法/政治

安倍首相が自民党を「合理化」した



福島第一原発をめぐる「処理水」の問題で重要なのは、その海洋放出が決まったことではない。それしかないことは、2013年に言論アリーナで田原さんと私が東電の姉川常務から話を聞いたとき、わかっていたことだ。

驚くべきなのは、その自明の意思決定がそれから8年もできなかったことである。これについて原子力規制委員会の田中俊一元委員長が、細野豪志氏との対談で貴重な証言をしている。
田中:当時私が海洋放出を申し上げた時、ある程度はやむを得ないだろうという結論に達していたんですよ。後はもう、問題が起きたら政治が責任を取ります、と言ってもらえばいいんだ、と。官邸まで私、行ったんですよ。

細野:お辞めになる随分前ですよね。

田中:原子力規制委員長に就任して2年目、2014年ごろですね。それで当時の経産大臣が、「じゃあ私がやる」と約束したから、これで片付くと思ったら、やらなかった。そしてその後、「汚染水処理対策委員会」ができて…

田中氏が福島第一原発を視察したのは2014年の12月12日なので、この「経産大臣」は宮沢洋一氏だと思われるが、原子力規制委員会がOKを出し、経産省も海洋放出するつもりだったのに、その上のレベルで立ち消えになった。規制委員会と経産省の決めた答をくつがえせる人は、一人しかいない。続きを読む

アメリカの「外圧」は現代の天皇である

日米首脳会談を前に、いろいろな宿題がバタバタと動き始め、福島第一原発の「処理水」は8年ぶりに海洋放出が決まった。このように外圧がないと決まらない日本の政治の特徴を「対米従属」と批判する人が多いが、アメリカがそれほど決定権をもっているわけではない。その役割は戦前の天皇に似ている。

日本社会の「古層」には、イエ型の分権的な意思決定が根強く残っている。その基盤となった長子相続は制度としてなくなったが、「家長」が一族郎党を指導し、他のイエと利害調整するスタイルは、大企業にも役所にも残っている。これはメンバーの行動についての知識を共有する点でゲーム理論のナッシュ均衡に近い。

ナッシュ均衡が成立するには、相手がどういう場合にどう行動するかを予想して行動し、相手もそれを知っている…という共有知識が必要だ。これは教科書に出てくる2×2ぐらいのゲームならいいが、10×10になると1010=10億通りの戦略空間を全員が完璧に知っている必要がある。

もちろん現実にはそんな共有知識は不可能なので、ナッシュ均衡は数百人以上の集団では維持できない。生物学的にも、人間が顔を覚えられるのは150人ぐらいのダンバー数が限度とされる。これが古代の親族集団(ウジ)に近い。

集団の規模がダンバー数を超えたとき、ウジを超える機能集団(社団)ができてウジを結びつけるが、その形態は地域によって異なる。多くの場合は地縁集団(村落)だが、その紛争が頻発すると、社会全体を統合する君主が必要になる。これはナッシュ均衡とは異なる相関均衡に近い。

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独裁とデモクラシーの制度間競争



昨今のコロナ騒動で、デモクラシーの意味があらためて問われている。医学やテクノロジーの専門家を民主的な政府がコントロールするというのが近代国家の原則だが、今や大衆がネットで知識を得るので、専門知識はブラックボックスではない。

そうすると従来のように政府が専門知識を独占して決定するという前提が崩れ、だれもが意思決定に参加しようとして政府を批判し、収拾がつかなくなる。それに対して中国のような独裁国家は、情報を共産党が独占してロックダウンもできるので、感染症をコントロールする上では効率的である。

このような競争は、100年前にも起こった。第一次大戦は帝政と民主政の制度間競争だったが、後者の圧倒的な勝利に終わり、ドイツ、ロシア、オスマン、オーストリア=ハンガリー帝国が消滅した。総力戦では武器だけではなく、経済力や国民の支持が必要なので、国王のための戦争ではなく、主権者たる国民が祖国のために戦う西欧型デモクラシーは、戦争に勝ち抜く上で最強の政治システムだった。

今は逆の制度間競争が起こっている。中国の独裁制は意思決定の効率が高く、コロナを征圧する上でも有効だった。中国のGDPは2028年に世界一になり、日本は中国の衛星国家になるかもしれない。

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テスラ社外取締役が日米首脳会談に関与する利益相反

4月9日に日米首脳会談が行われる予定だが、その事務局になるのが国連特使の水野弘道氏である。彼はテスラの社外取締役でありながら経産省参与となり、昨年10月に菅首相が打ち出した「2050年カーボンニュートラル」に影響を与えたといわれる。これは利益相反ではないかと週刊新潮に指摘されて経産省参与を辞任し、国連特使に転出した。


彼が菅首相に見せたといわれる「水野メモ」が関係者に出回っているが、そこには「テスラの時価総額は日本の自動車メーカー9社の時価総額の合計を上回っている」とか「日本がカーボンニュートラルを打ち出さないとESG投資に取り残される」などと書かれ、特に電気自動車へのシフトを強調している。

これを受けて経産省は、2030年代なかばまでに乗用車新車販売の「電動車」の比率を100%とする方針を打ち出した。この電動車はハイブリッド車を含むが、ガソリン車は全面禁止になって日本メーカーは苦境に陥り、テスラは日本で売りやすくなる。これはテスラへの利益誘導ではないか。

彼が日米首脳会談の事務局をつとめるのは、さらに大きな問題がある。これは4月22日からアメリカで開かれる「気候変動サミット」の一環なので、日米共同声明でカーボンニュートラルや石炭火力の新設禁止などの方針を打ち出すことが予想される。そういう政府の環境政策にテスラ取締役が関与するのは国益に反する。

