科学/文化

日本人は新型コロナに免疫をもっているのか

きのうの安倍首相の記者会見は、新型コロナの緊急事態宣言を出すものかとも思われたが、中身は景気対策の説明だけだった。それはそうだろう。日本の新型コロナ感染者数は約1500人で、人口比では先進国で最小。 死者に至っては人口比でイタリアの1/400、世界平均の1/10である。


各国のコロナ感染者数(FT.com)

このように日本の新型コロナ感染(特に死亡率)が少ない原因として、次のようなものが考えられる。
  1. 政府や医療機関の対策がうまく行った
  2. きれい好きな日本人の生活習慣が感染を防いだ
  3. 多くの日本人がすでにコロナに対する免疫をもっている
  4. 日本人の感染したコロナウイルスは毒性が弱い
1と2の要因があることは間違いないが、それだけではこの大きな差は説明できない。3と4は常識では考えにくいが、今回の事態は常識を超えているので、あえて常識を無視して考えよう(陰謀論は除外)。

続きはアゴラで。

日本型BCGで新型コロナの免疫ができる?

「BCG接種が新型コロナにきく」という話が、ネットで出回っている。BCGは子供のとき受ける結核の予防接種なので、これは一見すると医学的に根拠のないトンデモにみえるが、ジョンズ・ホプキンス大学の世界地図を見ると、疫学的な状況証拠は十分ある。



続きはアゴラで。

新型コロナの「抗体検査」が必要だ

オクスフォード大学のシミュレーションでは、イギリス人の半分以上がすでに新型コロナの免疫をもっている可能性を示唆している。これは現在のイギリス政府の方針の依拠しているインペリアル・カレッジの報告書とはまったく違う。この違いの最大の原因は、感染がいつ始まったと想定するかである。

インペリアル・カレッジはイギリスで死者が初めて出た3月上旬を感染の起点と想定しているが、オクスフォード大学は1月下旬を起点にしている。感染症の死者が出るのは、感染が始まってから2~3ヶ月後だからである。新型コロナの基本再生産数が2.25だとすると、この2ヶ月で感染が急速に拡大し、3月15日にはイギリス国民の50~60%が免疫をもっている計算になる。

同じことが日本にもいえるとすると、日本国内(クルーズ船を除く)で初めて死者が出たのは2月下旬なので、そこから2ヶ月さかのぼった昨年12月末に感染が始まったことになる。

続きはアゴラで。

日本人はすでに新型コロナの集団免疫をもっている?

イギリスのボリス・ジョンソン首相は集団免疫戦略を撤回したが、その根拠となったインペリアル・カレッジの報告書には重大な疑問がある、とオクスフォード大学の8人の研究者が指摘している。

インペリアル・カレッジの報告書は、これからイギリスで国民の81%が感染し、25万人が死亡すると予測して大きな反響を呼んだ。これはイギリスで死者が初めて出た3月から新型コロナの感染が始まったと想定しているが、これはおかしい。感染の開始から死者が出るまでには、タイムラグがあるからだ。

この論文では1月下旬に新型コロナウイルスがイギリスに入ったと想定して、感染の拡大をSIRモデルと呼ばれる疫学モデルでシミュレーションした結果、図のように、すでにイギリス国民の半分以上が免疫をもっている可能性がある、というインペリアル・カレッジとは対照的な結論が出た。

d

基本再生産数R0=2.25で致死率0.1%とすると、図の黄色のカーブのように2月末から免疫をもつ人が増え、3月19日の段階では68%が免疫をもっている。R0=2.75で致死率1%とすると、30%ぐらいが免疫をもっていることになる。

このモデルとインペリアル・カレッジの結論が大きく違う最大の原因は、新型コロナウイルスがイギリスに入った時期の違いである。 死者は3月初めから出ているが、普通は感染が始まってから死者が出るまでに少なくとも1ヶ月かかるというのが、この論文の重要な指摘である。イギリスに上陸したのは遅くとも1月末だろう。

この推定が正しいとすると、日本で最初の死者が出たのは2月中旬なので、潜伏期間が2週間あることも考えると、新型コロナウイルスは昨年12月末までには日本国内に入ったと考えられる。日本でもイギリスと同じペースで感染が広がったとすると、すでに60%以上の国民が免疫をもっている可能性がある。

R0=2.25とすると、感染率55%でピークアウトする。日本で新規患者数や新規死者数が減っている原因は、感染の開始から3ヶ月以上たって集団免疫ができているためだと考えると、国民性や生活習慣の違いなどを考えなくても説明できる。これは日本だけでなく、インドやタイやマレーシアなど、中国人の多いアジアで感染が少ない原因も説明できる。

