経済

金融危機をなくす「ナローバンク」の挑戦

「リーマンショック」から10年。金融危機の再来を心配する声が世界的に高まっているが、今の銀行システムが続く限り、そのリスクは残る。金融危機の本質は資産バブルの崩壊ではなく、銀行の取り付けだからである。取り付けの原因は単純だ:預金の大部分は企業への貸出に使われて信用創造が行われるので、すべての預金者が同時に預金を引き出すと、銀行は必ず破綻するからだ。

だから取り付けをなくす方法も単純だ:預金(決済機能)を貸出から切り離し、信用創造をなくせばいい。銀行が預金をすべて政府や中央銀行に預け、引き出しに100%応じられるようにするのだ。銀行をそういう決済機能に特化したナローバンクにする規制案は1930年代からあるが、銀行業界が反対して実現しなかった。決済機能だけでは、収益が上がらないからだ。

ところがアメリカでは、みずから"The Narrow Bank"(TNB)と銘打つ銀行が登場した。これは預金をすべてFRBへの準備預金で運用する銀行だが、FRBはTNBの口座開設を拒否した。その理由は不明だが、先月TNBはFRBに対して開設を求める訴訟を起こした。これをシカゴ大学のコクランが「ナローバンクは金融危機をなくすイノベーションだ」と擁護している。

続きは10月22日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

政府のバランスシートが金融危機を増幅する

今月発表されたIMFの財政モニターが、初めて世界の政府のバランスシートを比較して話題になっている。それによると2016年の日本政府の粗債務(一般政府部門)はGDPの287.5%だが、資産と相殺した純資産(net worth)は-5.8%。わずかにマイナスだが、ほぼゼロだ。しかしこれで「国の借金は資産でチャラ」と喜ぶのは早い。



続きはアゴラで。

ベーシックインカムより社会保障改革を

このごろ「AI(人工知能)で雇用が奪われる」という類の話と一緒に「BI(ベーシックインカム)を導入すべきだ」という話がよく出てくるが、AIとBIは無関係だ。こういう話はブレグマンが始まりだと思うが、彼の議論は財源を示していないので、政策として意味をなさない。

AIは「雇用を奪う」わけではない。テクノロジーで人間の労働が代替される現象は19世紀から始まっているが、肉体労働が機械に置き換えられたときも、コンピュータで事務労働が代替されたときも、雇用が奪われたわけではない。自動車が出てきて馬車の雇用は失われたが、自動車の雇用が増えたので、全体としての労働需要は増え、賃金も上がった。

続きはアゴラで。

世代間格差は存在しないのか?

安倍改造内閣の最大のテーマは「全世代型社会保障」だという。社会保障の負担増は政治的には不人気なので、安倍政権は消費税の増税を先送りして社会保障の赤字を国債で埋め、それを日銀が消化して負担を先送りしてきたが、それも限界が来たということだろう。

続きはアゴラで。

若者は老人より豊かになる

世代間格差が生涯所得で1億円あるというと「若者は老人より貧しくなる」と思い込む人が多いが、これは錯覚である。この数字は財政学の世代会計で社会保障などによる個人の国に対する超過負担を計算したもので、個人が絶対的に貧しくなることを意味するわけではない。個人の豊かさを何で示すかはむずかしいが、簡単な指標として家計金融資産を考えよう。

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家計金融資産の残高(日銀調べ)

日銀の資金循環統計によると、2018年4~6月期の家計金融資産は1848兆円。2008年以降は438兆円増えて、史上最高になった。負債を引いた純資産ベースでみても1530兆円。資産が増えた大きな原因は株価の上昇なので、今後もこのペースが続くかどうかはわからないが、金融資産を相続する子が親より豊かになることは確実だ。

これに対して一般政府債務は1296兆円、純債務ベースでは794兆円だから、家計純資産から一般政府純債務を引くと736兆円。ストックでみると、国の借金を引いても将来世代は現在世代より豊かになるのだ。フローでみると、将来世代の超過負担が増えて可処分所得は下がるが、これも高齢者の受ける給付と相殺すると、国民全体としては豊かになる。問題はその富の分配に大きなゆがみが生じることだ。

続きは10月15日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

【再掲】ローマーの内生的成長理論

ポール・ローマーが、スウェーデン国立銀行賞を共同受賞した。彼の「内生的成長理論」はソロー以来の成長理論のイノベーションで、1990年代には一世を風靡した。今は使われないが、歴史的には妥当な授賞だろう。成長の要因を「知識の外部性」に求める発想は重要で、「生産性」の意味を考える上で政策的な含意も大きい。続きを読む

国債が相続されたら世代間格差はなくなる?

