経済

社会保障が日本経済を食いつぶす

nenkinきのうのBS朝日「激論!クロスファイア」でも、朝日新聞の「経済成長は永遠なのか」という記事が話題になった。このタイトルが示す通り、朝日は「成長は永遠ではないのであきらめろ」といいたいらしいが、田原総一朗さんも竹中平蔵さんも私も「まったくナンセンス」ということで意見が一致した。

この記事の致命的な欠陥は、今の財政が成長を前提に設計されているという事実を見落としていることだ。その最たるものが社会保障である。厚労省の「年金100年安心プラン」の想定している名目運用利回りは、4.2%(中央値)。これは実質賃金が毎年2.6%も上がると想定している。2100年までこんな高成長を前提にして、公的年金は運用されているのだ。

朝日新聞的に説教するなら、「成長を前提にした制度設計を見直せ」というべきだった。特に年金も医療も介護も賦課方式になっているので、人口が減って成長しないと加速度的に現役世代の負担が増える。金融資産の65%をもつ60歳以上に現役世代から所得を逆分配するので、若年層は貧困化する。彼らがそういう不安を感じているから、個人消費が増えない。このまま放置すると、社会保障が日本経済を食いつぶしてしまう。

続きは1月9日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

借金を「肩代わり」した革命

185px-Fukuyama-han_hansatu1730アゴラこども版で書いた「ゾンビ企業」の問題は、経済学ではソフトな予算制約(SBC)としておなじみだ。この言葉をつくったコルナイによると、これが社会主義の崩壊した最大の原因だという。SBCが厄介なのは、問題が薄く広く分散するため、被害が見えにくいことだ。今の日本の政府債務もこれに似ている。

江戸時代の各藩の財政も1700年ごろ行き詰まっていたが、そこから幕藩体制が崩壊するまでに150年以上かかった。ただ当時の民衆は、徳川の武士が薩長の武士に「大政奉還」しただけで、大きな変化とは思っていなかった。それが革命になったのは、1871年の廃藩置県によってである。

幕藩体制の中核だった各藩が「自発的に」権力を放棄したのは、世界史にも類をみない革命だった。その最大の原因として多くの歴史家が指摘するのは、各藩の財政が行き詰まっていたことだ。1870年の段階で各藩の「政府債務比率」は藩の収入の約3倍に達しており、権力をもつメリットはなかった。

新政府は各藩の債務を「肩代わり」すると称して、藩札を非常に低い為替レートで円に切り替え、「旧藩債償還法」で債務の大部分を踏み倒した。このため巨額の藩債を保有していた大坂の豪商は破産し、江戸の札差も没落した。同じ手は、これからも使えるかもしれない。

続きは1月9日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

「マイルドなインフレ税」は可能か

今年は安倍政権の経済政策が完全に行き詰まり、「インフレ税」が出てくる可能性がある。もちろん露骨にいうと反発をまねくので、出てくるのは政府と日銀の協調だろう。これ自体は正しい。国債の4割、ETFの6割を日銀が保有する日本経済は、実質的に「国有化」されているので、日銀のやっている財政政策をルール化する必要がある。

日銀の出口戦略にも、政府の協力が必要だ。黒田総裁は「政府が財政規律を守ることが重要だ」というが、これは逆である。インフレ税で政府債務を減らすには、政府は財政規律を守らないというコミットメントが必要だ、というのがSimsの提言である。
What is required is that fiscal policy be seen as aimed at increasing the inflation rate, with monetary and fiscal policy coordinated on this objective. In Japan, this might be achieved by explicitly linking planned future increases in the consumption tax to hitting and maintaining the inflation target.
「消費税の増税とインフレ目標を明示的にリンクする」というのは、たとえば「インフレ率が継続的に2%になるまで増税を延期する」という約束だ。これは財政赤字とインフレ率の関係が線形で、たとえば財政赤字が1割増えるごとにインフレ率が1%上がる、というような関係があることを前提にしているが、Del Negro & Simsのシミュレーションによると、そういう関係は必ずしも成り立たない。それをコントロールすることは可能だろうか?

続きは1月9日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

電通を呪縛する「空気」の正体

電通の石井社長が辞任を表明した。いうまでもなく過労自殺事件が書類送検された責任をとったものだが、過労自殺は労災認定されただけで毎年200人いる。この程度の長時間労働は、マスコミにも霞ヶ関にもあるので、原因は長時間労働だけではない。それを役所が規制しても、日本の会社の「空気」が変わらない限り、長時間労働はなくならない。

続きはアゴラで。

孫正義氏の政治的に正しくないイノベーション

ダウンロードアゴラにも書いたが、日本経済の問題がデフレなどの需要側ではなく、供給側の生産性であることは今や明らかだ。生産性を上げることに反対する人はいないので、これは政治的に正しい。

逆にいうと、できることはすでにやっている。「イノベーション」は役所の大好きな言葉だし、「働き方改革」も安倍政権が掲げたが、結果は出ていない。安全運転で、コンセンサスの得られることしかやらないからだ。では生産性を大きく上げる方法は、まだ残っているだろうか?

