経済

原田泰氏の賞賛する「ヒトラーの経済政策」は正しかったのか

ロイターによれば、日銀の原田泰審議委員は29日の講演で「ヒトラーが正しい財政・金融政策をした」と述べ、NYタイムズなどで世界にも配信された。講演記録は公表されていないので、詳細は不明だが、彼の発言はこのようなものだったという。
ケインズは財政・金融両面の政策が必要と言った。1930年代からそう述べていたが、景気刺激策が実際、取られたのは遅かった。ヒトラーが正しい財政・金融政策をやらなければ、一時的に政権を取ったかもしれないが、国民はヒトラーの言うことをそれ以上、聞かなかっただろう。彼が正しい財政・金融政策をしてしまったことによって、なおさら悲劇が起きた。ヒトラーより前の人が、正しい政策を取るべきだった。
これは「ヒトラーが初めてケインズ政策を採用してドイツ経済を救った」という通俗的な話だが、今では誤りだと判明している。


上の図のように、ドイツの失業者はヒトラーが政権についた1933年から激減したが、500万人以上も失業者が減ったのは、原田氏のいうような「ケインズ政策」のおかげではなく、毎年100万人徴兵したからだ。ドイツの若者は職を失う代わりに、戦場で命を失ったのだ。つまり原田氏が「正しい政策」として賞賛したのは戦時経済である。日銀は責任ある対応をすべきだ。

続きは7月3日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

「バリアフリー」のインフレに歯止めをかけよう



バニラ・エアの事件で議論が盛り上がっているが、乙武さんの記事は事実誤認だ。これについては尾藤さんの記事も指摘するように、バニラ・エアの対応は違法ではない。

続きはアゴラで。

フリードマンの提案した「累進消費税」

アメリカ議会では国境調整税が成立する可能性が出てきたようだが、法人税の廃止にはいつも「金持ち優遇だ」という類の批判が出る。これは誤りで、高い法人税を避けるために企業が海外移転すると雇用が失われ、その損失は労働者が負担するのだ。

こういうバイアスは、グローバル化で生産要素が流動化すればするほど大きくなる。それを減らすには、場所の動かしにくい消費国で課税することが合理的だ。それがキャッシュフロー課税の発想で、ロバート・フランクなどのリベラル派の提案する累進消費税も、中身はほとんど同じだ。それはフリードマンが提案したことでもわかる。

そう。あのミルトン・フリードマンである。彼はフランクが1997年に累進消費税の論文を発表したとき、封筒を送ってきたという。手紙には「政府がもっと金を集めてもっと使うべきだというあなたの意見には同意しない」と断った上で、「もし政府に本当の追加の税収が必要になったら、累進消費税は何より有効な手段だろう」と書かれていた。

そこに同封されていたのは、フリードマンが1943年にAERに発表した"The Spendings Tax as a Wartime Fiscal Measure"という論文だった。そこには「戦費調達の方法として最適なのは消費税だ」と書かれていたのだ。

続きは7月3日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

「国境調整税」でドル高がやってくる

死んだと思っていたアメリカ共和党の国境調整税が、民主党との取り引きで生き返る可能性が出てきたようだ。これは共和党の主流派が推進しているが、トランプ大統領がそのコンセプトを理解していないので、どうなるかはまだわからない。

他方、マンキューやフェルドシュタインなどの提唱した炭素税の国境調整に、エクソンモービルやBPに続いてサマーズが賛成した。彼は「国境調整」という考え方にも「合理的で、合衆国憲法より古い」と賛成している。彼もいうように関税は昔からあるが、国内にも関税をかけるのが画期的だ。

続きはアゴラで。

「ひとり勝ち社会」で生き残る方法

週刊東洋経済 2017年6/24号 [雑誌](アマゾン膨張)
ホールフーズ買収で、アマゾンは生鮮食品まで進出する。アメリカの電子商取引ではアマゾン、検索ではグーグルのシェアが50%を超え、「ひとり勝ち」の様相が強まっている。こういう現象は一時「収穫逓増」といわれてコンサルがかつぎ回ったが、100年前から経済学の教科書に載っている「規模の経済」だ。

たとえばスマホの工場の建設費が100億円かかり、その材料費が1個1万円だとすると、最初の1個のコストは100億円だが、2個つくると50億円…と安くなり、100万個つくると1個2万円(固定費1万円+変動費1万円)になる。それは当たり前だが、経済学では困ったことになる。つくればつくるほど安くなるので、最適規模が無限大になってしまうのだ。

