経済

財政拡大で「成長による財政再建」はできるか

先週のJBpressでも紹介したが、OECDは先進国で財政デフレが起こっていると警告している。リーマンショック以降の金融機関に対する財政支援の巻き戻しで、世界的に財政赤字が減少して総需要を抑制する「逆ケインズ政策」が起こっている。異常な低金利はそれが原因なので、各国は協調して財政支出を拡大すべきだという。

これは安倍政権にとっては朗報である。日本が財政を拡大できる財政余地はGDP比で2.2%あるので、「アベノミクス2.0」で公共事業を拡大すれば、日本経済は成長して財政再建でき、一石二鳥…だろうか?

続きはアゴラで。

男性の自殺率は失業率で決まる



きのうのVlogで紹介したように、失業率と自殺率には強い相関がある。自殺者数は1998年に一挙に34.7%も増えて3万人を超えたが、このとき完全失業率も3.4%から4.1%に上がった。その後も失業率は上がり続け、2003年にピークを打った。

実は、この相関は男性に限られる。1953年からの男性の完全失業率と自殺率の相関係数は0.891だが、女性の自殺率は無関係だ(相関係数-0.223)。これは会社という「家」を失ったショックが、自殺の最大の原因であることを示唆している。世界的にみると、日本の自殺率は旧社会主義国に次いで高い。


そして失業率が下がるとともに自殺者も減り、2016年の速報値では2万1764人と1997年を下回った。これを「アベノミクスのおかげだ」という人がいるが、図のように失業率も自殺率も民主党政権の2009年から減り始めたので、それは間違いである。

続きは4月24日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

日本に「財政余地」はあるか

JBpressで紹介したように、片岡剛士審議委員の人事はかなり意味深長である。日銀の事務方はリフレ派なんかバカにしているので、これは(黒田総裁を含めて)内部から出てきた人事ではなく、首相官邸の意向と考えられる。

特に注目されるのは、片岡氏の最近のレポートで「アベノミクスを貫徹するために財政支出拡大を」というメッセージを明確に打ち出していることだ。官邸がこれに注目して彼を起用したとすると、ゆるやかに出口をめざしていている黒田総裁の再任も危うくなり、出口なき財政拡大と金融緩和がアベノミクス第2幕になる可能性がある。

そこに使われているのが、財政余地(fiscal space)という概念だ。これはもとはBlanchard et al.(1990)に始まる「財政が維持可能な政府債務と現実の債務の差」という考え方で、最近IMFやOECDも提言している。政府債務をゼロにする必要はなく、それが維持可能であればよい。その条件を政府債務が発散しないこととすると、日本のように金利がマイナスになっている場合は財政拡大の余地がある。OECDによれば、次の図のように日本の財政余地は主要国で最大で、GDPの2.2%ぐらいある。
図2
中期の財政余地(GDP比%)出所:OECD

この図だけみると、理論的にありそうな政策はGDP比2%の減税である。これはリフレ派のようにナンセンスな話ではなく、「国債は返し過ぎだ」という安倍首相のコンセプトに合うが、そこには落とし穴がある。

続きは4月24日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

日本企業の戦略は出世競争に従う

組織は戦略に従う(Structure follows strategy)というのはチャンドラーの有名な言葉だが、実際の組織はその逆になることが多い。組織を変えるにはコストと時間がかかるが、戦略を変えるコストはそれより低いからだ。特に日本の大企業では長期的関係が強いので、戦略は出世競争に従う傾向が強い。

日本のサラリーマンの賃金は年功序列で競争がないといわれるが、出世競争は激しい。総合職は全国に転勤するので、「本流」ポストにつくかどうかが人生を左右する。「傍流」に入ると下流に行くに従って差が大きくなり、入社10~15年で回復不可能な差がつく。異動は学生でいうと成績評価のようなものだが、サラリーマンの通信簿は社内の全員に公開されているわけだから残酷である。

35歳ぐらいで「自分は本流をはずれたな」ということはわかるが、そのころはつぶしがきかない。ハローワークに行っても、大企業の年収1000万円のサラリーマンよりいい仕事はまずない。このようなタコ部屋で競争することが、よくも悪くも日本のサラリーマンのインセンティブを特徴づけ、企業戦略を決めている。

