経済

日本の「リーマン・ショック」は大蔵省が起こした

長銀の頭取だった大野木克信氏が死去した。朝日新聞の原真人編集委員は「金融危機の批判を一身に受け、スケープゴートの役目を担わされた」と書いているが、私も同じような感慨を抱かざるをえない。

続きはアゴラで。

バーナンキの提案する「ヘリマネ2.0」

バーナンキの日銀講演が話題を呼んでいる。原論文もざっと読んだので、ポイントと思われる点を紹介しておこう。彼の書いた要旨を率直に訳すと、
  1. 日銀は今のインフレ目標を今後も維持すべきだ。
  2. 2013年以降の日銀の「量的・質的緩和」は失敗した。
  3. 政府が財政支出を増やすか減税し、それを日銀が一時的に今より高いインフレ目標を設定してファイナンスすべきだ
要するに財政赤字を拡大して日銀が国債を買い、2%より高いインフレ(たとえば2.7%で3年間)にして名目政府債務の増加をキャンセルしようという大胆な提案だ。彼は「ヘリコプターマネーではない」というが、これは実質的には(彼が15年前に提案した)ヘリマネに近い。シムズの「インフレ税」とも似ているが、理論的背景は違う。

バーナンキが前から世界的な低金利の原因としているのは、貯蓄過剰である。世界経済も日本経済も貯蓄過剰で低金利になり、そのため物価が上がらないので賃金が上がらず、そのため消費が増えないので物価が上がらない…という「悪い均衡」に陥っているので、政府が貯蓄を使って「よい均衡」にジャンプすればいいという話だ。

これは彼も引用しているクルーグマンの「複数均衡」や、スヴェンソンのフールプルーフ理論と同じ発想で、理論的にはありうる。黒田総裁の政策も、こういう複数均衡を想定していたと思われるが、うまく行かなかった。そこには見落としがあったからだ。

続きは5月29日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

政府は「大きすぎてつぶせない」か

モラル・ハザードという言葉は「倫理の欠如」などと誤訳されるが、このmoralは「心理的な」という意味で、保険用語で「火事になっても保険金が出るから大丈夫」という安心感から火の用心を怠ったりするなど、危険を回避するための手段や制度ができることによって人々の注意力が低下したり、自己への規律が失われたりして、危険の発生率が高まること(英辞郎)だ。

これは情報の非対称性によって起こることが多いが、非対称性がなくても起こる。たとえば銀行が破綻すると、事後的には救済することがパレート最適なので、誰もがそれを知っていても過剰なリスクを取るインセンティブがある。地方銀行はつぶしてもいいが、メガバンクは大きすぎてつぶせない(Too Big To Fail)というパラドックスが起こってしまう。

TBTFは普遍的な問題で、最大のパラドックスは政府債務だ。政府は明らかにつぶすには大きすぎるので、その信用を利用して安倍政権のように(プライマリーバランスを無視して)際限なく政府債務をふくらますモラル・ハザードが発生する。これを日銀が財政ファイナンスして債務を先送りする「ネズミ講」は、どこまで続けることができるだろうか。

続きは5月22日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

バカでもできるデフレ脱却

日銀の「出口戦略」は時間の問題だと思うが、黒田総裁は粘っている。それはここでテーパリングすると、彼の掲げた2%のインフレ目標をあきらめたことを世界に示す敗北宣言になるからだが、まだ量的緩和が足りないと思っている可能性もある。これは昔ちょっと話題になったスヴェンソン(元スウェーデン中央銀行副総裁)のフールプルーフ理論とも解釈できる。

これは「デフレ脱却はバカでもできる」という意味で、物価水準ターゲティング為替レート・ペッグの組み合わせだ。日銀が、たとえば「物価水準を2%上げるために1ドル=120円まで量的緩和する」と宣言して為替介入し、円を切り下げればよい。日銀法では為替介入の権限はないが、日銀が財務省と協調して「非不胎化介入」すれば、理論的には可能である。

黒田総裁の掲げた「インフレ目標」は、実は円安誘導だったのではないか、と私は指摘したことがあるが、元日銀理事の早川英男氏の意見も同じだった。ではなぜバカでもできるはずのインフレ目標が失敗したのだろうか?

