法/政治

ガラパゴス憲法学者は絶滅危惧種

朝日新聞が賞賛している「立憲デモクラシーの会」の「安倍晋三首相による改憲メッセージに関する見解」を読んでみたが、これほど論理が破綻した文章は珍しい。
自衛隊はすでに国民に広く受け入れられた存在で、それを憲法に明記すること自体に意味はない。不必要な改正である。自衛隊が違憲だと主張する憲法学者を黙らせることが目的だとすると、自分の腹の虫をおさめるための改憲であって、憲法の私物化に他ならない。
まずわからないのは「自衛隊はすでに国民に広く受け入れられた存在」だから憲法に明記するなという論理だ。国民に広く受け入れられたのなら、明記してもいいだろう。誰もが認めている自衛隊が、憲法違反であるかのような誤解を払拭する意味はある。「憲法学者を黙らせることが目的」なんて誰もいっていないので「腹の虫をおさめる」以下は誤りである。

続きはアゴラで。

「天皇」は輸入品である

産経新聞におもしろい記事が出ている。安本寿久という編集委員は講演でこう語ったという。
天皇がいることで日本人がまとまれるという価値観をつくったのは、日本最古の書物「古事記」だった。正成がこれだけ天皇に忠節を尽くしたのも、この国の形が一番だと思ったからだろう。古事記の価値観によって、「大化の改新」も「建武の新政」も「明治維新」も、そして昭和20年のときも、中心には天皇がいた。日本人にとって「公」とは、天皇という存在ではないか、とも考えられる。
ここには古事記から昭和20年まで一貫して、日本は「万世一系の天皇」が支配してきたというイデオロギーがある。これは今でも自民党の右派に信じられているが、明白な誤りである。明治時代以降の天皇は(古代とは名前以外に共通点のない)ヨーロッパからの輸入品なのだ。

そもそも江戸時代まで「天皇」という言葉は使われていない。19世紀初めの光格天皇まで、死後も「**天皇」という謚はなかったのだ。一般庶民はその存在さえ知らなかった。それを長州藩が「幕府」を倒すためのシンボリックな記号として利用した。

続きは5月22日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

JKビジネスが「人身売買」だという米国務省



ほとんどの日本人は知らないしマスコミも相手にしていないが、一部のアメリカ人が真に受けて「日本は人身売買国家だ」と私にからんでくるので、事実をチェックしておこう。

2016年の米国務省の人身取引報告書は、日本を「人身取引撲滅のための最低基準を十分に満たしていない」国と評価し、ナイジェリアやバングラデシュなどと同じ「第2段階」とした。このレベルにランクされているのはG7諸国では日本だけで、「第3段階」に落ちると開発援助を制限される。

続きはアゴラで。

既得権としての「平和憲法」の終わり

JBpressにも書いたように、安倍首相の憲法改正案は実質的には安保法制による解釈改憲の追認で、ほとんど「公明党案」ともいうべきものだ。これは従来の自民党案とはまったく違うので党内でも当惑が大きいようだが、よく考えられた案だと思う。

続きはアゴラで。

憲法改正で何が変わるのか



このごろ朝日新聞の「一強」キャンペーンを初め、自民党が右傾化しているという議論があるが、きょう出された首相メッセージは、むしろ公明党や維新に接近して「左傾化」した印象を受ける。

続きはアゴラで。

石油の禁輸に「逆切れ」した日本軍



エネルギー問題は、安全保障と表裏一体である。アゴラで岩村昇さんが書いているが、きのうの「言論アリーナ」で山本隆三さんも「中国が北朝鮮への石油供給を止めるのは危険だ」といっていた。

日米韓は中国に北朝鮮への圧力を強めるよう求めたが、これは両刃の剣である。北朝鮮軍は石油を全面的に中国に頼っているので、それがなくなると戦争はできない。だから圧力をかけるということを聞くだろう――と考えるのは常識ある人だ。金正恩にはそんな常識はないので、逆に「戦争のできるうちにやろう」となる可能性もある。

1941年8月、アメリカは南部仏印進駐への制裁として、日本への石油輸出を禁止した。日本は石油の8割をアメリカから輸入していたので、これでアメリカの撤兵要求に従うと考えたのだ。ところが日本軍は「逆切れ」して、真珠湾を攻撃した。それは「無謀な開戦」といわれるが、主観的には目算がなかったわけではない。

