科学/文化

教育勅語は危険思想か


森友学園をめぐる下らない事件には興味がないが、おもしろいのは子供が毎日、教育勅語を朗読させられているという話だ。マスコミは勅語が日の丸や君が代より凶悪な危険思想だと思っているようだが、それを読んだことはないだろう。上の写真がその原文だが、これを素読して意味のわかる人もほとんどいないだろう。ウィキペディアの現代語訳は、こんな感じだ:
まず皇祖皇宗、つまり皇室の祖先が、日本の国家と日本国民の道徳を確立したと語り起こし、忠孝な民が団結してその道徳を実行してきたことが「国体の精華」であり、教育の起源なのであると規定する。続いて、父母への孝行や夫婦の調和、兄弟愛などの友愛、学問の大切さ、遵法精神、一朝事ある時には進んで国と天皇家を守るべきことなど、守るべき12の徳目(道徳)が列挙され、これを行うのが天皇の忠臣であり、国民の先祖の伝統であると述べる。これらの徳目を歴代天皇の遺した教えと位置づけ、国民とともに天皇自らこれを銘記して、ともに守りたいと誓って締めくくる。
ここには「一億火の玉だ」とか「天皇のために死ね」とかいうアジテーションはなく、最初の「皇祖皇宗」のくだりで皇国史観を語っている以外は、平凡な徳目を並べただけだ。しかしそれが強烈な影響力をもったことも事実である。不思議なのは、こんな短い説教があれほどの影響力をもったのはなぜかということだ。

続きは3月6日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

大学教育は無駄だが職業教育は重要だ

与野党が一致して始めた教育ポピュリズムに対する私の批判は予想通り不評だが、論理的な反論は一つもなく、「日本がこれから知識社会で生きて行くには教育投資が必要だ」という類の建て前論が多い。

もちろん教育は重要だが、それは大学教育とは限らない。Economist誌も指摘するように、ここ30年でエリート大学卒の賃金が30%以上も上がる一方で、カレッジ(無名私大)卒の賃金は下がっている。これは教育の効果(人的資本)より学歴の効果(シグナリング)のほうが大きくなってきたことを示す。

続きはアゴラで。

重力はなぜ距離の2乗に反比例するのか

昔、廣松渉のゼミで、彼が「重力はなぜ距離の2乗に反比例するのか?」という問題を出したことがある。科学哲学はみんな理系だから、ある院生が「3次元空間だからです」と即答した。すると廣松が「この教室で実測して1.99乗だったらどうするの?」と聞くと、院生は言葉に詰まってしまった。廣松は「それはガリレオがいったように、世界は数学の言葉で書かれてるからだよ」と笑った。

物理学では、法則に反する事実が見つかったら法則は「反証」される。重力がどこで計測しても1.99乗にも2.01乗にもならないのは、偶然に過ぎない。これはヒュームの問題と呼ばれる重要なパラドックスで、ポストモダン界隈では今ごろそれを解決したと称する笑い話が出ているが、これは誤りである。その答は存在しない、というのが正しい答なのだ。

続きは2月13日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

日本にはなぜポピュリズムが生まれないのか

NYタイムズに船橋洋一氏が、「なぜ日本にポピュリズムが生まれないのか」という記事を書いている。テーマはおもしろいが中身は的外れで、朝日新聞的なリベラルがポピュリズムを理解できないことを示している。

トランプのようなカリスマが日本に生まれないのは、社会がそういうふうに周到に仕組まれているからだ。歴史上でカリスマ的な権力者といえるのは後醍醐天皇と織田信長ぐらいで、どっちも挫折した。1930年代にファシズムが流行したときも、日本では近衛文麿のような「みこし」しか出てこなかった。そして安倍首相は、近衛型リーダーなのだ。

続きは2月13日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

キリシタンは神仏習合した「日本教」



遠藤周作の『沈黙』を原作とする映画が、日本でも公開された。原作は日本的なので英米で映画になるとは思えなかったが、スコセッシ監督は「28年前に原作を読んだときから映画化したかった」という。私は映画を見ていない(見る気もない)ので、これは原作の感想である。

