科学/文化

「8割おじさん」は本当は「1%おじさん」だった

アメリカの新型コロナ感染者は累計250万人を超え、毎日3万6000人以上増えている。東京では感染者が毎日50人になったと騒いでいるが、これは桁違いだ。陽性が増えた最大の原因はPCR検査を増やしたことで、検査を増やせば感染者はいくらでも増える。国際比較できる数字は死者である。


各国の累計死者数(FT.com)

累計でみると日本の死者は971人で、アメリカ(11万8000人)の1/120。線形目盛でみると、図のように日本は横軸に埋もれて見えない。日本のコロナ騒動で盲点になっていたのは、このように感染者の絶対数が圧倒的に少ないことだ。

続きはアゴラで。

理論は事実で変えられない

コロナ騒動は、政府がマスコミにあおられてゼロリスクを求めた点では福島第一原発事故と似ているが、違う点も多い。最大の違いは、専門家会議を初めとする専門家が当てにならなかったことだ。

福島のときは原子力の専門家の意見は一致しており、あの程度の事故で死傷者は出ないとみていたが、専門知識のない活動家が民主党政権を乗っ取って大混乱になった。それに対して今回は感染症の専門家の中でも、大したことないという意見と感染爆発が起こるという意見が対立した。

福島で騒いだ「放射脳」はトンデモの類で原子力の専門家はほとんどいなかったが、今回騒いだ「コロナ脳」には専門家もいた。特に医療クラスタ(医クラ)が、こんな感じで私にもからんできた。

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この予想に従えば、5月28日に日本のコロナ死者は3万5000人になっていたはずだが、6月24日現在でも967人。このようにわかりやすい無知蒙昧は大した問題ではない。よくあるのは「何もしなかったら42万人死ぬ」という予測は何かした場合のデータで否定できないという話だ。

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これは論理的には正しい。「何も介入しなかったら42万人死ぬ」という命題は仮定が偽なので、どんな結論も真になる。たとえば「何も介入しなかったら1億人死ぬ」という命題も真である。この対偶は「1億人死ななかった場合は何か介入したはずだ」という無意味な命題である。

このように素人だけでなく専門家にとっても、理論は事実で変えられない。実証主義というのは、人々が思っているほど自明の原理ではないのだ。

続きは6月29日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)。

人間は文化的遺伝子で進化する

most_adaptable_to_change_poster-p228339548256655541tdcp_400自民党のマンガをめぐって専門家もまじえた論争が続いているので、このブログでも書いたことをおさらいしておく。引用された言葉はダーウィンの著書にはないが、これは誤用ではない。『種の起源』には次のような言葉がある。
すべての生物は自然界の経済秩序の中での居場所を求めて闘争しているという言い方ができるわけだが、競争相手との関係でそれ相応の変化や向上ができない種は、たちまち滅んでしまうだろう。(第4章)
ここでダーウィンが述べているのは「種」の変化だが、これは厳密にいうとおかしい。自然淘汰の単位は個体であって種ではないからだ。しかし種を「集団」と解釈すると、これは最近の新しい集団淘汰の理論と共通点がある。

こういう理論を人間の社会に適用することも誤用ではない。これを「獲得形質が遺伝する」というルイセンコ説と混同して批判するのは誤解だ。獲得形質が遺伝しなくても、人間は文化的遺伝子で進化するというのが最近の生物学の結論である。

生物の突然変異はランダムで目的がないが、人間の集団には目的がある。これは蟻のような社会性昆虫のコロニーと同じだ。蟻はその目的を知らないが、人間はそれを言葉で共有し、文化的遺伝子(ミーム)として蓄積して急速に進化できる。それが人類が数百年で地球の生態系を大きく変えた原因である。

こういう社会ダーウィニズムを「人種差別だ」と排除するのも誤りである。すべての集団はダーウィン的な競争で生き残ってきた。その最たるものが戦争である。いま先進国の多くがデモクラシーを採用しているのは、それが国民を動員する総力戦にもっとも強い政治体制だからである。この点でダーウィニズムを国家に適用する自民党のマンガは間違っていない。

続きは6月29日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)。

「コロナパニック」の被害はコロナより大きかった

BBCが世界各国の超過死亡(平年を上回る死者)を国際比較している。イギリスでは(3ヶ月で)新型コロナの死者が約5.2万人に対して、その他の超過死亡数が約1.3万人。圧倒的にコロナの被害が大きかったことがわかる。



