科学/文化

速い思考と遅い意思決定

きのう紹介したカーネマンの理論は、いろいろ応用できる。今までアドホックに論じられてきた日本人論も、実験で検証できるかもしれない。私の経験した範囲でいうと、テレビ番組の作り方には日本人の特異性がよく現れている。

海外のドキュメンタリーを見ると、テンポが速くコメントがびっしり入っていて、情報量が多い。これに対して日本のドキュメンタリーはカットが長く、まったり間を置いてコメントが入る。これは番組の作り方がまったく違うからだ。

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開国と攘夷

TPPをめぐる政治家の動きは、尊王攘夷で騒いだ幕末を思い起こさせる。丸山眞男の有名な論文「開国」(『忠誠と反逆』所収)は、この前後の日本の動きを精密に読み解いている。当初は開国を決めた徳川幕府に対する反乱だった尊王攘夷が、いつの間にか開国に変わった経緯については、いろいろな説があるが、丸山が重視するのは、身分制度に対する反抗そのものが開国のエネルギーを内包していたということだ。

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個人ブランドの時代

きのうのIT復興円卓会議では、今回の震災報道でメディアの果たした役割が話題になった。「マスコミ対ソーシャルメディア」とか「記者クラブ対フリージャーナリスト」などという図式は無意味で、誰が信用できるかという個人ブランドの時代になった、というのが私の意見だったが、佐々木俊尚氏などもおおむね同じ意見だった。

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地球温暖化と宇宙線

気候変動とエネルギー問題 - CO2温暖化論争を超えて (中公新書)エネルギー問題を考える時ややこしいのは、地球温暖化という別の次元の問題がからむことだ。再生可能エネルギーが「長期の解」だという人は、これを考えているのだと思うが、彼らの論拠とするIPCCの報告書は科学的に疑問が多い。

以前の記事でも紹介したように、IPCCの売り物だった「ホッケースティック」は捏造であることが明らかになり、その中立性が疑われている。ただ、これまではその問題点を批判する研究が多く、CO2に代わる説明がなかった。本書は、その候補を紹介している。それは宇宙線である。

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放射能バブル

今の日本の状況は、10年前のアメリカに似ている。9・11の直後は、リベラル派のNYタイムズもブッシュ政権の戦争を熱烈に支持し、シリコンバレーで設立されるベンチャーはセキュリティがらみばかりになり、「セキュリティ・バブル」と呼ばれた。日本でも科研費の最大の重点がセキュリティになり、私も某大学の「セキュリティの何とか」と題したプロジェクトに参加して論文を書いたが、中身はセキュリティとは何の関係もなかった。

ここから類推すると、今の放射能バブルはこれから役所や大学に広がり、再生可能エネルギーの研究にまた公費が投入されるようになるだろう。しかしセキュリティ・バブルのときシュナイアーガードナーなどリスク管理のプロが指摘したように、テロの脅威などというものは普通の人にとって意味のない問題である。同様に、あなたが原発によって命を落とすリスクもゼロに等しい。

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非現実的な夢想家

20110611k0000m040021000p_size5村上春樹氏のカタルーニャ国際賞の受賞スピーチが話題になっている。エルサレム賞のときは、私が好意的に紹介したら大反響があったが、今回のスピーチは感心しない。

特に驚いたのは、次の一節だ:
広島にある原爆死没者慰霊碑にはこのような言葉が刻まれています。

「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませんから」

素晴らしい言葉です。我々は被害者であると同時に、加害者でもある。そこにはそういう意味がこめられています。核という圧倒的な力の前では、我々は誰しも被害者であり、また加害者でもあるのです。
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原発についてのまとめ

このごろ同じような原稿の注文とインタビューが続いて(ほとんどは断った)、いい加減うんざりしてきたので、ここで今まで私の述べてきたことを日付順にまとめて、この話題には一区切りつけたい。週刊誌のみなさんは、これを私のコメントとして引用していただいて結構です(週刊誌の取材には原則として応じない)。続きを読む

原発の安全性と経済性についての数字

福島第一原発事故についての政府の発表が混乱しているため、自称ジャーナリストはこれに乗じて「原発は危険で不経済と刷り込もう」とプロパガンダを繰り返している。生活に困っている彼らが不安をあおってアクセスを集めるのは商売としては当然だが、彼らは数字を示したことがない。本当に原発は危険で不経済なのだろうか。

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「近代の超克」と京都学派

「近代の超克」と京都学派 近代性・帝国・普遍性首相のいう「平成の開国」を本当に実行するには、明治維新以来の近代化を見直す必要がある。そういう思想的な試みは、何度も繰り返されてきた。「近代の超克」をめぐる座談会はその一つだが、こうした「日本主義」は結果的には「大東亜共栄圏」のような夜郎自大になって戦争に利用された。

ただ本書も示すように、よくも悪くもこの座談会の問題意識は、非西欧圏の「オリエンタリズム」に対する両義的な態度を典型的に示している。東北大学で教えたカール・レーヴィットは「日本の学生は2階建ての家に住んでいる。1階では日本人らしく考え、2階ではプラトンからハイデガーに至るまでの西洋の学識を学んでいる。彼らは1階と2階をどうやって自在に行き来できるのだろうか」と言ったそうだが、これは現代の日本人にも当てはまる。

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八百長は日本の伝統

相撲の八百長が問題になっているが、「相撲界の存亡の危機」などという相撲協会のコメントに「何を今さら白々しい」と多くの人は思っているだろう。昔から週刊誌では何度も報じられたが、調査もしないで「証拠不十分」で逃げてきた。今度は警察が携帯のメールという証拠を握ったから、白を切れなくなっただけだ。

賭博罪になる野球賭博と違って、八百長は違法行為でもないし、当の関取が悪いとも思っていない。八百長や談合は、当事者にとってはwin-winゲームだからである。人間関係でも商売でも、こうした「貸し借り」でお互いに困ったとき、助けあうのが日本の美しい伝統だ。電波利権をめぐる総務省と通信業者の八百長も、構図は同じである。損するのは、談合の輪の外にいる納税者だ。

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