経済

東芝は「非上場」企業として出直せ



東芝は半導体部門を売却し、原子力を中心にした会社として生き残りをはかるが、ウェスティングハウスもアメリカで破産申請するらしいので、再建の方向ははっきりしない。「上場廃止は回避すべきだ」とか「外資に売ってはいけない」という声が多いが、私はここで東芝という「入れ物」に縁を切ったほうがいいと思う。

2年前に発覚した「不適切会計」も、原子力の巨額損失の穴を他の部門で埋めようとしたことが原因だった。早い時期に原子力と電機部門を切り離して処理していれば、ここまで泥沼にはならなかった。東芝のように家電から重電まで雑多な部門をもつコングロマリットは、20世紀型の失敗モデルである。

東芝は半導体を売却してWHの債務を整理し、MBO(Management Buyout)で非上場の企業として出直したほうがいい。今回の事件を契機に、日本でも資本市場を活用して企業の再編ができるように制度改正すべきだ。

続きは2月27日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

なぜ「ハイパーリカーディアン」な異常事態が続くのか


翁邦雄氏の新著はFTPLを否定的に評価しているが、私はシムズの予言は当たると思う。彼はロイターでハイパーリカーディアンというおもしろい言葉で、日本の現状を表現している(誤字は訂正された)。
この種の議論をする際によく持ち出されるリカーディアン均衡(リカードの等価定理)的な考え方では、追加的な政府支出の効果は将来の増税予測によって相殺されるというが、現在は[日本では]相殺どころか、それ以上の増税を予測する「ハイパーリカーディアン」とでも呼ぶべき「期待」がむしろ広がってしまっている。
これは私が非リカーディアン不均衡と呼んだものと同じだ。FTPLの均衡条件では「物価水準=名目政府債務/プライマリー黒字の現在価値」で、物価は1前後なので、

 政府債務=累積財政黒字

ここで政府債務は1100兆円だから、物価が安定しているということは、投資家が日本政府は将来1100兆円の財政黒字を出すと予想していることを示す。これは金利を含めると2000兆円以上の増税か歳出削減が必要だから、明らかに政府(財務省)は過剰に信頼されている。いずれ投資家は間違いに気づくだろうと思って、翁氏を初め多くの専門家が金利上昇とインフレを予想したが、ことごとく外れた。なぜだろうか?

続きは2月27日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

物価が「正常化」すると何倍になるか



佐藤主水氏がFTPLの解説をしている。彼の表現では「公債残高(名目額)/今期の物価水準=Σ将来に渡る基礎的財政収支(実質ベース)の現在割引価値」だから、物価水準は次のように決まる:

 今期の物価水準=公債残高/プライマリー黒字の割引現在価値

これは私の式と同じだが、公債残高(正確には名目政府債務)は約1100兆円で、中期財政計画ではプライマリー・バランス(右辺の分母)は2020年でも赤字だから、右辺はマイナスだ。したがって現状は明らかに「非リカーディアン不均衡」なので、横断性条件(ネズミ講の非存在)を仮定すると、いずれインフレで「正常化」して非リカーディアン均衡になる。そのとき物価は何倍になるだろうか?

続きは2月20日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

高校無償化は子供を食い物にする「教育ポピュリズム」

日経新聞が「小池知事の高校無償化は自治体のポピュリズム競争を生み出す」と警告している。東京都は来年度予算案で、私立高校の生徒への補助金の世帯年収の上限を「760万円未満」と全国最高にするが、表のように埼玉県も追随して609万円に引き上げる。

高校無償化には公明党が熱心で、これに反対する会派はない。それどころか自民党も、「教育国債」で大学を無償化する案を検討している。民進党も同じような案を考えており、維新は「憲法改正で教育を無償化する」という方針を掲げている。何でもいいから憲法を改正したい安倍首相も、これに前向きだ。

続きはアゴラで。

世界経済は「アナーキーという均衡」に向かう

安倍首相が、トランプ大統領と日米首脳会談を行う。TPPが焦点だが、もうトランプが正式に破棄したので、日米FTAで仕切り直すしかないだろう。。世界が1930年代のようなブロック経済に向かうことは、一時的には避けられない。これで世界は大混乱の不均衡状態になると思っている人が多いが、逆である。世界はナッシュ均衡に向かうのだ。
pd


続きはアゴラで。

日銀の「新幹線大爆破」



トランプ大統領がドル安を仕掛け、日銀の舵取りがむずかしくなってきた。このまま放置すると、1ドル=100円近いところまで行くのではないか。日銀が円高を防ぐのは簡単である。インフレにするのだ。それが金融政策でできないことは明らかになったが、日銀は国債を買って財政政策もやっているので、それを売ればいい。

そういう「出口」は、いずれやってくる。翁邦雄氏がいうように、現状は映画「新幹線大爆破」のように走っている新幹線の列車に爆弾が仕掛けられ、スピードが時速80km以下になると爆発する状態に近い。黒田総裁が「テーパリング」を示唆しただけで長期金利が上がり、国債を売ったら国債相場が崩壊するだろう。

