経済

社会保険料は「社会保障税」と呼ぶべきだ



消費税を2%増税するかどうかは、日本経済全体からみると大した問題ではない。ネトウヨは「景気が悪くなる」と騒ぐが、増税で可処分所得が下がるのは当たり前だ。実質可処分所得は1997年から下がり続けているが、その最大の原因は消費税ではなく、社会保険料(特に年金保険料)の「増税」である。

厚労省によると国民年金は「払った保険料の平均1.5倍受け取れる」ことになっているが、その財源の半分(75%)は税金だから、あなたが払った年金保険料の75%しか返ってこない。これは保険ではなく、平均25%損する競馬と同じ公営ギャンブルであり、収益率は超高齢化でさらに悪化する。

賦課方式の年金保険料は税と同じで、健康保険料も介護保険料も強制加入の税だが、天引きで「痛税感」がないので、保険だと思って素直に払う人が多い。消費増税は政権をゆるがす大事件だが、社会保険料の引き上げは厚労省令だけでできる。この制度的なバイアスが、消費税をめぐる混乱の原因だ。

社会保障負担をどう呼ぶかは各国で違うが、アメリカでは年金以外の社会保険料は「給与税」(payroll tax)と呼ばれている。日本でも「痛税感」を強めるため、年金保険料を含めて社会保障税と呼ぶべきだ。半分近くを税金でまかなう社会保障特別会計は、もはや特別会計とはいえないので、一般会計と統合することが望ましい。

続きは12月10日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

情報弱者はなぜ消費税をきらうのか

フランスでは燃料税の引き上げに反対する「黄色いベスト」の暴動が起こり、マクロン政権は増税の実施を延期した。化石燃料に課税することは地球温暖化対策として合理的だが、どこの国でも増税は不人気だ。特に間接税は「痛税感」が大きいので、こういう情報弱者の反発を受けやすい。

日本でも、いまだに消費増税に反対する人が多い。それも左翼ではなく、ネトウヨ系だ。今は亡きリフレ派が「うまく行くはずのリフレが失敗したのは2014年の消費増税のせいだ」と責任転嫁し、そこから「反消費税」に転進したらしい。リフレ派にはそれなりに理論があったが、これは理論の体をなしていない「どマクロ経済学」だ。

続きはアゴラで。

ゴーンと「密約」を結んだのは誰か

ゴーン事件は毎日のように数字が変わるので、先週の記事を訂正しておく。そのときは日経が「SAR40億円」、朝日が「退任後の顧問報酬80億円」と報じて、どっちが正しいのかわからなかったが、その後日経はSARについて書かなくなった。どうやら「顧問報酬」が本筋らしい。

その内訳をNHKは「退任後に競業に就くことを避けるための契約金としておよそ35億円、役員退職の慰労金としておよそ25億円、コンサルタントの契約金としておよそ20億円」と書いているが、ゴーンが年俸20億円のフォードから二度にわたって引き抜きを受けたことへの対抗策だったとすれば、異常な金額とはいえない。

問題は有価証券報告書にそれを開示しないで、8年間にわたって「総額10億円」と記載したことだ。これについてけさの日経は、ケリーが「外部の法律事務所や金融庁などに問い合わせて処理した」と供述し、有報への記載は必要ないとの見解が記されていたと報じている。2011年から個別開示するとき、金融庁から了解を得ていたとすれば、逮捕容疑である金商法違反は崩れる。

続きはアゴラで。

ゴーンの役員報酬は「もらい過ぎ」か

世間では「ゴーンは所得を隠して会社に豪邸を買わせた強欲な経営者」というイメージができているようだが、社宅は逮捕容疑とは無関係だ。役員報酬の虚偽記載は違法だが、彼が巨額の報酬をもらっていたこと自体を批判するのはおかしい。疑惑の指摘されている2011~15年の彼の役員報酬をルノーと合算すると、年平均1460万ドル。GMとほぼ同じで、クライスラーやフォードよりはるかに低い。

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世界の自動車メーカーのCEOの年収(単位100万ドル)Bloomberg調べ

これを安いとみるか高いとみるかは、その基準による。フォードはゴーンにCEO就任を打診したことがあるが、そういう「経営者市場」の相場でみると、ゴーンの日産CEOとしての年収10億円は安い。「これぐらい払わないと優秀な人材は採れない」という彼の言い分にも一理ある。

「巨額の役員報酬は生産性に見合わない」という批判も強いが、これも何を生産性の基準とするかによる。ゴーンの役員報酬は日産の平均賃金700万円の140倍だが、経営者の生産性を労働時間で測ることはできない。経営者を生産要素と考えると資本財に近いので、ゴーンが企業価値をいくら上げたかを基準にすることが考えられる。最新鋭の工場で企業価値が20億円上がるなら、その工場の建設に10億円払うことは合理的だ。

1999年にゴーンがルノーから派遣されたとき、日産の負債は2兆円で債務超過の危機に瀕していたが、今の時価総額は約4兆円。20年前の企業価値をゼロとすると、彼は4兆円の価値を生み出したことになる。この20年間に累計200億円の役員報酬をもらったとすると企業価値の0.5%だから不当に高いとはいいきれないが、問題は企業価値の増加のうちゴーンの貢献はどれだけかということだ。

