経済

「デフレではない状況」でもインフレにならない構造変化

安倍首相は所信表明で「デフレではない状況にした」と苦しい言い訳をしたが、コアコアCPI上昇率は0.2%で5年前より低い。完全失業率が2.8%と低くなってもインフレにならないのは、NAIRU(Non-Accelerating Inflation Rate of Unemployment)つまりインフレを加速しないインフレ率が下がったためと考えるしかない。これが自然失業率である。

これは労働市場の流動性やミスマッチなどの要因で決まる構造的・摩擦的な失業率で、景気対策で下げることはできない。政府の統計では「構造的失業率」などと言い換える。次の図はニッセイ基礎研の推定だが、構造的失業率は不良債権処理がピークを超えた2003年以降ゆるやかに低下し、2008年のリーマンショックで上がったが、最近では完全失業率を下回っている。
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循環的要因で決まる「需要不足失業率」は最近はマイナスになり、人手不足なので賃金が上がってインフレになるはずだが、実質賃金は横ばいでインフレは起こらない。そこには景気対策で変えられない構造的な変化がある。

続きは11月27日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

冷戦で資本主義が負けたら

1950年代の歴史を調べていると、冷戦初期に人々がどう考えていたかわかっておもしろい。日米安保をめぐるねじれの一つの原因は、知識人の多くが冷戦でソ連が勝つと思っていたことだ。

これは日本だけではなく、1960年代のサミュエルソンの教科書では、図のように21世紀にソ連のGNPがアメリカを抜くと予想していた。1960年の共同通信の正月座談会で、大内兵衛、美濃部亮吉、丸山眞男は次のように語っている。
大内 ソ連と中国の発達のしかた、進歩のしかたがどうもほかよりは早いということで、それが世界に承認された。また軍事のほうからでもロケットの実験でダレス政策というものを変えなくちゃいかんところにまで来た。

美濃部 その勢力関係がはっきりしたときに、いいかえれば資本主義がとても負けだということがはっきりしても、やっぱり平和は続きますか?

丸山 政治的自由ということは、結局計画性と、個人の自由な選択をどこで調和させてゆくかという問題に当面せざるをえない。したがって私は、アメリカ的なデモクラシーとソビエトのデモクラシーの将来というのは、必ずしも全部ソビエト型のデモクラシーになってゆく形で世界が変化してゆくとは考えられない。
大内のいう「ロケットの実験」とは、スプートニクのことである。このころ多くの知識人は「冷戦で資本主義が負ける」ことを前提にして国防を語っていたのだ。

続きは11月20日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

国交省が作り出す「EVのジレンマ」

トヨタ自動車が、ようやく電気自動車(EV)に本腰を入れ始めた。今までも試作車はつくっており、技術は十分あるが、「トヨタ車として十分な品質が保証できない」という理由で消極的だった。それが今年の東京モーターショーでは次世代の技術「全固体電池」の開発に力を入れていると強調し、「EV企画室」を社内カンパニーに移管すると発表した。

続きはアゴラで。

「見えない増税」は2020年代に見える税になる



きょうのVlogが尻切れトンボだったので、補足しておく。安倍首相も錯覚していると思うが、雇用が改善しても「デフレ脱却」できない大きな原因は、家計消費の分母になる可処分所得が下がっていることだ。次の図は実収入(勤労者の平均月収)と可処分所得(実収入から税・社会保険料を引いた手取り)を2000年を100とする指数であらわしたものだ(総務省家計調査)。

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労働の「商品化」は資本主義の終わりの始まり

最近、銀行のリストラが話題だ。決済機能は100%コンピュータで代替でき、融資や仲介業務もAIでできるので、給料の高い銀行員はIT投資のリターンが大きい。正社員のコストは労働生産性よりはるかに高いので、銀行員が定年退職して時給1000円でコンビニの店員をやると賃金は大幅に下がる。これが労働分配率の下がる原因だ。

労働がATMやPOSなどで自動化されると、賃金は労働生産性に近づく。コンピュータにできないクリエイティブな労働は少ないので、平均賃金は理論的にはIT投資の収益率(レンタル価格)と等しくなる。それがマルクスが、労働力の商品化(コモディタイズ)という言葉で表現したことだ。

