはナンセンスである。BIは既存の財源を置き換える制度なので、財源と一体で議論しないと意味がない。

それを理解するために、月額10万円のBIを考えてみよう。国民全員に(大人も子供も)一律10万円を給付すると、4人家族で年額480万円。これなら最低限度の生活はできるだろうが、支給総額は年間約150兆円。今年度の一般会計予算(当初+補正)とほぼ同額の財源が必要になる。

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コロナ不況のあとに来るのはインフレかバブルか

あまり注目されていないが、今年に入ってマネーストック(M2)が前年比8%以上増えた。この原因はコロナ対策で数十兆円の給付金が支給されたことだが、消費者物価指数はほとんど反応していない。このように大幅にマネーストックが増えたのは初めてではない。図のように1980年代後半にもM2は10%以上増えたが、物価はほとんど上がらなかった。

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マネタリーベースとマネーストック(M2)の前年比増加率(日銀)

この図からもう一つわかるのは、マネタリーベースとマネーストックの増加率にはほとんど相関がないということだ。2013年以降、日銀の黒田総裁はMBを激増させたが、M2は反応せず、物価も上がらなかった。

これは80年代後半にM2の増加率がMBを上回ったのと対照的である。当時は公定歩合が自然利子率より低かったため、貨幣の大幅な超過需要が発生してM2が増えた。それに対して2000年代以降はゼロ金利になって貨幣需要が増えなかったので、日銀の量的緩和には効果がなかった。

しかしM2が80年代後半以来の増加率になったのは危険信号である。まだコロナ不況で総需要が低迷しているので物価は上がらないが、需要が回復すると資産バブルが起こる可能性がある。80年代後半も円高不況で物価はほとんど上がらなかったが、そこには落とし穴があった。

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