経済

アメリカは第2次大戦以上の危機になる

アゴラで書いたように、今年の初めから日本でインフルエンザの患者が急に減った原因が新型コロナウイルスの上陸だとすると、アメリカの状況は予想以上に危険である。今シーズンのインフルエンザの患者が2600万人、死者が1万4000人という大流行になったアメリカには、新型コロナウイルスは上陸していないからだ。

新型コロナの免疫がほぼゼロという状態から、3月になって感染が始まったとすると、これはインペリアル・カレッジの報告とほぼ同じ状況である。そのシミュレーションによれば、基本再生産数が2.4とすると、アメリカ国民の81%が新型コロナに感染し、次の図のように何も対策をとらないと220万人が死亡する

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英米の新型コロナ死者の予測(インペリアル・カレッジ)

イギリスについては51万人の死者を集団免疫戦略で25万人に減らす(ベストケース)政策が提言されているが、アメリカについては何も書いてない。イギリスと同じような政策を想定すると、約100万人が死亡することになる。これは第2次大戦の死者30万人の3倍である。

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新型コロナ自粛の「出口戦略」が必要だ

新型コロナの新規患者数は日本ではピークアウトし、3月22日には初めて退院数を下回った。もちろんこの傾向が今後もずっと続く保証はないが、今の厳戒態勢を半年も続けると経済はボロボロになる。現実には今月中に、自粛の「出口」を検討するときが来るだろう。問題はどういう手順で自粛を解除するかである。

いま実効再生産数Rが1を下回っているとすると、R =1になったときが一つの目安だが、それが長期的に維持できるかどうかは疑わしい。自粛をすべて解除したときの基本再生産数R0は1より大きいからだ(そうでなければ感染は拡大しなかった)。ここで重要なのが集団免疫の考え方である。



続きはアゴラで。

最高の「新型コロナ経済対策」は自粛の解除である

新型コロナをめぐって、大型の緊急経済対策が検討されている。瞬間的には10%以上の需給ギャップが生じているので、10兆円規模の財政出動が必要だろう。金融緩和は資金繰り支援としては必要だが、ゼロ金利では総需要の創出効果はない。株式の買い支えは評価損を大きくして日銀のバランスシートを毀損し、危機対応能力をそこなう。

野党は消費税率の5%への引き下げを求めているが、これはナンセンスである。消費税は社会保障を支える長期の財源であり、短期の景気対策で上げたり下げたりするものではない。また消費税率を5%下げても、下がる税額は1ヶ月8000億円程度。減税前に買い控えが起こるので、短期的な効果はほとんどない。

即効性があるのは現金給付である。これにはいろいろな形がありうるが、一番簡単なのは、所得税・住民税や法人税の納税延期や還付だろう。次いで簡単なのは、リーマンショック後の2009年に行われたような定額給付金である。「ほとんどが貯蓄に回るので効果がない」という批判もあるが、それなら有効期限3ヶ月のクーポンにすればいい。

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消費者の財布に届く「国民の量的緩和」が必要だ



新型コロナはアメリカ経済を直撃し、株価がリーマンショック以来の暴落を記録した。トランプ大統領は国家非常事態宣言を出し、最大500億ドルの「支援金」を約束した。 これは感染症対策だけでは使い切れないので、今後もっと広い範囲の財政支出が行われるだろう。

日本では政府税調が消費税の減税を検討しているらしいが、これは焼け石に水だ。すべての商品に軽減税率を適用しても消費の2%で、いま瞬間的に生まれていると思われるGDPの10%以上の需給ギャップをとても埋められない。短期に大量の資金を供給する必要があるのだ。

日銀も平時に量的緩和をやりすぎて弾薬が尽きた。追加緩和でこれ以上マイナス金利を深くしたら、銀行の経営が破綻する。株の買い支えも、日経平均が1万9000円を割って日銀が評価損を抱えている状態で、これ以上はできないだろう。