残っている。空気を読まないで、役所の「指導」や業界の「慣例」を踏み越えることだ。これは政治的に正しくないが、その最高の成功モデルが孫正義氏である。

続きは12月26日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

石破茂氏の「日本経済の伸びしろ」

center>石破氏(アゴラシンポジウム)

きょうのアゴラシンポジウムでは、自民党の石破茂氏をゲストに迎えて農業の可能性を考えた。その内容は木曜の夜8時からニコ生の「言論アリーナ」で放送するが、彼のキーノートのさわりを紹介しよう(3人も来ていた番記者の参考になるかもしれない)。

続きはアゴラで。

租税国家から債務国家へ

今年はターナーのヘリコプター・マネーやシムズの財政インフレなど、先進国が共通に直面している財政危機に対する奇策が出てきた。このうちターナーの提案は大した話ではないが、シムズの提案はFTPLという正統派の理論にもとづくもので検討に値する。

政府の本源的な収入源は徴税しかないと思われているが、政府は国債で資金を調達できるので、その償還を無期延期できるなら国債も収入源である。その残高はマネタリーベースよりはるかに多いので、統合政府部門を考えると日銀券より国債のほうが重要だ。つまり近代国家は税で収入を得る租税国家から、国債に依存する債務国家に変わったのだ。

これは必ずしも悪いことではない。Cochraneのいうように国債は政府の発行する株式のようなもので、短期的な景気変動に対するバッファとしては税よりすぐれている。株式は返済する必要がないのと同じく、国債も償還を先送りできる。問題は、政府の「時価総額」がどのように算定されるかだ。

続きは12月19日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

リフレ派はなぜ終了したのか

Czdif9-VEAAtZR9文藝春秋1月号の浜田宏一「『アベノミクス』私は考え直した」というリフレ派からの「転向宣言」が話題を呼んでいる。朝日新聞も「アベノミクスよ、どこへ 理論的支柱の『教祖』が変節」とからかっている。リフレ派の教祖が、その終了を認めたわけだ。

これは奇妙な現象にみえるかもしれないが、今年のFRBのジャクソンホール会議で発表されたシムズの論文は、それほど衝撃的だった。これはインフレは貨幣的な現象ではないという事実を証明したからだ。

続きはアゴラで。

「ケインズ時代の終わり」の終わり

小黒一正氏によると日銀の保有するETFは約9兆円で、国内ETF市場の6割を占めるという。すでに国債は日銀が最大の保有者だから、日本の株式市場も債券市場も「国有化」されるわけだ。これは金融政策ではなく(日銀法43条による)財政政策だが、株式市場も債券市場も日銀の下支えで安定した。

つまり日銀の量的緩和は、金融政策としては役に立たないが、財政政策としては有効なのだ。これは1980年代以降、経済学者の信じてきた「短期的な景気循環の調整には金融政策、長期的な成長には生産性の向上が必要で、ケインズ的な財政政策は有害だ」というコンセンサスとは違う。

これはケインズ派とフリードマン派(マネタリスト)の長い論争で後者が勝った結果だが、その原因は財政政策は長期的にはインフレを招くだけでGDPは持続的に上がらないという自然失業率理論だった。しかしこれは貨幣の存在しない経済の話で、広義の(国債を含む)貨幣を考えると成り立たない。現在世代は、将来世代から借金してGDPを持続的に拡大できるからだ。ケインズは、またよみがえるかもしれない。

続きは12月12日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

会社整理は「約束を破る技術」



福島第一原発事故の賠償・廃炉費用が、20兆円を超えることが明らかになった。この番組で私は「18兆円」といったが、その後1週間で2兆円増えた。今の「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」という無責任体制でやっていると、ますますコストがふくらみ、その大部分が国民負担(税金と電気代)になるおそれが強い。

この点で参考になるのは、2010年1月に会社更生法の適用を申請した日本航空だ。当時も「法的整理は無理だ」とか「公的資金の投入はけしからん」という声が多かったが、結果的には経営を再建して2012年9月に再上場し、国からの借金をすべて返した。これは稲盛和夫会長の手腕と思われているが、最大の原因は会社整理で「暗黙の約束」を破ったことだった。

続きは12月5日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。






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