経済

高額療養費制度って何?

維新の発表した「3割削減」の提言に関連して、高額療養費制度がXのトレンドに入っています。よい子のみなさんには関係ない話ですが、わかりやすく解説しましょう。

Q. 高額療養費制度って何ですか?

これは保険医療費の窓口負担が一定の限度額を超えた場合、差額を支給する制度です。69歳までの人の自己負担の上限は次のように決まっています。



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医療費の「窓口負担3割」は社会保障改革のセンターピン

日本維新の会は、保険診療の窓口負担を一律3割とする提言の素案をまとめた。これによって保険医療費は3~5兆円削減でき、社会保障費の膨張に歯止めをかけることができる。



これは少子化対策の「支援金」とは別の話だが、3割負担で社会保障特別会計の公費負担が軽減されれば、その財源を少子化対策に転用でき、政府のいうように「新たな負担なしで」少子化対策の予算措置ができる。

これによって健保組合などから後期高齢者に仕送りされている「支援金」も減らすことができる。3割負担はボーリングでいうと、それを倒すとすべてのピンを倒せるセンターピンなのだ。

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老人医療無料化を終わらせた「健保連の乱」

少子化対策の「支援金」に批判が集まっているが、こういう拠出金は1983年に老人保健法でできた老健拠出金から始まった。これは老人医療の無料化による国民健康保険の赤字を健保組合からの拠出金で埋めるものだが、これに対して健保組合の不払い運動が起こった。

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厚労省の資料

反乱はサンリオから始まった。1999年5月、サンリオ健保組合は老健拠出金の納付を拒否した。拠出金が前年度から4割も増え、組合財政の赤字転落が確実になったからだ。同健保組合は「拠出金は行政の無能を組合に転嫁し、財産権を侵害するものだ」として厚生省に不服審査請求を提出し、拠出金の半額を支払わなかった。

この審査請求は却下されたが、サンリオに呼応して全国1800の健保組合の加入する健康保険組合連合会(健保連)が、7月分の老健拠出金の支払いの一時凍結を決めた。この「健保連の乱」は政府に大きな衝撃を与え、滞っていた老健制度の改革が一挙に進んだが、実はこの反乱を仕掛けたのは厚生省OBだった。

続きは2月12日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)

後期高齢者を3割負担にすれば保険医療費が5兆円減る

医療費の財源をめぐっては、原則1割負担になっている後期高齢者を3割負担にすべきだという批判が強い。後期高齢者医療費は18.4兆円。人口の14%しかいない75歳以上に医療費46兆円の4割が食いつぶされているのだ。このうち保険料負担は1.5兆円、窓口負担は1.5兆円で、40%が現役世代からの支援金である。



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社会保険料から「社会保障税」へ

後期高齢者への「支援金」には多くの人の怒りが集まっているが、これは6兆円以上なので、なくすには財源が必要だ。一つの考え方は高所得者の保険料を引き上げる応能負担だが、これは税の考え方で保険原理と矛盾する。保険は医療サービスに対する応益負担だからである。


現在の社会保険料は、金融資産の6割を保有する高齢者に貧しい現役世代から分配する逆分配になっている。これを是正するには、所得(あるいは資産)に応じた社会保障税にする必要がある。

保険を税に切り替えるのは、80年前に健康保険が始まって以来の大改革で容易ではないが、高福祉の負担に悩んだ欧州では、このような改革が進んでいる。オランダでは1990年から、次のような社会保険料と税の一体改革が行なわれた。
  1. 社会保障番号を導入し、所得税と保険料を一元的に徴収
  2. 社会保険料の課税ベースを所得税と統一し、所得税の社会保険料控除を廃止
  3. 年金保険料の企業負担を廃止し、すべて本人負担とする
  4. 所得控除を廃止して税額控除に切り替え、低所得者の社会保険料を軽減する
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少子化対策の「支援金」は健康保険料の目的外使用

政府はこども家庭庁の「少子化対策」の予算総額3.6兆円のうち1兆円を健康保険料からの支援金でまかなう方針だ。


この「月額500円弱」という数字はおかしい。健康保険(国保を含む)の被保険者数8000万人を分母にすると、1人あたりの負担は年額1万2000円(事業主負担を含む)である。

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財政タカ派の逆襲が始まったが、財政再建の目標が的はずれ

自民党の裏金事件のゆくえは混沌としているが、今の段階で一つだけはっきりしていることがある:これまで質量ともに自民党の中心だった安倍派が解体され、第2次安倍政権以来の金融・財政バラマキ路線が終わることだ。その象徴的な出来事が、財政健全化推進本部の新体制である。



これまでも自民党内では財政タカ派の健全化本部と「責任ある積極財政を推進する議員連盟」が併存していたが、安倍派を中心とする後者が圧倒的に優勢だった。それが今回の騒ぎで空中分解し、健全化本部の本部長が古川禎久、本部長が小渕優子、幹事長が青木一彦という茂木派からの脱藩組で占められた。

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統合政府は608兆円の債務超過

また高橋洋一氏が嘘を繰り返しているので、訂正しておこう。

これは一昨年の記事で私が指摘したことだが、そもそも彼のいうバランスシートは、資産と負債がバランスしておらず、BSになっていない。日本政府は、1661兆円も国債を発行していない。

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サラリーマンを搾取する「国民皆保険」というフィクション

「言論アリーナ」で、国民民主党の玉木さんと維新の音喜多さんと一緒に、いま話題の社会保険料について議論した。



日本社会の直面している最大の脅威は高齢化ではなく、そういう人口動態の大きな変化に制度が適応できず、いまだに高度成長期の若かった国のしくみを続けていることだ。その最たるものが、社会保障の国民皆保険である。日本のように全国民が強制加入の社会保険は世界に類を見ない。

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高齢化がなければ日本の成長率は世界最高?

日本経済が停滞している一つの原因が高齢化であることに疑問の余地はない。1990年を100とした実質GDP(購買力平価)でみると、図1のようにG7の中で日本の成長率はイタリアと並んで最下位である。

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図1 G7諸国の実質GDP

その大きな原因は人口が減っているためだが、一人あたりGDPでみても図2のように下から2番目だ。したがって日本の「失われた30年」の原因は高齢化だけではなく、労働生産性の低下や投資の減少などの構造的要因だと考えられている。

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図2 一人あたりGDP

しかしFernandez-Villaverde, Ventura & Yaoは、図3のようにGDPを生産年齢人口(15~64歳)で割ると、日本はG7の平均以上であることを発見して話題になった。日本の労働生産性は高いが、労働人口が減っているため、全人口で割るとGDPが低くなるというのだ。

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図3 生産年齢人口あたりGDP

日本の生産年齢人口あたり成長率はアメリカより高く、2010年代ではG7で最高だった。つまり日本は特殊ではなく、先進国の成長にとって最大の脅威は高齢化であり、それが最初に日本で起こっただけだというのだ。これは本当だろうか?続きを読む
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