いま緊急にできるのは日銀の財政政策しかない。それも単に国債を買うのではなく、個人の銀行口座に直接入金する国民の量的緩和をやるのだ。これはそう奇抜な話ではない。去年の消費増増税のときの5%ポイント還元と同じ、非裁量的なバラマキである。1人10万円とすると12兆円。日銀のオペレーションとしては多くない。

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日銀は「ヘリマネ型量的緩和」に転換するとき

新型コロナは日本では鎮静化に向かっている(重症患者は27人に減った)が、世界に拡大してきた。特にアメリカの感染者が542人と日本を抜き、死者も22人で世界第5位になった。これで全世界がパニックに陥るだろう。

これは2009年の新型インフルエンザのように、健康被害はそれほど大きくないが経済に大きなダメージを与える経済的パンデミックになるおそれが強い。こういうとき必要なのは、人々の萎縮した心理を回復させることだ。

昨年10~12月期の成長率は年率マイナス7.1%に下方修正されたが、これにはコロナの影響は含まれていないので、1~3月期のGDPは年率10%以上の減少になることは確実だ。この大きな需給ギャップを埋めるには、数兆円規模の総需要追加が必要である。

日本ではマイナス金利が続いているので、大胆な財政出動ができる。問題は何に使うかだが、感染症対策だけでは数千億円が限度だろう。国会には補正予算が出ているが、これでは足りない。それより早いのは、日銀が国民の銀行口座に直接入金することだ。それがブランシャールも提言している国民の量的緩和である。

続きはアゴラで。

「財政と金融の協調」へのレジームチェンジが必要だ

新型肺炎で自粛とパニックの連鎖が続いている。まだ正確な統計は出ていないが、観光業や外食業は壊滅的な状況だ。中国からの外需も大幅に減っており、日本経済へのダメージは大きい。昨年の第4四半期の成長率はマイナス1.6%(年率マイナス6.3%)だったが、今年の第1四半期は年率マイナス10%ぐらいになるのではないか。

日銀の黒田総裁は「必要があれば躊躇なく追加緩和する」とお決まりのコメントをしたが、マイナス金利の状況でこれ以上緩和しても何の意味もない。それより大型の補正予算を組む必要がある。名目は「新型肺炎緊急対策」 なら数兆円出せるだろう。そのためには国債の増発が必要だ。黒田総裁も認めた財政と金融の協調を実行するときである。

これは伝統的なポリシーミックスではなく、財政赤字を日銀が埋める財政ファイナンスであり、日銀はそれを明示的に宣言したほうがいい。従来の量的緩和の延長だと思われると市場は何も反応しないので、フィッシャーの提言するように「これは財政政策だ」という目的を明示すべきだ。

このとき最大のリスクは「財政赤字が無限に拡大する」と市場が判断して国債を売ることなので、それを防ぐために日銀が財政を監視するルールをつくってはどうだろうか。たとえば名目成長率の目標を3%と決め、そこに到達するまで財政赤字を拡大する。金利が急上昇した場合は補正予算の執行を停止する。その判断は日銀政策委員会が行なって財務省に助言する。続きを読む

自粛パニックで「新型コロナ不況」がやってくる



新型コロナウイルスの感染者はきのう100人を超えたが、クルーズ船「ダイヤモンドプリンセス」を除くと、国内で陽性になった人数は1日10~20人で、激増しているわけではない。激増しているのは、集会やイベントなどの自粛による2次災害である。

コンサートや会議が中止になり、レストランやホテルがキャンセルされ、就活の面接まで中止された。加藤厚労相は「政府として一律の自粛要請はしない」といいながら「主催者に開催の必要性を改めて検討していただきたい」と実質的に自粛を求めた。

続きはアゴラで。

黒死病が資本主義を生んだ

日本中が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で大騒ぎだが、こういう疫病は歴史的には珍しいものではなく、それがパンデミック(世界的流行病)になって歴史を変えたことも少なくない。史上最大の帝国を築いたモンゴル帝国が14世紀にあっけなく崩壊した一つの原因は、黒死病(ペスト)の大流行だと考えられている。