シムズが来日したとき、マスコミの関心は消費税の凍結に集中したが、そんなことはどうでもいい。「物価水準=名目政府債務/国債の現在価値」だから、国債が値下がりすれば(ハイパー)インフレが起こるのだ。それは(ラムゼーの意味で)最適課税になりうる。

続きは2月13日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

物価水準の財政理論についてのまとめ

日経新聞にシムズのインタビューが載って、いろいろ反響を呼んでいるようだ。2月1日に来日すると日本のマスコミも物価水準の財政理論(FTPL)に興味をもつと思われるので、これまで書いた記事をまとめておこう。

続きはアゴラで。

社会保障が日本経済を食いつぶす

nenkinきのうのBS朝日「激論!クロスファイア」でも、朝日新聞の「経済成長は永遠なのか」という記事が話題になった。このタイトルが示す通り、朝日は「成長は永遠ではないのであきらめろ」といいたいらしいが、田原総一朗さんも竹中平蔵さんも私も「まったくナンセンス」ということで意見が一致した。

この記事の致命的な欠陥は、今の財政が成長を前提に設計されているという事実を見落としていることだ。その最たるものが社会保障である。厚労省の「年金100年安心プラン」の想定している名目運用利回りは、4.2%(中央値)。これは実質賃金が毎年2.6%も上がると想定している。2100年までこんな高成長を前提にして、公的年金は運用されているのだ。

朝日新聞的に説教するなら、「成長を前提にした制度設計を見直せ」というべきだった。特に年金も医療も介護も賦課方式になっているので、人口が減って成長しないと加速度的に現役世代の負担が増える。金融資産の65%をもつ60歳以上に現役世代から所得を逆分配するので、若年層は貧困化する。彼らがそういう不安を感じているから、個人消費が増えない。このまま放置すると、社会保障が日本経済を食いつぶしてしまう。

続きは1月9日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

借金を「肩代わり」した革命

185px-Fukuyama-han_hansatu1730アゴラこども版で書いた「ゾンビ企業」の問題は、経済学ではソフトな予算制約(SBC)としておなじみだ。この言葉をつくったコルナイによると、これが社会主義の崩壊した最大の原因だという。SBCが厄介なのは、問題が薄く広く分散するため、被害が見えにくいことだ。今の日本の政府債務もこれに似ている。

江戸時代の各藩の財政も1700年ごろ行き詰まっていたが、そこから幕藩体制が崩壊するまでに150年以上かかった。ただ当時の民衆は、徳川の武士が薩長の武士に「大政奉還」しただけで、大きな変化とは思っていなかった。それが革命になったのは、1871年の廃藩置県によってである。

幕藩体制の中核だった各藩が「自発的に」権力を放棄したのは、世界史にも類をみない革命だった。その最大の原因として多くの歴史家が指摘するのは、各藩の財政が行き詰まっていたことだ。1870年の段階で各藩の「政府債務比率」は藩の収入の約3倍に達しており、権力をもつメリットはなかった。

新政府は各藩の債務を「肩代わり」すると称して、藩札(写真)を非常に低い為替レートで円に切り替え、「旧藩債償還法」で債務の大部分を踏み倒した。このため巨額の藩債を保有していた大坂の豪商は破産し、江戸の札差も没落した。同じ手は、これからも使えるかもしれない。

続きは1月9日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

「マイルドなインフレ税」は可能か

今年は安倍政権の経済政策が完全に行き詰まり、「インフレ税」が出てくる可能性がある。もちろん露骨にいうと反発をまねくので、出てくるのは政府と日銀の協調だろう。これ自体は正しい。国債の4割、ETFの6割を日銀が保有する日本経済は、実質的に「国有化」されているので、日銀のやっている財政政策をルール化する必要がある。

日銀の出口戦略にも、政府の協力が必要だ。黒田総裁は「政府が財政規律を守ることが重要だ」というが、これは逆である。インフレ税で政府債務を減らすには、政府は財政規律を守らないというコミットメントが必要だ、というのがSimsの提言である。
What is required is that fiscal policy be seen as aimed at increasing the inflation rate, with monetary and fiscal policy coordinated on this objective. In Japan, this might be achieved by explicitly linking planned future increases in the consumption tax to hitting and maintaining the inflation target.
「消費税の増税とインフレ目標を明示的にリンクする」というのは、たとえば「インフレ率が継続的に2%になるまで増税を延期する」という約束だ。これは財政赤字とインフレ率の関係が線形で、たとえば財政赤字が1割増えるごとにインフレ率が1%上がる、というような関係があることを前提にしているが、Del Negro & Simsのシミュレーションによると、そういう関係は必ずしも成り立たない。それをコントロールすることは可能だろうか?

続きは1月9日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。






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