経済

ベーシック・インカムが可能にする自由時間の拡大

Basic Income: A Radical Proposal for a Free Society and a Sane Economy
アゴラで紹介したブレグマンのBIが話題になっているようだが、本質的に新しい話ではない。本書はこれを学問的に精密に論じたもので、ねらいはヨーロッパでも拡大する所得格差を是正し、技術革新で自由になる時間を合理的に使うことだ。

先週のJBpressでも紹介したようにBIの提案は昔からあり、1950年代にティンバーゲンなどが提案した。同じころスティグラーやフリードマンが負の所得税(NIT)を提案したが、70年たっても実現しない。それは従来の社会保障を根底からひっくり返すためだ。

実際にはBIはそれほど革命的ではなく、たとえば生活保護だけをBIに置き換えることも可能だ。最大の問題は財源をどうするかで、NITは所得税を想定しているが、これは不公平の原因だ。2008年のアメリカ大統領選挙でハッカビーが提案したのは、BIの財源を連邦消費税(VAT)に求める税制改革で、経済学的には合理的である。

続きは7月17日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか

人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか
内閣支持率は危険水位に近づいてきた。秋の臨時国会では、補正予算や消費税増税の再々延期が出てくるかもしれない。もう安倍首相も「デフレ脱却」といわなくなり、最近はもっぱら「雇用の改善」が1枚看板だ。

たしかに完全失業率は2%台と完全雇用に近く、有効求人倍率は1.5倍とバブル期以上の人手不足なのに、実質賃金が上がらないのはなぜか、というパラドックスが本書の問いで、これに22人が答えている。バラバラの論文を寄せ集めただけだが、意外性があるのは第9章「家計調査等から探る賃金低迷の理由――企業負担の増大」(大島敬士・佐藤朋彦)である。

続きはアゴラで。

消費税増税の「再々延期」はあるか

竹中平蔵氏が、Voice8月号で「2%のインフレ目標が実現するまで消費税の増税を延期する」というシムズの提言を評価している。今年6月の骨太の方針では「債務残高のGDP比の安定的な引き下げ」を目標にしてプライマリーバランス黒字化を放棄したので、2019年10月に予定されている10%への増税が再々延期される可能性も出てきた。

続きはアゴラで。

法人税ゼロの時代がやってくる

The Economics of Tax Policy
マンキューなどの国境調整炭素税は合理的な提言で、石油メジャーも参加した。これが実現すると、国境調整税(DBCFT)という画期的な改革の第一歩になる。これはトランプの保護主義と混同しやすいが、中身はまったく違う。本書はそのしくみを学問的にくわしく論じたものだが、超簡単に解説しよう。

日本から自動車を輸出するとき、アメリカが20%の関税をかけるとしよう。これは国内製品の保護になるのでWTO違反で提訴されるが、すべての輸入品にも国内品にも一律にかけたら、そういうバイアスはなくなる。これはEUの付加価値税と同じく国内にもかける関税だから、資源配分に中立なのだ。海外に対しては輸入制限になるが、そのぶんドルが上がって調整され、貿易収支は変わらない。

日本も消費税を20%に引き上げると「保護主義競争」になって世界経済が縮小する、というのがアダム・スミス以来の経済学のセントラル・ドグマだが、これはDBCFTには当てはまらない。それは生産地に関係なく同じ税率を消費地でかける一括固定税なので、理論的には資源配分のゆがみは最小になり、WTOもFTAも貿易交渉も必要なくなる。

DBCFTを導入する代わりに資源配分のゆがみが最大の法人税を廃止すれば、税収中立にしても5%以上はGDPが増える。東京のお台場に法人税ゼロの「オフショア特区」をつくれば、世界中から銀行が集まってくるだろう。

続きは7月10日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

原田泰氏は日銀審議委員を辞任せよ

ユダヤ人の人権団体、サイモン・ウィーゼンタール・センターが、日銀の原田泰審議委員の発言について「深く憂慮」する声明を出した。Abraham Cooper副理事長は、次のようにコメントしている。
Once again we are witness to a member of the Japanese elite invoking praise for Hitler and Nazi policies - this time from a Central Banker official. An outrage. […] While we note his apology, Yutaka Harada, a member of the board of the Bank of Japan praised Hitler's economic policies as "appropriate" and "wonderful".