小説も映画もフィクションだから、その「正しさ」を論じてもしかたないが、原作はキリスト教というより、山本七平のいう「日本教」の典型である。タイトルの意味は「主よ、あなたはなぜ黙ったままなのですか」という訴えだが、キリスト教の神は超越的存在なので、信徒に語りかけてくることはありえない。ところが原作では、神は現世的な「弱い者の味方」として描かれる。

ただスコセッシはイタリア系だから、日本のキリシタンと似ている部分もある。それはキリスト教というより「神仏習合」した土着信仰だったのだ(以下はネタバレ)。

続きは2月6日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

もう元号を使うのはやめよう

mig政府は平成31年1月1日から新しい元号にする検討を始めた…と聞いて、とっさに西暦何年のことか、わかる人は少ないだろう。平成31年とは2019年のことだ。今度これが新元号になると、2020年から「新元号」2年、3年…となり、年数の計算は一段とややこしくなる。

続きはアゴラで。

「姥捨て」という都市伝説


世の中には、意外に根も葉もない都市伝説が受け継がれているもので、「姥捨て山」というのもその一つだ。これは深沢七郎が『楢山節考』で創作した物語であり、そんな歴史的事実はまったく存在しない。

続きはアゴラで。

朝日・岩波が支えた戦後の「表の国体」が終わる

iwanami神田・神保町の信山社が、東京地裁から破産開始決定を受けた。私ぐらいの世代にとっては「岩波ブックセンター」としておなじみで、本屋にない岩波書店の本も信山社に行けば必ずあるので便利だったが、気がつくと岩波の本はほとんど買わなくなった。

アゴラの書評欄でも今年103冊書評したうち、岩波は3冊だけだ(うち1冊は「読んではいけない」本)。その原因は、反原発派のパンフレットに化けた『科学』を見ただけでもわかる。

続きはアゴラで。

ボブ・ディランは偉大な詩人である

ブロンド・オン・ブロンド
Sony Music Direct(Japan)Inc.
★★★★★


今年のノーベル文学賞は、ボブ・ディランが受賞した。かなり前から候補にあがっていたが、「大衆音楽に授賞するのはいかがなものか」という理由で、見送られていた。しかしこのアルバムを聴けば、彼が偉大な詩人であるとともに音楽家でもあることがわかる。"I Want You"は歌詞も曲も単純だが、彼の最高傑作の一つだ。

The guilty undertaker sighs
The lonesome organ grinder cries
The silver saxophones say I should refuse you
The cracked bells and washed-out horns
Blow into my face with scorn
But it's not that way
I wasn't born to lose you
I want you, I want you
I want you so bad
Honey, I want you.

続きは10月17日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

天皇「生前退位」に隠されたメッセージ

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AEIのMichael Auslinが、天皇の発表した生前退位の意向について、おもしろいコメントをしている。この問題も日本のマスコミが自由に論評できないので、アメリカ人のほうが本質的な問題を論じている。
天皇制は世界にも類をみない奇妙なシステムであり、それは超近代と前近代の混在する日本を象徴している。江戸時代に西洋から大きく立ち後れた日本は、明治になって急いで統一国家をつくるため、1000年以上忘れられていた天皇を君主にした。しかしその実権はなく、前近代的なバラバラの社会が温存されたため、結果的には無謀な戦争に突っ込んで日本は自壊した。

日本の教育制度は能力主義で競争的だが、官庁や企業は年功序列で、老人が社会を支配している。82歳になっても公務から引退できない天皇は、その犠牲者だ。戦後70年の区切りをつけ、皇太子が彼の即位した年齢になった今は、退位にふさわしい。それは日本の衰退の原因になっている老人社会をやめ、日本社会にダイナミズムをよみがえらせようという彼のメッセージかもしれない。

続きは9月5日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。






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