続きは11月26日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

ゴーン事件は「役員報酬飛ばし」か「経営統合つぶし」か



きのう日産の取締役会で、カルロス・ゴーン会長が全会一致で解任された。これを日経新聞は「あまりにひどい」という見出しで報じたが、ル・モンドは「経営統合を恐れた日産側が解任を急いだ」と報じた。どっちの筋書きもありうるが、この事件はまだ疑問が多い。

続きはアゴラで。

ゴーン逮捕は「経営統合つぶしのクーデタ」か

ゴーン事件は各社の報道で徐々に全容がわかってきたが、まだ辻褄のあわない部分が多い。最大の謎は、なぜ最高経営者を逮捕という荒っぽい方法で引きずり下ろしたのかということだ。ゴーンと経営陣の間に紛争があったことは事実らしいが、普通は社内で処理するだろう。それがいきなり刑事事件になった原因には、いくつかの推測がありうる:
  1. 社員からの内部通報で不正が判明し、検察に相談した
  2. 検察の内偵で虚偽記載が追及され、司法取引に応じて情報を提供した
  3. 社内の「反ゴーン派」が既知の不正を利用してクーデタを決行した
1は記者会見で西川社長の説明したストーリーだが、有価証券報告書で「株価連動型インセンティブ受領権」の欄が会長だけ0円になっている単純な虚偽記載に、経営陣が今年の内部通報まで気づかなかったとは考えにくい。他の私的流用も社内では公然の秘密だったといわれ、今ごろわかった話ではないだろう。

では2のように捜査の手が及んで、経営陣がゴーンをスケープゴートにして逃げようとしたのか。これも考えにくい。検察の捜査は普通、内部からの売り込みで行われるが、ゴーンが逮捕されると日産にとって大きな打撃になる。事情を知る社員が、社内の手続きを飛び越えて検察に通報することは、常識では考えられない。

となると消去法で、3のような見方になる。これについては社長会見で否定していたが、FTは「日産・ルノーの統合を計画していたゴーン氏」という記事を出している。ゴーンが日産をルノーに経営統合しようとして日本の経営陣と対立し、経営陣がゴーンを解任するために検察を利用したという話だ。今のところ推測の域を出ないが、これが一番ありそうな話だ。

続きは11月26日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

最高経営者が会社を欺くとき

きのうの記事の一部訂正。この記事でも書いたように、私を含めて多くの人が「有価証券報告書の虚偽記載で逮捕ってどういうこと?」と疑問をもったと思うが、日経新聞の19時の記事が、その疑問を解いてくれた。

常識的には、役員報酬の支出は財務部門を通り、取締役会で承認するので、会長個人が虚偽記載することは不可能だが、ストックオプション(新株予約権)などの権利は必ずしもそうではない。これは2011年の日産の有報だが、右端の「株価連動型インセンティブ受領権」(SAR)の欄が、ゴーン会長だけゼロになっている。彼は実際には、5年で40億円のSARを自分に付与したという。


続きはアゴラで。

ゴーン逮捕から見えるグローバル資本主義の闇

きのう日産のゴーン会長が逮捕された容疑は「役員報酬の虚偽記載」という金融商品取引法違反だったので報道が混乱したが、これは本筋ではない。まだ全容は不明だが、今のところわかった情報を整理しておくと、事件の概要は次のようなものだ:

続きはアゴラで。

生産性格差と「二重構造」

生産性とは何か: 日本経済の活力を問いなおす (ちくま新書)
日本経済の停滞の原因が人口(特に生産年齢人口)の減少にあることは政治家も認識しているが、それを解決することはむずかしい。外国人労働者を入れて労働人口を増やす安倍政権の政策は、問題を解決するより作り出すおそれが強い。もう一つの考え方は、労働人口が減っても労働生産性を高めればいいという議論だが、具体的に何をするかが問題だ。

生産性を考える場合、製造業とサービス業を区別することが重要だ。グローバルに立地できて労働節約的な技術進歩の速い製造業に比べて、ローカルな対人サービスに依存するサービス業の労働生産性はどこの国でも低く、製造業の比率が下がるにつれて労働生産性が下がる「ボーモル病」がみられる。

日本はこの格差が特に大きく、いつまでも縮まらないのが特徴だ。次の図は日米の労働生産性格差(生産性本部調べ)で、アメリカを100すると日本の製造業の生産性は69.7だが、サービス業は49.9。こういう「二重構造」の硬直性は高度成長期から指摘されていたが、1990年代以降の長期不況で拡大し、2000年代に固定化した。

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続きは11月19日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

最低賃金を上げる「非伝統的な労働政策」

人手不足は日本経済の構造問題であり、これを「特定技能」と称する外国人労働者で埋めようという安倍政権の政策は、3K職場を温存してアジア人の低賃金労働者を増やすだけだ。長期にわたって労働の超過需要が続く原因は単なる人口減少ではなく、労働市場のミスマッチだからである。

低収益の中小企業が雇用の8割以上を占め、人手不足でも低賃金のパート・アルバイトを増やして正社員の賃金を上げない。このため労働者が集まらず、売り上げも収益も増えないので経営が行き詰まる「悪い均衡」に入ってしまった。つまり

 中小企業の低収益→低賃金→人手不足→低収益

という悪循環が起こっているのだ。こういうコーディネーションの失敗を脱却するには、労働者が高収益企業に移動して低収益企業が淘汰されることが望ましいが、政府が雇用規制で労働移動を阻害し、参入規制で中小企業を守るのでミスマッチが残ったままだ。

続きはアゴラで。






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