経済

最低賃金を上げる「非伝統的な労働政策」

人手不足は日本経済の構造問題であり、これを「特定技能」と称する外国人労働者で埋めようという安倍政権の政策は、3K職場を温存してアジア人の低賃金労働者を増やすだけだ。長期にわたって労働の超過需要が続く原因は単なる人口減少ではなく、労働市場のミスマッチだからである。

低収益の中小企業が雇用の8割以上を占め、人手不足でも低賃金のパート・アルバイトを増やして正社員の賃金を上げない。このため労働者が集まらず、売り上げも収益も増えないので経営が行き詰まる「悪い均衡」に入ってしまった。つまり

 中小企業の低収益→低賃金→人手不足→低収益

という悪循環が起こっているのだ。こういうコーディネーションの失敗を脱却するには、労働者が高収益企業に移動して低収益企業が淘汰されることが望ましいが、政府が雇用規制で労働移動を阻害し、参入規制で中小企業を守るのでミスマッチが残ったままだ。

続きはアゴラで。

自由な移民は福祉国家と両立しない

臨時国会は、入管法改正案で大荒れだ。この原因は、人口減少と高齢化という構造問題に安倍政権が場当たり的な移民政策で対応しようとしているからだ。次の図でもわかるように、生産年齢人口(15~64歳)は1995年の8716万人をピークに毎年ほぼ1%下がり続け、2060年には4400万人程度になると予想されている。


人口の推移と予測(内閣府)

続きはアゴラで。

労働市場のミスマッチは2000年代に拡大した

アゴラの記事はちょっとややこしいので、経済学的に解説しておこう。次の図は労働市場の需給状況を示すUV曲線と呼ばれるもので、縦軸に失業率、横軸に欠員率(人手不足)をとっている。労働市場にまったく摩擦がないときは原点(失業も欠員もゼロ)だが、現実にはミスマッチがあるので、UV曲線の原点からの距離は労働市場のマッチングの効率性を示す。

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失業率と欠員率のUV曲線(労働政策研究・研修機構)

不況になると失業率が上がって左上に動き、景気がよくなると人手不足で右下に動くが、1990年代からの長期不況でUV曲線が大きく上にシフトした。その後、失業率が低下するとともに欠員率が増えたが、2008年の金融危機で2000年ごろの状況に戻り、2010年代に失業が減って人手不足が拡大した。

このように今の人手不足は循環的なものだが、問題は2000年代に大きくなったミスマッチが元に戻らないことだ。労働政策研究・研修機構の計算によれば、2018年第3四半期の完全失業率は2.43%で、均衡失業率2.88%を下回る。このように「自然失業率」を超える超過需要になると、賃金が上がってインフレになるのが普通だが、そうならない。この背景には、どういう構造的な変化があるのだろうか。

続きは11月12日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

外国人労働者を増やしても人手不足は解決できない

政府は外国人労働者に「特定技能」という在留資格をもうける入管法改正案を国会に提出したが、この法案には穴が多い。そもそも「外国人労働者は移民ではない」という定義が意味不明だ。国連の定義では、移民とは「1年以上外国で暮らす人」である。

「特定技能1号」という資格で単純労働の就労ビザを発行し、滞在中に高い専門性が確認されれば「特定技能2号」として実質的な永住権を与えることになっているが、法案には対象業種も書いてない。受け入れ人数も不明だが、「初年度は4万人程度」だという。

こういう異例のドタバタで法案が出てきた背景には、来年の統一地方選挙や参議院選挙をにらんで中小企業の人手不足に対応しようというねらいがあるのだろうが、この程度では焼け石に水だ。2060年までに日本の生産年齢人口は約3000万人減る。毎年4~5万人の移民が入ってきても、その5%程度しか埋まらないのだ。

続きはアゴラで。

不良債権は「自己責任」論で金融危機に発展した

日銀の白川前総裁が、朝日新聞のインタビューに答えている。内容は近著『中央銀行』の要約になっているが、興味深いのは1990年代の不良債権処理の話だ。
――リーマン・ブラザーズを救済すれば、あれほど危機は深刻にならなかったのではないですか。