ところが日本のコロナ死者(3月)は51人で、コロナ以外の超過死亡が301人。まだ暫定的な数字だが、日本の超過死亡がヨーロッパよりはるかに少なかったことは国際比較できる公式統計でも明らかである。



さらに注目されるのは、日本のコロナ死者数よりその他の超過死亡数のほうがはるかに多いことだ。逆にヨーロッパでは、イタリアは(2ヶ月で)コロナが2.7万人でその他が1.6万人、スペインでは(2.5ヶ月で)それぞれ2.8万人と1.5万人と、コロナの死者が超過死亡の大部分を占めている。

続きはアゴラで。

新型コロナは今なぜ収束したのか

日本では新型コロナは「流行」の域に達しないで終わった。厚労省の抗体検査では、陽性率は東京で0.1%、大阪で0.17%。擬陽性率は0.2%で、検出限界以下である。これについて朝日新聞は「次の波が来たときに誰もが感染しうる。安心してはいけない」と不安をあおっているが、誰もが感染しうるなら、なぜ今コロナは収束したのか。



これは自明のようだが、標準的な疫学理論(SIRモデル)では、上の図の西浦モデルのように感染は指数関数で感染爆発し、人口の80%(1億人)が感染するまで止まらないはずだ。ところが実際の感染者数は1.7万人。予想の1/6000で収束した。その原因は、次の三つが考えられる。
  1. 自粛や緊急事態宣言などの介入の効果があった
  2. 感染しても重症化しにくい軽症の風邪だった
  3. 日本人が抗体以外の原因で感染しにくい
専門家会議はもっぱら1を強調しているが、これだけではこの大きな差は説明できない。ロックダウンしなかった東アジアの感染率が日本より低い原因もわからない。2では日本とヨーロッパの抗体陽性率(10~20%)の大きな差を説明できない。

消去法で考えると、日本人は(自然免疫や免疫交差反応などで)感染可能性(susceptibility)が低いと思われる。そして最初は感染しやすい(免疫力の弱い)高齢者に感染し、次第に感染しにくい人に感染して衰えたために自然に減衰したわけだ。すべての人が同じように感染するというSIRモデルには、実証的根拠がない。

こういう傾向は経験的に知られており、その変化はゴンペルツ曲線として描くことができる。これは生物の個体数やソフトウェアのバグの数の予想などに使われている。早川英輝氏がブログで日本の新規感染者数(PCR Positive)と武漢ウイルス(Wuhan strain)と欧州ウイルス(European strain)のゴンペルツ曲線をフィッティングしている。

20200616221440続きを読む

ロックダウンで「コロナ以外の感染症」が激減した

ロックダウンには、新型コロナの被害を減らす効果があったのだろうか。科学者の評価はわかれているが、おもしろいのは、イギリスではコロナ以外の呼吸器疾患がロックダウンで減ったというデータだ。


図のように上気道(upper respiratory tract)感染症(黄)や下気道感染症(赤)の感染率が、3月14日以降のロックダウンで大きく減ったが、コロナの感染率(緑)は増えた(インフル(青)はやや増えた)。この最大の原因は、外出禁止でコロナ以外の患者が検査を受けられなくなったためと推定されている。

日本でも同じ傾向がみられる。呼吸器疾患だけでなく、感染性胃腸炎の患者まで今年の第3週から激減し、第16週(3月22日~)にはピークの1割程度になった。ボトムを記録したのは、皮肉なことに緊急事態宣言の出た4月7日で、その後やや増えている。このデータは「接触削減で感染者が減った」とも解釈できるが、コロナだけ増えたのはなぜだろうか?