もちろん実際の企業規模は無限大ではないので何かが間違っているが、どこが間違っているのだろうか。これは簡単なようで、むずかしい問題である。「いいものを安くつくれば勝てる」という市場経済のルールは、ここでは通用しないのだ。日本のIT企業が負けたのも「ひとり勝ち社会」のルールを知らなかったからだ。

続きは6月26日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

黒田総裁の教科書に抜けていた「国際分業」

「いつも強気の黒田日銀総裁が、このごろ弱気になってきた」という日経新聞の記事は、ちょっとおもしろい(「Jカーブ効果」という言葉は誤用だが)。黒田総裁の「教科書には為替が下がると輸出が増えると書いてある。しかし日本では、円安でも輸出は大幅に増えなかった」という話は重要である。

3年前の言論アリーナでもいったように、黒田総裁の目的はインフレ目標ではなく、円安誘導だったと思われる。それも複数均衡に陥っている場合、サプライズで悪い均衡を脱却しようというものだ。これは標準的なマクロ経済学の教科書には書いてないが、彼のよく引用する"New Keynesian Economics"には出てくる。

続きはアゴラで。

キャッシュは現実だが利益は意見である

東京都の市場問題PTの報告書は市場の採算性を「経常収支」という帳簿上の利益で考えているので、減価償却を加算するかどうかで大赤字になったり黒字になったりして大混乱だ。もちろんこれは間違いだが、採算はキャッシュフローで考える(減価償却は考えない)ということを知らない人は、官僚やビジネスマンにも多いと思う。役所はもちろん、大企業でも資金繰りが問題になることはまずないからだ。

しかしアゴラ研究所のような零細企業では、キャッシュフローは生命線である。来月になったら100万円入るが今月の給料が払えない、ということは起こりうる(当社では起こったことがないが)。そういうとき、帳簿上の利益がいくらあっても、資金繰りがつかなくなって手形が2回不渡りになると倒産する。

大企業だと、東芝のように大きな損失が出ているのに、それを5年近く隠して帳簿上は黒字を計上することもできる。これは粉飾決算と呼ばれて刑事事件になるが、利益を(合法的に)お化粧したことのない大企業はないだろう。中小企業の場合は逆に、黒字を小さく見せて節税することが日常茶飯事である。つまりキャッシュは客観的な現実だが、売り上げから経費を引いた利益は、考え方によって大きく変わるのだ。

続きは6月12日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

豊洲移転は大幅な黒字である

東京都の豊洲移転についての「市場問題プロジェクトチーム第一次報告書(案)」を読むのに1日かかった。153ページもあるだけでなく、論旨が混乱して意味不明だからだ。この原因は、小島敏郎座長が豊洲移転を否定する論拠を集めて「築地再整備」に誘導しようとしているためだと思われる。

当初の争点だった土壌汚染については豊洲の安全性に問題がないことを認め、話を「安心」にすりかえているが、メインの論点は経済性だ。東京都の従来の計算では、市場会計の収支は71ページの図のようにほぼ均衡の見通しだが、小島PTは減価償却込みで毎年140~150億円の赤字が出るという。



続きはアゴラで。

なぜ職業免許は非効率なのか

きのうのアゴラこども版の記事は「免許による業務独占は非効率だ」という当たり前の話だが、獣医のみなさんには当たり前ではなかったようだ。これが彼らにとってメリットがあるのは当然だが、問題は独占の社会的コストである。これを具体的な金額で計算するのはむずかしいが、経済学の初歩的なロジックで答が出る。

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この図はリクナビの記事から引用したものだが、経済学でおなじみの「余剰分析」だ。くわしいことはこの記事を読んでいただきたいが、簡単にいうと、業務独占で価格が上がって供給が減ると、消費者と生産者の余剰の合計は競争的な場合より小さくなる。図の三角形の「厚生の損失」が出るからだ。

つまり市場価格で評価すると、業務独占は社会的な浪費(死荷重)をもたらすが、例外的な場合にはこの死荷重より大きなメリットがあるかもしれない。それは(人間の)医師では考えられるが、そのメリットがこの社会的コストより大きいかどうかは疑問だ。

続きは6月12日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

日本の「リーマン・ショック」は大蔵省が起こした

長銀の頭取だった大野木克信氏が死去した。朝日新聞の原真人編集委員は「金融危機の批判を一身に受け、スケープゴートの役目を担わされた」と書いているが、私も同じような感慨を抱かざるをえない。

続きはアゴラで。






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