経済

地球温暖化は経済問題である

異常気象と人類の選択 (角川SSC新書)
京都議定書が2002年に国会で承認されたとき、私はそれに反対を表明した数少ない準公務員(経済産業研究所フェロー)だったので、環境保護の活動家から「地球温暖化懐疑派」と批判された。そのころ温暖化を疑うのは「化石燃料をジャブジャブ使いたい財界の手先」で、異常気象で人類が滅びると信じる人が真のエコロジストだった。

ところが3・11のあと、状況が変わった。民主党政権が原発を止めたおかげでCO2排出量が増えたのに、エコロジストは反原発に転じて温暖化のリスクをいわなくなり、原発推進派が温暖化のリスクを強調するようになった。この分類でいうと、懐疑派の私は反原発派ということになるが、実際にはどっちでもない。

本書も指摘するように、ここ100年の長期でみると地球温暖化が起こっていることは明らかだが、それが異常気象を生むのか、その最大の原因は人間の産業活動なのか、という科学的な因果関係は不確実性が大きい。その防止にどれだけコストをかけるべきかもはっきりしない。それは温暖化による災害リスクより防災のコストが低いかという経済問題だからである。

続きは7月16日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

「小さな政府」は日本で可能なのか



夏の合宿に出演していただく浅尾慶一郎さんは2009年にみんなの党が結成されたときの結党メンバーだが、みんなの党は日本では珍しい「小さな政府」をめざす政党だった。浅尾さんも「アメリカの共和党のような政党が日本にも必要だ」というが、最近の安倍政権は経済政策では、金融の超緩和やバラマキ財政など「大きな政府」に傾斜している。

続きはアゴラで。

安倍首相の意図せざる財政革命

夏の合宿でも議論する予定だが、戦後の日本に二大政党ができなかったのは中選挙区制のせいではなく、政策の対立軸がなかったからだ。戦前も中選挙区制だったが、政友会と民政党の二大政党で政権交代が起こった。それは税金を使う政府の党である政友会と、納税者を代表する民政党が対立したからだ。

議会は近世ヨーロッパで、納税者(地主・ブルジョア)と税を使う貴族の対立から生まれた制度だ。アメリカの共和党と民主党も、イギリスの保守党と労働党も、納税者の党と使う党で、その対立は「福祉国家」になると先鋭化した。自民党の支持基盤も高額納税者だったので、1980年代以降は財政再建が最大の課題になり、野党はそれを「新自由主義」と批判した。

ところが安倍首相は、日銀の財政ファイナンスで国債発行の上限を踏み超え、「大きな政府」に舵を切った。それは今までの常識では金利上昇とインフレで財政破綻を招くはずだが、今のところ金利は下がっている。これは財政の歴史の中では革命的な出来事だが、安倍首相が斬新な経済理論でやっているようにはみえない。この革命を可能にしたのは何だろうか。

続きは7月2日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

財政ファイナンスの何が悪いのか

日銀の若田部副総裁が国会で、日銀による長期国債の買い入れについて「物価2%目標の実現に向けた金融政策上の目的で行っている」とし、「政府による財政資金の調達を助けることを目的とする、いわゆる財政ファイナンスではない」と語った。これは彼の過去の言論と矛盾する。

彼は『ネオアベノミクスの論点』で、「デフレからの脱却には、財政ファイナンス的な政策がじつはもっとも効果的なのです」(p.96)と書いた。財政ファイナンスが効果的なら、日銀がそれをやらないのは職務怠慢である。財政ファイナンスで日銀が国債をすべて買えば「無税国家」ができ、納税者もハッピーだ。

続きはアゴラで。

なぜインフレが望ましいのか


これはもっともな疑問だが、教科書的なマクロ経済学(DSGE)には「物価上昇が望ましい」という理論は存在しない。日銀の黒田総裁も「インフレ目標2%がグローバル・スタンダードだ」というだけで、その根拠は説明したことがない。それが望ましいのは、次のような「異常事態」が起こっている場合だ。

 1.名目賃金の下方硬直性が強い
 2.自然利子率がマイナスになっている
 3.コーディネーションの失敗が起こっている

1は初等マクロ経済学の教科書にも書いてあるが、名目賃金が労使交渉で決まる場合、賃下げは困難なので、インフレで実質賃金を下げ、労働生産性の上がった労働者だけ賃上げすることで調整がやりやすくなる。ただ定常的なインフレになると、労働者はそれを織り込んで賃上げを要求するので効果はなくなる。

2の自然利子率というのは経済に中立的な金利で、これがマイナスになっていると、名目金利がゼロ以下にならないときは「意図せざる金融引き締め」になる可能性がある。こういう場合はインフレで実質金利をマイナスにする意味があるが、最近の日銀の計測では、自然利子率は0.3%程度であり、マイナス金利も可能なので、インフレにする意味はない。