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東京の感染性胃腸炎の新規感染者数の推移(東京都感染症情報センター)

その最大の原因は、やはり検査がコロナに集中したためだろう。「コロナかそうでないか」の検査が優先され、それ以外の感染症はカウントされなくなった。病院が「三密」とされたため、人々が恐れて外来に行かなくなった。医療スタッフがコロナに動員されたので、ほとんどの手術が延期された。

要するに医療は崩壊したのではなく、コロナだけに片寄ったのだ。これは世界的にみられる傾向だが、これで救われた命と失われた命のどっちが大きいかはまだわからない。

続きは6月15日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)。

日本人はなぜ新型コロナにかかりにくいのか

ソフトバンクグループの行なった新型コロナの抗体検査で、0.43%が陽性だった。これはランダムサンプルではなく、精度にも問題があるが、今までの国内の抗体検査でも1%以下。ヨーロッパの抗体陽性率10〜20%よりはるかに低い。

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日本で新規感染者が増えたのは3月末までで、これは輸入感染とその2次感染だと思われる。入国拒否すると新規感染者は減り、その後もほぼ一貫してRt<1だから、国内では新型コロナウイルスは増殖しない、つまりRo<1と推定される。

日本もヨーロッパ並みのRo=2.5で、人口の60%が感染すると想定した西浦モデルは明らかに誤りで、集団免疫は実現していない。宮坂昌之氏も「60%感染するという西浦さんの計算は間違いです」と指摘している。同じウイルスで、国によってこれほどRoが違うのは珍しい。



日本人がコロナにかかりにくいのはなぜだろうか。その原因は広い意味の自然免疫だというのが宮坂氏の推定である。これはすべての人が遺伝的にもっている免疫機能で、後天的に獲得できないと思われてきたが、最近その常識が変わってきたという。

結核にかかった人が他の感染症にもかかりにくくなるなどの症例が多く見つかり、訓練免疫(trained immunity)と呼ばれるようになった。これは抗体(免疫グロブリン)のように特定の抗原を排除する機能はないが、非特異的に多くの抗原に効果があるという。

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新型コロナに感染しにくい日本人は「民度」が高いのか

麻生副総理のコロナについての答弁が話題になっている。

数字は不正確で、フランスは100万人あたり443人、アメリカは327人、イギリスは580人だが、日本は7人。EUと北米のコロナ死亡率が日本と2桁違うことは間違いない。その違いの原因が「民度」だというのは麻生氏独特の皮肉だが、いいポイントを突いている。

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誇大な「第2波」シミュレーション

新型コロナが一段落したと思ったら、西浦博氏が今度は「第2波が危ない」というシミュレーションを発表し、そのモデルがウェブサイトで公開されている。今度は確率過程を使っているが、彼はこう説明する。

ここでは、COVID-19のR(実効再生産数)は「1.6」という、現実的な値を使います。被害想定で使っている「R=2.5」とは分けて考えてください。これは全くプレーンな状態、“丸腰”で入国者を受け入れる場合です。これに対して、「1.6」、時に「1.7」という数字を使うこともありますが、これらは日本でいろいろな対策を実施し、人々が行動変容している時の数値としましょう。

これまでの2.5という設定は「現実的な値」ではなかったと反省しているが、計算結果は次の表のようになっている。

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感染率0.1%とすると、90日間で9万人が入国するとき感染者は90人だが、検疫なしだと大規模流行が起こる確率は99.9%。停留とPCR検査をすると35.3%になる。72万人が入国する場合は感染者が720人なので、PCR検査しても96.9%の確率で大規模流行が起こる。

これは日本の輸入感染の実績とはまったく違う。押谷仁氏の推定では、2月から3月にかけて「入国した感染者の実数は1000人~2000人くらい」だったが、4月に入って感染は収束した。このシミュレーションの最悪の場合(感染者720人)よりはるかに多い感染者が入っても、感染爆発は起こらなかったのだ。

この食い違いの原因は明らかである。またしても西浦氏のRt=1.6という設定が過大なのだ。このモデルを使っても、4月に感染がピークアウトした原因は、大澤省次氏の推定するように日本国内ではRt<1だったからと考えるしかない。

続きは6月8日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)。

なぜ「42万人死ぬ」はずが900人になったのか

新型コロナが一段落し、緊急事態宣言の検証が始まっている。そのコアとなった「8割削減」を提唱した西浦博氏は、ニューズウィーク日本版で、基本再生産数Ro=2.5という想定は「今でも高すぎるとは思っていない」という。

「何もしないと42万人死ぬ」というシミュレーションがはずれた原因について、彼は「死亡者の被害想定は、あくまで「流行対策を何もしない」という仮定の下で計算した丸腰の数字」であり、日本の現実にそのまま適用できないという。

続きはアゴラで。








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