ダイヤモンド・オンラインで、塚崎公義氏が「相続を考えると世代間格差は存在しない」と論じている。日本の政府債務は1100兆円だが、家計金融資産は1800兆円ある。日本国民を一つの家族と考えると、親が子供から1100兆円借金しているが、その遺産(国債を含む)1800兆円は子供が相続するので、純資産でみると子供は700兆円豊かになる。

これは会計的には正しい。債権と債務はつねに等しいので、相続税がゼロで国債がすべて次世代に無償で相続されるとすると、将来世代の負担は発生しない。逆に相続税が100%で、遺産がすべて国に没収されても負担は発生しない。日本国民を一つの家族と考え、「借金も税金も資金移動としては同じ」と割り切れば、世代間格差は問題にならないのだ。

もちろん日本国民は一つの家族ではないので、借金と税金は同じではない。現在世代は一般会計予算100兆円に対して税金を60兆円しか払っていないので、残り40兆円の課税は将来世代に延期され、国債を相続した人と納税者の格差が拡大する。このように国民の資産を政府が再分配することによる不公平と非効率が、国債の負担なのだ。

続きは10月8日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

世界の金余りが逆転するとき

過剰債務というと政府債務ばかり問題になるが、Financial Timesによると、民間を含む世界の総債務は247兆ドルと史上最大になった。過剰債務は2008年の世界金融危機の前と似ているが、債務の規模は1.5倍だ。

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このうち最大の伸びを示しているのは、新興国の非金融セクターである。これは2010年代の金融緩和で資金が新興国にばらまかれたためだが、先進国ではインフレにならない一方で、新興国ではトルコの通貨危機のような危険な兆候が見えている。この状況でFRBが利上げし、ECBが今年中に量的緩和を終了すると「リスクオフ」で新興国から資金が引き上げ、金余りが逆転するだろう。

これまで世界の景気回復は、先進国の銀行が低利で借りた資金を新興国に投資することで維持されてきたが、それが巻き戻されると、債務危機に発展するおそれがある。こういう危機は非対称で、巻き戻されるときは速い。図のように2000年から2008年まで続いた金余りが逆転したのは、わずか半年ほどの出来事だった。

続きは8月27日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

軽減税率は「税金のサマータイム」

サマータイムには賛否両論というより反対論しか出てこないので、「まさか実現しないだろう」という楽観論が多いが、油断できない。同じように「海外では実施したが後悔している」制度が、来年実施される予定だ。消費税の軽減税率である。アゴラ研究所にも税務署から「よくわかる軽減税率制度」というパンフレットが来た。

軽減税率は2017年4月に消費税率を10%に引き上げる法律で決まったが、増税が再延期されて2019年10月になった。増税は今年の骨太方針で明記されたので、再々延期されなければ、軽減税率も実施される。対象は酒類・外食を除く飲食料品と、週2回以上発行される新聞である。



続きはアゴラで。

医師に免許は不可欠か

超高齢化社会になる中で、最大の問題は医療費の膨張である。団塊の世代が後期高齢者になる「2025年問題」を控え、医療費を抑制しないと社会保障は維持できなくなる。医師不足も深刻になり、特に勤務医の労働条件が悪化している。これは医師が絶対的に足りないのではなく、都市や特定の診療科目に偏在していることが原因だ。

それを是正する一つの対策は、医師免許とは別に「準医師」の資格を認定し、看護師や薬剤師に医療行為を認めることだ。たとえば医師が一度、処方した薬を、その後も続けて処方するのは、看護師や薬剤師の判断でできるだろう。患者には選択権を与え、準医師は保険単価を安くすればいい。

こういう職業免許から資格認定への改革は、ミルトン・フリードマンが『資本主義と自由』で提案したが、それから半世紀以上たっても前進しない。特に医師免許の緩和は、賛成する人が少ない。「無免許医師の誤診で命を落としたら取り返しがつかない」と考えるからだが、それは本当だろうか。

続きは8月20日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。






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