法/政治

不平等な日米地位協定は改正すべきだ

全国知事会が「米軍基地負担に関する提言」を全会一致で採択した。これは先日亡くなった沖縄県の翁長知事が発案し、研究会で2年かけて検討したものだという。その提言は次のようなものだ。
  1. 日米地位協定を抜本的に見直し、航空法や環境法令などの国内法を原則として米軍にも適用させることや、事件・事故時の自治体職員の迅速かつ円滑な立入の保障などを明記すること
  2. 米軍人等による事件・事故に対し、具体的かつ実効的な防止策を提示し、継続的に取組みを進める
  3. 飛行場周辺における航空機騒音規制措置については、周辺住民の実質的な負担軽減が図られるための運用を行う
  4. 基地の整理・縮小・返還を積極的に促進する
続きはアゴラで。

沖縄の戦後をリセットするとき

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沖縄県の翁長知事が急死したが、辺野古移設の承認を撤回する彼の最後の決定は正常な判断とはいえない。移設はもともと米軍基地の整理・縮小策の一環として日本政府が持ち出し、国も沖縄県も決めた話だ。翁長氏は自民党沖縄県連の幹事長として「県内移設」を推進した中心人物である。

ところがこの話を鳩山首相が「最低でも県外」と約束してぶち壊した。それ元に戻した仲井真知事は、2013年末に辺野古容認と引き替えに8年間で2.4兆円の補助金を獲得し、「有史以来の成果」と喜んだが、翁長氏はこれに反対した。すでに2000億円以上が地元に前払いされ、引き延ばせば毎年、数百億円が地元に落ちるからだ。

翁長氏は2014年の知事選挙では、仲井真氏に対して移設反対を掲げて当選した。戦後の沖縄では、労働組合や革新政党は反基地を叫び、保守陣営がそれを抑える見返りに本土から補助金を取る自作自演の茶番劇が続いてきたが、革新の力が落ちたので、翁長氏が反基地に転向したわけだ。ここに至る彼の屈折した軌跡の背後には、沖縄を利用してきた本土の罪もあるが、これを機に問題をリセットするときではないか。

続きは8月13日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

移民の受け入れには社会保障の改革が必要だ


ドイツの移民暴行事件(YouTubeより)

日本でも、移民問題が議論になってきた。安倍首相は先週の関係閣僚会議で、来年4月から「新在留資格」を認める方向で、制度を整備するよう指示した。従来は専門知識をもつ労働者に限定していた移民を単純労働者にも認め、技能実習のあと5年まで在留を認める方針だ。業種もこれまで検討していた介護・農業・建設・宿泊・造船の5業種から拡大する。

こういう政策には経済界だけでなく、マスコミも「開かれた日本」や「多文化の共生」などといって賛成し、それに反対する人は「閉鎖的だ」と批判されることが多い。しかし日本より先に移民が大量に流入したヨーロッパでは、各国で移民排斥を求める極右政党が台頭し、イギリスはEU離脱を決めた。トランプ大統領を生んだのも移民問題である。日本もそうなる前に、冷静に費用対効果を考える必要がある。

続きはアゴラで。

「危険地帯に住まない」という災害対策



西日本豪雨で最大の被害が出たのは、雨量が最大だった高知県ではなく、広島県と岡山県だった。特に被害の集中した倉敷市の真備町では1/4の地域が浸水したが、そのエリアは倉敷市が浸水区域や避難場所をまとめた「洪水・土砂災害ハザードマップ」で想定されていた。

次の図は日本経済新聞がハザードマップと実際に浸水したエリアを比較したものだが、小田川流域で「100年に1度程度」とされる雨が降った場合に「2階の軒下以上まで浸水する」(5.0メートル以上)と想定していた「想定浸水域」が、被災地とほぼ一致している。このマップは2016年につくられ、倉敷市は全世帯に配った。つまり水害は予想できたのだ。

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だから最善の水害対策は、想定浸水域に住まないことだ。人口の減少している日本でこれから必要な政策は、インフラ整備で「国土強靱化」することより、危険地帯に住まないように制度を変更することだ。土地利用計画を見直し、危険地帯から引っ越す人に補助金を出すなど、コストをかけないでできる対策はたくさんある。

続きは7月23日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

「中世」の生んだデモクラシー

デモクラシーは普遍的な制度ではなく、これからそうなるとも限らない。それは歴史的には、西ヨーロッパだけに生まれた特殊な制度だ。歴史の教科書では、今も世界の歴史は古代→中世→近代という順で発展してきたと教えるが、古代とも近代とも区別される「中世」は、中国にもロシアにもイスラム圏にも存在しない。

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中世と呼ばれる時代があったのは、日本と西ヨーロッパだけだ。その原因は、図のような梅棹忠夫の「生態史観」によると、日本と西ヨーロッパが乾燥地帯から離れていて、戦争のために集権化する必要があまりなかったからだ。つまりもともと一つだった世界が、18世紀以降に「大分岐」でヨーロッパとアジアにわかれたのではなく、もともと別の世界だったのだ。

アジアの中で日本だけが西ヨーロッパと似ているのも、遊牧民の脅威が大きくなかったため、平和な連邦国家ができたからだ。これを「封建制」と呼ぶのはミスリーディングで、中国には分権的なfeudalismはなかった。特殊ヨーロッパ的なデモクラシーが、アジアで日本だけに根づいたのも偶然ではない。