続きは4月17日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

ユナイテッド航空の事件から日本企業が学ぶべきこと



ユナイテッドのオーバーブッキング事件は、警察官が法を執行しただけで大した話ではない。交通違反で容疑者が検挙されたようなものだが、たまたま容疑者がケガをした動画が世界に拡散されたため、UAの株価が5%も下がる事件になった。Economistが指摘するように、この事件は企業にとって重要な教訓を含んでいる。
  1. 事前のリスク管理と事後のダメージ・コントロールは違う:UAはこの種の事件の対応をマニュアルで詳細に決めていたと思われるが、それでも今回のように異常な「クレーマー」が出てくる確率はゼロではない。そのときの危機管理はマニュアルにこだわらず、トップに連絡すべきだ。
  2. 法的に正しくても感情的に正しくないことがある:オーバーブッキングは合法で、乗客が乗務員の指示に従わなかった場合には警察を呼べるが、これは最後のオプションにすべきだ。法とは暴力なので、実際に執行すると反発をまねく。
  3. ネット情報を軽視してはいけない:今回の事件は4月9日に起こったが、UAの広報が公式のコメントを発表したのは11日で、それも「オーバーブッキングではない」というものだった。これは嘘ではないが、さらに世界のメディアを憤激させた。
続きは4月17日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

オーバーブッキングを戦略的に考える

UAの事件はアゴラ経済塾の教材に最適なので、おさらいしておこう。UAの説明では、これはテクニカルには「オーバーブッキング」ではなく、乗客を全員機内に入れてから、乗員(翌日の便のパイロット2人とCA2人)を乗せるために「800ドルのクーポンと航空券とホテル1泊」の取引を申し出たが、応じる客がいなかったので、4人を無作為に選んだ。うち1人が取引を拒否したので、警察を呼んで排除したという。

これは警察を呼ぶところまで含めて、UAの約款の通りだ。通常は搭乗カウンターでオーバーブッキングを調整するが、航空会社としてはカウンターで最後の数名と取引するより、乗客全員と取引したほうが成立しやすい(今回もカウンターで取引が成立しなかった可能性がある)。しかし乗客にとっては、いったん搭乗してから降りるのは抵抗が強い。

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これがEconomistの指摘するように「非自発的な搭乗拒否」がUAに多い原因だが、航空会社の選択の幅は「高くてサービスがいい」から「安くて悪い」まで広いほうがいい。オーバーブッキングの問題はゲーム理論で昔から知られており、オークションで解決すべきだというVickeryの1972年の論文がある。

続きは4月17日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

オーバーブッキングは合理的である



ユナイテッド航空の機内から乗客が引きずり出された事件で世界中が盛り上がっているが、これは誤解である。直前にキャンセルする乗客が一定の比率で出るので、定員以上の乗客の予約を受け付けるオーバーブッキングは合法的であり、世界中の航空会社がやっている。

続きはアゴラで。

アメリカをタックスヘイブンにする「国境調整税」


きのうの記事では炭素税と国境調整税を一緒に説明してわかりにくくなったので、後者をきちんと説明しよう。トランプの「メキシコに対する35%の関税」というのは時代錯誤の保護主義だが、共和党の「国境調整税」はそれとは別である。

続きはアゴラで。

豊洲を「アマゾンフレッシュ」の流通センターに


アマゾンで「鮮魚」を検索すると、けっこう出てくる。野菜も果物もある。関東に流通センターを置いてクール宅急便で送れば、消費者が大型店まで魚を買いに行くのといい勝負だろう。豊洲市場の面積は約40haで、築地の2倍だ。今でも衰退している仲卸が2倍に増えるはずがなく、寿司屋などは移転しないので、半分以上はあいてしまう。築地の業者が移転したくないのなら移転を中止して、ネット流通業者を入れればいいのだ。

続きはアゴラで。

「異次元の財政政策」は日本経済を救うか


けさの日経新聞で平田育夫記者(元論説委員長)がシムズの政策をシミュレーションしているが、異次元の財政政策というのはおもしろい。金融政策で行き詰まった安倍首相が、3期目の目玉として財政政策を打ち出す確率は高い。平田記者にならって、私もシミュレーションしてみよう。

続きはアゴラで。






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