これを契約理論で考えると、労働サービスを(たとえばロボットとして)売買できるようになると、雇用という非効率な長期契約が必要なくなる。Hartが指摘したように、企業は奴隷制の禁止によって人的資本が売買できない近代社会の制約に適応する制度だから、雇用契約がなくなると物的資本を所有する必要もなくなり、資本主義は終わるかもしれない。

続きは11月6日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

社会保険料が消費を浸食する

きのう総務省が発表した家計調査速報によると、9月の実質消費支出は前年比0.3%の減少で、2014年から減り続けている。これが日銀がいくらお金をばらまいても、物価の上がらない原因だ。これを安倍首相は消費増税のせいだと信じているようだが、それは誤りである(2016年家計調査年報)。

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2015年以降も消費が減り続けている現象は、消費税では説明できない。これは消費の分母になる可処分所得が減った影響が大きい。実収入はそれほど大きく減っていないが、給料から天引きされる所得税や社会保険料などの非消費支出が増えた。特にここ10年、社会保険料が何度も引き上げられたことが「痛税感」なき負担増を招いたのだ。この状況で「賃上げ要請」なんかしても消費は増えない。

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続きは11月6日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

アルゼンチン政府はなぜ借金を返せなかったのか

総選挙は希望の党のひとり負けで、安倍政権の信任投票のようなものだった。これ自体は国際情勢が不安定な中で結構なことだが、首相が勝利の弁で「プライマリーバランス(PB)を無理やり黒字化して、アルゼンチンは次の年にデフォルトになった」といったのはおかしい。

これを土居丈朗氏が指摘しているが、「PBを無理やり黒字化したから次の年に債務不履行になったのではない。債務不履行を避けようとPBを黒字にした」というのもおかしい。図のようにアルゼンチンは2014年にデフォルトになったが、その前からPBはずっと赤字である。

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いま大きな政府か将来もっと大きな政府か

きょうの選挙はあいにくの台風で、小池百合子氏の逃亡した希望は惨敗、プチバブルだった立民も50議席がせいぜいだろう。それより問題なのは、日本の政治にまともな選択肢がないことだ。8月の記事の図を更新すると、今の対立軸はこんな感じだろう。


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小さく見えて大きな政府

世界的には保守とリベラルの争点は「大きな政府か小さな政府」かという対立軸だが、この基準でみると日本に保守政党はない。安倍政権は世界的にみるとアメリカ民主党よりリベラルで、野党は極左である。

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この図は内閣府の調査した国民負担率の国際比較(クリックで拡大)だが、日本は極端に大きいわけではない。その特徴は租税負担率の低さである。日本よりはるかに国民負担率の低いアメリカでも24.2%なのに、日本の租税負担率はそれとほとんど変わらない。この最大の原因は財政赤字が大きいことだが、もう一つは社会保険料が高いことだ。

日本の社会保険料は、大きな政府の代表だと思われているスウェーデンの3倍だ。選挙のたびに消費税が争点になって先送りされ、社会保険料が引き上げられてきたため「痛税感」は小さいが、負担の実態はヨーロッパ並みに大きい。

つまり「大きな政府か小さな政府か」というのはもはや問題ではなく、日本は財政赤字や社会保険料で国民負担を偽装した小さく見えて大きな政府なのだ。デモクラシーの基準が「納税者が自分の負担を決める」ことだとすると、日本は税デモクラシーが最低の国である。続きを読む

株式市場は未来を予見できない

日経平均は、21年ぶりに2万1000円台を回復した。選挙になったとき株価が上がるのは当たり前で、安倍政権も消費税の「使途変更」でその期待に応えようとしている。国民所得統計でも物価統計でもアベノミクスの成果は出ていないが、株価への効果は顕著だ。

安倍政権で行われた財政政策の規模は、民主党政権と大して変わらない。それが成長率の低い原因だが、金融政策は突出している。図のように日銀が黒田総裁になってから、マネタリーベースは150兆円から500兆円に激増し、その資産のうち国債が450兆円以上を占める。これが安倍政権の唯一の経済政策といってよい。


マネタリーベース(青・億円)と業況指数(赤・右軸)出所:日銀


続きはアゴラで。






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