続きは5月1日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

「戦争のできない国」は危険である

日本を「戦争のできる国」にするなという話がよくあるが、これをゲーム理論で考えてみよう。戦争はチキンゲームと考えることが多いが、同時に両国から起こる戦争はないので、これを次のようなフローチャートで表現する(図の数字は各国の利益)。このように時間的な順序を織り込んだゲームの表現を展開形ゲームと呼ぶ。

chicken

北朝鮮が攻撃してきたとき、日本が反撃すると全面戦争になって両方の利益が-10になるが、日本が譲歩すると休戦になって北の利益が1になるとする。北朝鮮も日本も何もしない状態(0,0)がベストだが、日本が攻撃すると北朝鮮は損する(-1, 1)。この問題を戦略的に考えるというのは、相手の立場になって考えることだ。

金正恩からみると、日本が憲法を守って「戦争のできない国」になると、彼がどんな行動をとっても日本はつねに譲歩する(図の青線)ので、利益は1(北が攻撃して日本が譲歩)か0(北が譲歩して日本も譲歩)になる。攻撃の利益のほうが大きいので、日本が手の内を明かすと、彼の攻撃するインセンティブを強めてしまうのだ。

続きは4月24日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

安倍「一強」は民主党の掲げた「政治主導」の実現

二つの政権交代: 政策は変わったのか
「一強」を批判する朝日の政治部は、安倍首相が特異なファシストだといいたいのだろうが、それはお門違いだ。本書も指摘するように、2000年代に日本で政治の集権化が起こったことは政治学の常識である。具体的には
  • 首相および首相周辺の政治家・官僚の役割が強まった
  • 各官庁の内閣からの独立性が弱まった
  • 政府外の与党議員や利益集団の政治力が低下した
これは多くの分野で共通に観察される傾向で、最初に実現したのが小泉政権だったが、その後は揺り戻しがあった。それを空想的な形で実現しようとしたのが、民主党政権の掲げた政治主導だった。これは民主党にそれを実現する組織がなかったので散々な失敗に終わったが、政治主導が消えたわけではない。

本書は外交・安全保障だけでなく、農業、電力、税制など多くの分野で政治主導が強まったと分析している。その原因は1990年代の選挙制度改革と「橋本行革」以来の内閣の権限強化、そして最近の内閣人事局による政治任用の拡大だ。この点で民主党政権と安倍政権は連続している。つまり「一強」は、民主党の夢見た「政治主導」の実現なのだ。

続きは4月24日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

「一強」の何が悪いのか

「強すぎる自民党」の病理 老人支配と日本型ポピュリズム (PHP新書 1058)
朝日新聞の「パノプティコン」シリーズは、ますます意味不明になってきた。けさの記事では経産省が執務室に施錠したことを「息苦しい」と批判しているが、この記者はアメリカ連邦政府に行ってみればいい。各階ごとに空港のようなボディチェックがあり、記者が政府内をうろつくことなんかできない。

この連載は持って回った表現で、安倍首相の「一強」状態をファシズムとダブらせ、「安倍はヒトラーだ」とほのめかしている。シリーズの名づけ親である、元革マルの石田英敬氏は「安倍政権はファシズムだ」と攻撃している。

続きはアゴラで。

朝日新聞の笑える「パノプティコン」

C9p-cJXUIAAU2mD朝日新聞が「(1強)第2部・パノプティコンの住人」という連載を1面で始めた。何かの冗談かと思ったが、どうやら本気で安倍政権が「パノプティコン」だといいたいらしい。この記事では、こう解説している。
もともとは監視者がいてもいなくても囚人が監視を意識する監獄施設のこと。転じて20世紀にフランスの哲学者フーコーが、権力による社会の管理・統制システムの概念として用いた。
これは三重に誤っている。第一に、パノプティコンは国家のメタファーだから、この中央で監視しているのは「1強」ではなく、国家権力である。囚人が逃げようとしたら拘束されるので、彼らは多くの看守に暴力で支配されているのであって、権力を「忖度」しているのではない。

第二に、パノプティコンは実際には建設されていない。これはフーコーが『監獄の誕生』で使った概念だが、ベンサムが描いた設計図にすぎない。このタイトルを思いついた記者はフーコーの本の帯ぐらいしか読んでいないのだろうが、デスクもチェックできなかったのか。

第三に本質的な問題は、パノプティコンはフーコーがのちに撤回したことだ。これは晩年の講義では「統治性」や「生政治」という概念に置き換えられ、その後も転々と名前が変わり、結局は著書になっていない。そこにはフーコーのアポリアがあった。続きを読む






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