3がおそらく黒田総裁の想定しているケースで、「ピーターパンが空を飛べないと思うので飛べない」という均衡と「飛べると思うので飛べる」という複数均衡があるとき、だれもが空を飛べると期待すると飛べる可能性がある。問題は空を飛ぶ能力があるのかどうかである。

続きは6月25日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

ゼロ金利が日本企業をダメにした



昨夜の言論アリーナは、宇佐美さんの新著の「先送り」がテーマだったが、意思決定がなぜ先送りされるかはおもしろい問題だ。先送りはオプション価値をもつ。たとえば値下がりした土地を時価で売ると損が出る場合、ずっと保有していると、そのうち値上がりするかもしれない。先送りすると値上がりしてから売るオプションをもっているので、そういう権利を証券化したのがオプション証券だ。

他方、先送りにはコストも発生する。借金して土地を買ったとすると、先送りによって金利が発生する。つまり金利は先送りの機会費用とも考えることができるので、先送りのオプション価値と金利のどっちが大きいかで意思決定が決まる。

1998年以降の日銀の超低金利政策は、最初は不良債権問題で破綻した企業を救済するためだったが、そのうち企業がゼロ金利を前提にして行動するようになった。常識的には金利がゼロならどんどん借りて投資するだろうと思う(日銀も経済学者もそう思った)が、実際には逆だった。企業の貯蓄が増えたのだ。

続きは6月18日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

東大経済学部の「科学革命」を実現した学問政治

日本の大学の文系学部がダメになった一つの原因は、人事が硬直化して親分子分の関係が強いことだ。特に戦後かなり長い時期、マルクス主義が社会科学の主流を占めたので、左翼的な教授が左翼を後継者にし、憲法学のようにガラパゴス化する傾向が強い。ところがマルクス主義の総本山だった東大経済学部には、今ほとんどマルクス経済学の教授はいない。

東大のマル経は戦前に人民戦線事件で摘発された栄光の歴史があり、近代経済学を「ブルジョア経済学」とバカにしていたが、1960年代から留学生が帰国してアメリカの経済学を輸入し始めた。経済学部でも近経のポストを確保しようという動きが強まったが、マル経から近経への転換は天動説から地動説への転換のような「科学革命」だった。

マル経の教授が近経の助教授を採用するはずがないので、パラダイム転換には「外圧」が必要だった。経済学は理系をまねて業績主義になったが、マル経では国際ジャーナルに載る論文は書けない。こういう国際競争が一つの要因だが、財界からは「マル経の学生は使い物にならない」という批判が強かった。そういうアメリカや財界の外圧を利用して、人事を動かしたのが大石泰彦である。彼は学問的業績は何もなかったが、学問政治の達人だった。

続きは6月11日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

問題は消費税ではなく法人税だ

20180526_FBC517
アメリカ経済が好調だ。失業率は3.8%とここ20年で最低水準になり、株価も回復してきた。大統領選挙のときはトランプを全面否定していたEconomist誌が、トランプ政権の経済政策をかなり高く評価している。

この1年半でトランプの実行した最大の政策は、大幅減税である。これは共和党の伝統的な政策だが、今までは増税(連邦消費税)とワンセットだったので民主党が反対し、ずっと実現しなかった。それをトランプは法人税率を21%に下げる一方、増税はしないという乱暴な方法で実現した。この結果、図のように国内投資が大幅に増えた。

トランプは経済理論なんか知らないので、財政赤字は大幅に増える見通しで、長期的にどういう効果をもたらすかはわからない。金利が上がり、労働分配率は上がっていないが、トランプ政権が安倍政権より結果を出したことは明らかだ。その違いは安倍首相が消費税にこだわったのに対して、トランプが法人税に焦点を絞ったことだ。

続きは6月11日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

「日本だけ成長していない」という迷信

世の中には「日本だけ成長していない」と思い込んでいる人が多いようだ。それを根拠に「もう成長できない」とか「脱成長」という人々がいる一方、「財政出動でもっと成長しろ」という人々もいる。これは本当だろうか。世界経済のネタ帳で調べてみよう(原データはIMF)。



続きはアゴラで。

バカでもできる円安目標

インフレ目標に行き詰まった日銀が、外債を買うという話が出ている。理論的には、黒田総裁が1ドル=200円にペッグすると宣言して米国債を買い、日本国債を売れば、円安・インフレが起こる。これはスヴェンソンが2000年に提案したバカでもできる方法(Foolproof Way)の応用だ。もちろん政治的には不可能だが、どうなるかは容易に予想できる。

 1.円は暴落して200円に近づく
 2.国債の相場も暴落する。
 3.市中銀行が大きな評価損を抱えて金融危機が起こる
 4.財政インフレが起こって物価が急上昇する
 5.日銀が一転して市中銀行の国債を買い、米国債を売る

続きはアゴラで。




title


連絡先(取材・講演など)

記事検索
月別アーカイブ
QRコード
QRコード
Creative Commons