続きは5月22日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

「世代間格差」は問題ではない

ネットでちょっと話題になっている厚生労働省の年金マンガを読んでみた。厚労省の「100年安心」という公式見解をマンガにしたもので、「世代間格差」の章では「受け取る年金に差があったとしても、それだけで若者が損とは言えない」という。

キャプチャ2


世代会計でみると、今のゼロ歳児の(税・社会保険料の)正味の負担は、今の60歳の世代より生涯所得で約1億円多い。この計算は厚労省も認めるが、年金は金銭の損得ではないという。親の世代が稼いで相続財産やインフラを残すので、若者は損していないというのだ。このマンガのように若者が納得したら、年金問題はすべて解決である。

続きは5月15日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

国債が下落してもリフレ派は困らない

ニューズウィークで、リフレ派の野口旭氏が「国債が下落しても誰も困らない」という。確かに金利が上がって日銀が損しても、得した売り手が必ずいる。私が野口氏から1億円借金して踏み倒しても、社会全体で合計すると、彼が1億円損して私が1億円得するゼロサムの所得移転にすぎない。

続きはアゴラで。

所得政策の時代がやってくる?

IMFは昨年の対日審査報告書でアベノミクスの失敗を宣告し、その「再起動」(reload)を求めた。金融政策も財政政策も行き詰まった今、残るのは政府がコストプッシュ・インフレを起こす所得政策だ、というのが彼らの勧告である。賛成する経済学者はほとんどいないが、おもしろいので紹介しておこう。

キャプチャ

IMFワーキングペーパーによれば、図のように失業率が下がる一方で人手不足(vacancy rate)が増え、労働市場のミスマッチが強まっている。人手不足になったら賃金が上がるはずだが、実質賃金は上がらない。正社員の不足を低賃金のパートタイマーで埋めるので、失業率は下がるが平均賃金は上がらない。このため消費需要が低迷して経済が停滞する「コーディネーションの失敗」が起こっている。

失業率が欠員率(人手不足)と等しい45度線との交点を均衡状態と考えると、1980年代までは低失業・低欠員の「よい均衡」だったが、90年代には高失業・低欠員の「悪い不均衡」になり、2010年代には中失業・中欠員の「悪い均衡」になった。これをよい均衡に戻すには、政府が最低賃金を引き上げるなどの「ビッグプッシュ」が必要だ、というのがIMFの提言である。

続きは5月15日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

世界一ファンタスティックな投資対象

安倍首相が2019年10月の消費税増税を再々延期するとすれば、7月の都議会選挙(衆議院とダブルかもしれない)の前に発表するだろう。そのとき債券市場はどうなるだろうか。次の図は、Zerohedgeの紹介しているAlbert Edwardsのデータだ。

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30年物の日本国債は年次でみると2007年から一度も値下がりしたことがなく、15年間で1.8倍に値上がりした世界一ファンタスティックな投資対象である。かつての「土地神話」のようなものだが、この神話はいつまで続くだろうか?

続きは5月8日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

安倍首相は消費増税をまた延期するか

安倍首相が2020年に憲法改正を施行するという方針を出したことは、今後の財政運営にも影響するだろう。少なくとも国民投票の行われる2019年中は、景気は後退してはいけない。日銀の出口戦略は封印され、2019年10月に予定されている消費税の増税がまた延期される可能性も出てきた。

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この図はOECDの描いた動的ラッファー・カーブである。これは昔のラッファー・カーブに、FTPLで財政の破綻確率を入れたものだ(Bi-Leeper)。図の税率t*で(確率的な)プライマリー黒字が最大化され、それより税率が高いと黒字は減る(赤字が増える)。

日本経済がt*の右側にあると、増税で税収が減るというパラドックスが起こる。かつてリフレ派やネトウヨはそう主張し、首相もそれに賛成していたが、消費税率が上がって税収は大きく増えた。したがって日本経済は図の左側にあるが、ここで増税すると財政は再建できるだろうか。

続きは5月8日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

国債に「値がつかない」不気味

今週の月曜、国債に1日半、値がつかないという事件が起こった。これ自体は日銀がオペレーションを間違えた技術的なミスだと思うが、国債市場の流動性が低くなってコントロールできなくなったことを示すとすると、ちょっと不気味だ。

続きはアゴラで。






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