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「日本版FCC」は機能するか

アゴラにも書いたように、通信・放送行政を独立行政委員会に分離すべきだという議論は昔からある。民主党政権でもマニフェストで「日本版FCC」がうたわれ、オークションを可能にする電波法改正も行われたが、安倍政権で総務省が元に戻してしまった。

このように総務省が裁量行政にこだわるのは、それによってマスコミを支配できるからだ。今どき放送法4条で「政治的中立」を求めているのも、先進国では日本ぐらいだ。欧米では200~300局も衛星やケーブルでテレビが見られるので、すべてに政治的中立を求めることはできないし、その必要もない。多くのチャンネルの中から、視聴者が選べばいいのだ。

ところが日本では、読売新聞から朝日新聞まで放送法4条の撤廃反対で歩調を合わせる。規制改革推進会議もそんなことをいってないのに、御用文化人まで「第4条で言論の自由を守れ」というのには驚いた。第4条は放送局の言論を規制する(憲法違反の疑いの強い)規定なのに、彼らの話は支離滅裂だ。

政府がテレビ局と(その系列の)新聞社を支配下に置くためには、法的に介入する必要はない。今の裁量行政を守れば、政治部の記者を通じてマスコミを支配できるので、呼びつけなくてもいうことを聞くのだ。この構造には外部からチェックがきかないので、今回の接待事件ぐらいしか突破口がない。

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総務省を解体せよ

東北新社の外資規制をめぐる国会質疑は、常識では考えられないものだった。東北新社は2016年10月の衛星放送事業の申請で、外資比率が20%未満だと申請したが、実際には2017年の有価証券報告書に「外国法人等21.23%」と書かれている。


朝日新聞より

東北新社は翌年8月にこれに気づいて総務省に報告し、子会社にチャンネルを承継して違法状態を解消したというが、総務省は「担当者が東北新社から報告を受けた覚えはない」という。言い分が食い違っているが、東北新社が国会で虚偽の証言をするとは考えられない。

違法状態が解消されても、申請のとき放送法違反だった事実は変わらないので、総務省がそれを認可したのは違法である。今になって総務省は東北新社の放送認可を取り消す方針を決めたが、本来は2017年に取り消すべきだった。これは総務省が過失(違法行為)をとりつくろうため、東北新社の放送法違反をもみ消したのではないか。

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コロナが終わるのはコロナ脳の終わるとき



政府のコロナ分科会の尾身茂会長が国会で「今年の12月ごろまでに全人口の6割から7割がワクチンを接種したとしても、時々はクラスター感染が起こりえるし、時には重症者も出る」と答弁したことが話題になっているが、私はこの状況認識は正しいと思う。

緊急事態宣言の「再延長は適切だ」と述べたことが批判されているが、これは政府の緊急事態宣言再延長を受けての話なので、彼の立場としてはやむをえない。それより大事なのは「コロナを抑え込んで根絶する」というゼロコロナ路線を否定し、一定の感染を容認するウィズコロナ路線を明確にしたことだ。

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電波行政をゆるがす総務省の接待疑惑

週刊文春によると、NTT持株の澤田純社長が谷脇康彦総務審議官をたびたび接待していたようだ。先日辞職した山田真貴子前内閣広報官も接待の対象で、NTTの鵜浦博夫前社長も同席していた。会食の事実はNTTも認め、総務省も事実関係を否定していない。

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金額は3回で58万円と、贈収賄に問われるような額ではないが、注目されるのはそのタイミングである。文春によれば2018年9月4日に谷脇氏と鵜浦氏ら3人で会食し、20日には澤田氏ら3人で会食したという。これは社長が澤田氏から鵜浦氏に交代した直後で、菅官房長官(当時)が「携帯電話の料金4割値下げ」をぶち上げた時期である。

総務省は菅氏の「天領」ともいわれ、その腹心が谷脇氏だった。彼は若いころから将来の事務次官と目されたエリートで、一貫して通信行政の本流を歩んできた。彼とNTTの新旧社長が何を語ったかは知るよしもないが、この時期に総務省とNTTがこれほど密接な関係にあったことは重要な事実を示している。

それはNTTが菅氏の携帯料金引き下げ戦略の尖兵を引き受けたということだ。これが2020年のドコモ完全子会社化と、2021年から始まるドコモの激安サービスahamoに結びつき、通信業界に激変をもたらした。その司令塔が谷脇氏である。

これ以上はデリケートな話題なのでアゴラサロンで(初月無料)。

東京都はなぜ「重症病床数」で嘘をついたのか

緊急事態宣言が6府県で先行解除され、東京都で3月7日から延長するかどうかが焦点になっている。小池都知事は延長したいようだが、東京のきょうの陽性者数は232人。緊急事態の基準である500人を大幅に下回る。問題は病床使用率である。

次の図は2月15日のアゴラの記事で紹介した緊急事態宣言の6条件についてのNHKの表だが、東京都の「重症使用率103%」という数字が目を引く。これは素直に読むと「重症者の数が重症病床を上回っている」という意味だから、それが事実なら収容しきれない重症者があふれるはずだが、東京都の統計では今まで病床使用率が100%を超えたことはない。


緊急事態宣言の6条件(厚労省発表)

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慰安婦は自発的な「契約」だったのか

ハーバード大学のマーク・ラムザイヤーの論文、"Contracting for sex in the Pacific War"が、世界中で物議をかもしている。例によって「慰安婦を売春婦というのはけしからん」という批判が多いが、慰安婦が売春婦だったことは歴史的事実である。それは金銭を支払う商行為であり、日本軍が戦場に連れて行ったという「強制連行」説を裏づける文書はない。

問題は、それがどういう商行為だったかということだ。ラムザイヤーはそれが自発的な契約だったと考え、その合理性をゲーム理論で説明しているが、その根拠があやしい。

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