「難しいところです。たしかに危機が深刻化した直接の引き金は(米国の中銀である)FRBがリーマン救済の融資をしなかったことでした。FRBは担保不足を理由にしましたが、実は議会や国民の反発の声が非常に強かったからではないかと想像します」

「対照的なのが97年、日銀が山一証券の自主廃業の際、無制限の特別融資をしたケースです。[…]政府・日銀は日本発の世界金融危機を防ぐことを優先し、日本経済の落ち込みはリーマンの時と比べ小さくできた。だがそれゆえに抜本策の採用は遅れ、問題先送りだと批判されました」

続きはアゴラで。

ビールの「消費税率」74%は外税表示に

来年の消費税引き上げで「複数税率」が導入される見通しだが、これは「軽減税率」だけではない。酒税・タバコ税・揮発油税などの個別消費税は今すでに複数税率であり、今回の税法改正で「重課税」になる。たとえばビールの税率は、アサヒの「スーパードライ」の場合、本体価格132円に酒税77円かかり、その合計価格209円に8%の消費税が課税されている。これが消費税10%になると230円、本体価格に対して74%課税される。

続きはアゴラで。

金融危機をなくす「ナローバンク」の挑戦

「リーマンショック」から10年。金融危機の再来を心配する声が世界的に高まっているが、今の銀行システムが続く限り、そのリスクは残る。金融危機の本質は資産バブルの崩壊ではなく、銀行の取り付けだからである。取り付けの原因は単純だ:預金の大部分は企業への貸出に使われて信用創造が行われるので、すべての預金者が同時に預金を引き出すと、銀行は必ず破綻するからだ。

だから取り付けをなくす方法も単純だ:預金(決済機能)を貸出から切り離し、信用創造をなくせばいい。銀行が預金をすべて政府や中央銀行に預け、引き出しに100%応じられるようにするのだ。銀行をそういう決済機能に特化したナローバンクにする規制案は1930年代からあるが、銀行業界が反対して実現しなかった。決済機能だけでは、収益が上がらないからだ。

ところがアメリカでは、みずから"The Narrow Bank"(TNB)と銘打つ銀行が登場した。これは預金をすべてFRBへの準備預金で運用する銀行だが、FRBはTNBの口座開設を拒否した。その理由は不明だが、先月TNBはFRBに対して開設を求める訴訟を起こした。これをシカゴ大学のコクランが「ナローバンクは金融危機をなくすイノベーションだ」と擁護している。

続きは10月22日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

政府のバランスシートが金融危機を増幅する

今月発表されたIMFの財政モニターが、初めて世界の政府のバランスシートを比較して話題になっている。それによると2016年の日本政府の粗債務(一般政府部門)はGDPの287.5%だが、資産と相殺した純資産(net worth)は-5.8%。わずかにマイナスだが、ほぼゼロだ。しかしこれで「国の借金は資産でチャラ」と喜ぶのは早い。



続きはアゴラで。

ベーシックインカムより社会保障改革を

このごろ「AI(人工知能)で雇用が奪われる」という類の話と一緒に「BI(ベーシックインカム)を導入すべきだ」という話がよく出てくるが、AIとBIは無関係だ。こういう話はブレグマンが始まりだと思うが、彼の議論は財源を示していないので、政策として意味をなさない。

AIは「雇用を奪う」わけではない。テクノロジーで人間の労働が代替される現象は19世紀から始まっているが、肉体労働が機械に置き換えられたときも、コンピュータで事務労働が代替されたときも、雇用が奪われたわけではない。自動車が出てきて馬車の雇用は失われたが、自動車の雇用が増えたので、全体としての労働需要は増え、賃金も上がった。

続きはアゴラで。

世代間格差は存在しないのか?

安倍改造内閣の最大のテーマは「全世代型社会保障」だという。社会保障の負担増は政治的には不人気なので、安倍政権は消費税の増税を先送りして社会保障の赤字を国債で埋め、それを日銀が消化して負担を先送りしてきたが、それも限界が来たということだろう。

続きはアゴラで。






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