続きはアゴラで。

原田泰氏の賞賛する「ヒトラーの経済政策」は正しかったのか

ロイターによれば、日銀の原田泰審議委員は29日の講演で「ヒトラーが正しい財政・金融政策をした」と述べ、NYタイムズなどで世界にも配信された。講演記録は公表されていないので、詳細は不明だが、彼の発言はこのようなものだったという。
ケインズは財政・金融両面の政策が必要と言った。1930年代からそう述べていたが、景気刺激策が実際、取られたのは遅かった。ヒトラーが正しい財政・金融政策をやらなければ、一時的に政権を取ったかもしれないが、国民はヒトラーの言うことをそれ以上、聞かなかっただろう。彼が正しい財政・金融政策をしてしまったことによって、なおさら悲劇が起きた。ヒトラーより前の人が、正しい政策を取るべきだった。
これは「ヒトラーが初めてケインズ政策を採用してドイツ経済を救った」という通俗的な話だが、今では誤りだと判明している。


上の図のように、ドイツの失業者はヒトラーが政権についた1933年から激減したが、500万人以上も失業者が減ったのは、原田氏のいうような「ケインズ政策」のおかげではなく、毎年100万人徴兵したからだ。ドイツの若者は職を失う代わりに、戦場で命を失ったのだ。つまり原田氏が「正しい政策」として賞賛したのは戦時経済である。日銀は責任ある対応をすべきだ。

続きは7月3日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

「バリアフリー」のインフレに歯止めをかけよう



バニラ・エアの事件で議論が盛り上がっているが、乙武さんの記事は事実誤認だ。これについては尾藤さんの記事も指摘するように、バニラ・エアの対応は違法ではない。

続きはアゴラで。

フリードマンの提案した「累進消費税」

アメリカ議会では国境調整税が成立する可能性が出てきたようだが、法人税の廃止にはいつも「金持ち優遇だ」という類の批判が出る。これは誤りで、高い法人税を避けるために企業が海外移転すると雇用が失われ、その損失は労働者が負担するのだ。

こういうバイアスは、グローバル化で生産要素が流動化すればするほど大きくなる。それを減らすには、場所の動かしにくい消費国で課税することが合理的だ。それがキャッシュフロー課税の発想で、ロバート・フランクなどのリベラル派の提案する累進消費税も、中身はほとんど同じだ。それはフリードマンが提案したことでもわかる。

そう。あのミルトン・フリードマンである。彼はフランクが1997年に累進消費税の論文を発表したとき、封筒を送ってきたという。手紙には「政府がもっと金を集めてもっと使うべきだというあなたの意見には同意しない」と断った上で、「もし政府に本当の追加の税収が必要になったら、累進消費税は何より有効な手段だろう」と書かれていた。

そこに同封されていたのは、フリードマンが1943年にAERに発表した"The Spendings Tax as a Wartime Fiscal Measure"という論文だった。そこには「戦費調達の方法として最適なのは消費税だ」と書かれていたのだ。

続きは7月3日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

「国境調整税」でドル高がやってくる

死んだと思っていたアメリカ共和党の国境調整税が、民主党との取り引きで生き返る可能性が出てきたようだ。これは共和党の主流派が推進しているが、トランプ大統領がそのコンセプトを理解していないので、どうなるかはまだわからない。

他方、マンキューやフェルドシュタインなどの提唱した炭素税の国境調整に、エクソンモービルやBPに続いてサマーズが賛成した。彼は「国境調整」という考え方にも「合理的で、合衆国憲法より古い」と賛成している。彼もいうように関税は昔からあるが、国内にも関税をかけるのが画期的だ。

続きはアゴラで。

「ひとり勝ち社会」で生き残る方法

週刊東洋経済 2017年6/24号 [雑誌](アマゾン膨張)
ホールフーズ買収で、アマゾンは生鮮食品まで進出する。アメリカの電子商取引ではアマゾン、検索ではグーグルのシェアが50%を超え、「ひとり勝ち」の様相が強まっている。こういう現象は一時「収穫逓増」といわれてコンサルがかつぎ回ったが、100年前から経済学の教科書に載っている「規模の経済」だ。

たとえばスマホの工場の建設費が100億円かかり、その材料費が1個1万円だとすると、最初の1個のコストは100億円だが、2個つくると50億円…と安くなり、100万個つくると1個2万円(固定費1万円+変動費1万円)になる。それは当たり前だが、経済学では困ったことになる。つくればつくるほど安くなるので、最適規模が無限大になってしまうのだ。

もちろん実際の企業規模は無限大ではないので何かが間違っているが、どこが間違っているのだろうか。これは簡単なようで、むずかしい問題である。「いいものを安くつくれば勝てる」という市場経済のルールは、ここでは通用しないのだ。日本のIT企業が負けたのも「ひとり勝ち社会」のルールを知らなかったからだ。

続きは6月26日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。






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