続きは7月16日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

大英帝国はなぜ世界を支配できたのか

ファーガソンの『大英帝国の歴史』を紹介した直後に、BBCの伊藤詩織事件についての番組が放送されたのは、おもしろい偶然だ。この番組には、大英帝国が数百年にわたって世界を支配した秘訣が描かれているからだ。それは白人以外は人間として扱わないという原則である。

黒人を同じ人間として扱ったら、1500万人もアフリカから新大陸に輸送することも、奴隷として労働させることもできない。イギリス人はインドでも工業化を徹底的に妨害し、教育もインフラ建設もしなかった。彼らは心の中ではアジア人を蔑視しているが、それを露骨に表現しない。セックスが好きだが、それもBBCでは扱えない。慰安婦問題とかセクハラとか「人権問題」の建て前で、日本人を攻撃するのだ。

それをアプリオリに悪と決めつけることはできない。19世紀までは民族自決などという原則はなく、戦争は合法であり、強い国が弱い国を支配するのは当たり前だった。原住民を同じ人間として扱うと、植民地支配には膨大なコストがかかり、採算がとれない。その失敗例が日本だった。

続きは7月2日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

潜在意識の中の丸山眞男



7月からのアゴラ読書塾のテーマは「丸山眞男と戦後日本の国体」(申し込み受け付け中)。いま丸山を読む人は少ないが、あなたの心の中には丸山が住んでいる。たとえば「戦争を起こしたのは軍部やファシストで、それをリベラルな知識人が防げなかった」という丸山の「悔恨共同体」は、いまだに朝日新聞を初めとするマスコミの歴史観だ。

しかし戦争を指導したのはファシストではなく、東京帝大や朝日新聞のリベラルだった。帝大法学部教授の宮沢俊義は「大政翼賛会は合憲だ」という論文を発表し、朝日新聞論説委員の笠信太郎は戦時体制の設計図を書いたが、彼らは戦後は丸山とともに全面講和や憲法擁護の論陣を張った。それが戦後政治のアジェンダになり、今も国会では不毛な憲法論争が続いている。夏の合宿では、そういう問題を論じたい。

「1945年8月に革命が起こり、国民が主権者として憲法を制定した」というのも丸山に始まる神話だ。いまだに長谷部恭男氏は「8月革命が憲法学界の通説」だというが、日本国憲法は大日本帝国憲法73条にもとづいて勅令で召集された帝国議会で、2/3以上の多数で可決された。それを書いた実質的な主権者はアメリカであり、革命なんか起こっていない。

丸山が民主主義を「永久革命」と呼んだのは、このように矛盾した戦後民主主義を国民の行動で変えていこうという理念だったが、革命は永遠に続くものではない。戦後民主主義の青春期は60年安保で終わったが、丸山のつくった神話は日本人の潜在意識に定着し、今も人々を呪縛している。

続きは6月25日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

日本は核武装できるのか

米朝首脳会談の直前に、アメリカが「プルトニウム削減」を要求したという報道が出たことは偶然とは思えない。北朝鮮の非核化を進める上でも、日本の核武装を牽制する必要があったのだろう。しかし日本は核武装できるのだろうか。

もちろん核兵器の保有は、日米原子力協定のみならず核拡散防止条約(NPT)にも違反するが、これは条約を離脱すればよい。そういう事態は常識的には考えられないが、今の日米同盟の枠組が崩れた場合には、そういうオプションも必要になる可能性はあるので、頭の体操はしておいても無駄ではない。

続きはアゴラで。

みんなが拒否権をもつ「ホールドアップ社会」



まもなく開票される新潟県知事選挙は、野党の推薦する池田千賀子候補がやや優勢と伝えられる。彼女が当選すると、米山前知事のつくった「検証委員会」で検討が続けられ、あと4年は再稼動が延期されるおそれが強い。知事には原発の再稼動を許可する権限はないが、東電は知事の意向には従うと表明している。

このように知事の権限が強い現象は他の立地県にもみられるが、その根本原因は日本社会ではみんなが拒否権をもっていることだ。こういう交渉問題は、経済学ではホールドアップ問題として知られている。たとえば自動車メーカーと下請けに資本関係がないとき、契約を結んでも、土壇場になって親会社が約束を破って「景気が悪くなったので納入価格を下げてくれ」と再交渉したら、下請けは抵抗できない。

ここで重要なのは事前にどんな詳細な契約を結んでもホールドアップできるということだ。「景気が悪くなっても納入価格は変更しない」と契約に書いても、親会社は「売り上げが落ちた」というかもしれない。「売り上げは無関係」と書いても、「品質が悪い」と文句をつけることができる…というように論理的には無限にホールドアップの理由がある。新潟県知事も同じだ。

続きは6月11日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

国民民主党が生き残るたった一つの方法

希望の党と民進党が合併してできた国民民主党は、世論調査で政党支持率が1%と、共産党の3%より低い。去年、希望の党が結成されたときは「保守」のイメージで新鮮さがあったのに、その後は「解釈改憲を許さない」という護憲政党に戻ってしまった。これでは立憲民主党と変わらない。連合がテコ入れをはかっているが、このままでは次の総選挙で消滅するだろう。

続きはアゴラで。






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