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地球の平均気温の推定(Wikipedia)

図のように地球は14世紀から小氷河期に入り、寒さで免疫力が低下し、農業生産も激減した。黒死病はアジアで発生したが、シルクロードを通ってヨーロッパに広がったので、それを伝えた遊牧民のモンゴル帝国は崩壊し、ヨーロッパの人口も黒死病で半減した。

この時期に生まれたのがプロテスタンティズムである。治療の方法もない疫病が多くの人を殺す時代には、誰が死ぬかは神があらかじめ決めた運命だというルターやカルヴァンの宿命論が説得力をもった。それを信じる者だけが天国に行けるという単純な教えは疫病のようにヨーロッパに流行し、凄惨な宗教戦争を生んだ。

この宗教戦争に勝ち抜いたのは重火器で武装した国であり、その経済力を支えたのが資本主義だった。黒死病は宿主を殺し尽くすと終わったが、資本主義は国家に寄生して世界に広がった。それはウォーラーステインのいうように富の追求という単純な原理で国家を包摂する世界=経済を築き、植民地に寄生する疫病になったのだ。

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グローバル化で格差は縮小する

2000年以降の日本で物価が上がらない最大の原因は、先進国の中で日本だけ名目賃金が下がったことだ。これは製造業の賃金が中国に引っ張られて下がり、生産拠点の海外移転が進んだからで、中国の人件費が上がって日中の単位労働コスト(ULC)は2012年ごろ逆転した。

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各国の単位労働コストの比較(経産省「ものづくり白書」)

名目賃金は日本が約2800ドル、中国(都市部)が約500ドルとまだ大幅な差があるが、賃金を付加価値で割ったULC(名目雇用者報酬/名目GDP)でみると、日本は中国より低くなった。これは2012年以降の人民元レート上昇の影響もあるが、2000年ごろ3倍以上だった日本と中国の賃金格差が、大幅に縮まったことは明らかだ。

これは1990年代から始まった大収斂の必然的な結果で、この傾向は逆転しないだろう。上の図でもわかるように、OECD諸国でもアジアでも、ULCが収斂する傾向は一貫している。「グローバル化で格差が拡大する」という通念とは逆に、賃金格差はグローバルには縮小しているのだ。

その結果、日本では中国と競合する単純労働者の賃金が下がり、中間層が没落して国内の格差が拡大している。このグローバルに生産要素が一物一価になる要素価格均等化の傾向を「デフレ」と誤解して、マクロ経済政策で止めようとしたことが安倍政権の失敗だった。

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ESG投資というモラルハザード


きのうこういう論争が、水野弘道氏(GPIF最高投資責任者)と山崎元氏(国家公務員共済組合連合会資産運用委員)の間で繰り広げられた。水野氏のいうようにESG(Environment, Social, Governance)投資が流行していることは事実だろう。

しかしそれが投資理論として成り立たないことは、山崎氏のいう通りである。少なくとも効率的市場仮説による限り、「環境にやさしい」などの収益以外の基準で運用の対象を制限して、収益を高めることはできない

たとえばあるファンドが収益最大化の基準で組んだ100社のポートフォリオから、ESG基準で石炭を使う10社を排除したとすると、残りの90社からなるポートフォリオが、もとの100社より継続的に高い収益を上げることはありえない。これは多くの実証研究のデータでもわかっており、ESGが収益を改善する効果は統計的に有意ではない。

もちろん地球環境を守ることには意義があるが、それは政府の仕事だ。ファンドマネジャーの社会的責任は投資家の収益を最大化することであり、投資家のカネを収益以外の目的に使うのはモラルハザードだというのが、フリードマンの指摘である。投資家が私企業の株主ならそういうセールストークで資金を集める営業もいいが、GPIFではやめていただきたい。

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