続きは3月30日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)。

新型コロナ感染は「オーバーシュート」するか

非常にややこしい話だが、新型コロナの問題を理解する上で重要なので説明しておく。専門家会議の資料は日本の実効再生産数Rが1を下回ったという驚くべき事実を明らかにしたが、後半ではトーンが変わっている。

この資料の9ページにある西浦博氏のシミュレーションによれば、減っている感染が局地的な「オーバーシュート」で反転する可能性があるという。
基本再生産数(Ro:すべての者が感受性を有する集団において1人の感染者が生み出した二次感染者数の平均値)が欧州(ドイツ並み)のRo=2.5 程度であるとすると、症状の出ない人や軽症の人を含めて、流行 50 日目には 1 日の新規感染者数が 5,414 人にのぼり、最終的に人口の 79.9%が感染すると考えられます

y
基本再生産数Ro=2.5の場合の重篤患者数(専門家会議の資料より)

このシミュレーションによると、図のようにオーバーシュートが始まってから60日後に65歳以上の重篤患者は10万人あたり60人を超え、人工呼吸器の数の10倍を超えるという。ここまでR<1になったというデータで議論しているのに、ここで初めてRoという概念が出てくる。

Ro=2.5になる根拠は書いてないが、これはWHOの想定する1.4~2.5の上限である。このRとRoの関係が書いてないので、普通の人は「一時的には感染が下火になったが、また反転する」と解釈するだろうが、そうではないのだ。

実際の感染拡大を決めるのはRで、それが1になったとき感染拡大は止まる。Rは予防接種の効果を考えるときの変数で、予防接種で免疫を獲得した人の比率をHとすると、

 R=Ro(1-H)=1

となるとき集団免疫が成立する。このHが集団免疫率だが、コロナには予防接種がきかないので、Hを感受性をもたない人の「鈍感率」と考えよう。Hが日本人に固有の遺伝的な特性だとすると急に上がることは考えられないが、生活習慣の違いだとすると上がる可能性もある。

西浦氏は北海道で0.7になったRが、その3倍以上になると想定している。その理由は不明だが、コロナの「本当の感染力」は2.5で、今の1以下というRは一時的に自粛で下がっただけだと考えているのだろう。たとえば北海道で緊急事態宣言が終わると人々の接触が再開されて局地的にHが上がり、Rが少しRoに近づくことは考えられる。

だが全国でRが3倍に激増することはありえない(予防接種のない場合はR≒Roと考えるのが普通だ)。つまりRo=2.5という想定は日本では過大評価であり、その実態はRに近い(たかだか1~1.4程度)と思われる。終息し始めたコロナの感染が、オーバーシュートして大きく上がることは考えにくい。

続きは3月23日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)。

新型コロナ対策で大事なのは感染者を減らすことではない

新型コロナをめぐる議論で「韓国では片っ端からPCR検査をやったために患者が病院にあふれて医療が崩壊した」と言われることがある(私も言ったことがある)が、これは本当だろうか。

韓国で集団感染が起こったことは事実だが、その半分以上を大邱市の新興宗教「新天地イエス教会」の信者が占めていた。これに対して韓国政府は、希望者すべてにPCR検査を受けさせ、感染者は激増して8000人以上になったが、新規患者数は図のように3月上旬でピークアウトし、最近は退院が入院を上回っている。


韓国の新規患者数と退院者数(Worldometer)

続きはアゴラで。

日本の新型コロナ感染は止まったのか

専門家会議の新型コロナについての状況分析と提言が発表された。特に注目されるのは、実効再生産数Rが全国で1以下になったと推定していることだ。Rは1人の感染者が何人に感染させるかを示す値で、これが1以下になったということは次のように感染者が減っていることを示す。

s

右端で新規感染者数がゼロになったように見えるのは感染日が報告日より2週間前になるためだが、3月5日までのデータを見ても感染者数が大きく減り、Rは1以下になっている。つまり感染がそれ以上拡大しない集団免疫がすでに実現したことになる。

問題はそれが今後も維持できるのかどうかだが、専門家会議は慎重な見方をとっている。ヨーロッパでは、2月下旬にイタリアでオーバーシュート(感染爆発)が起こり、3月上旬にフランス・ドイツ・スペインでも起こったが、それより早くから感染の始まった日本の感染速度は小さい。

zzz

これをどう見るかについては専門家会議でも意見がわかれたようだが、日本でも感染に気づかないスプレッダーが都市部で集まると、オーバーシュートが起こるかもしれないと警告している。もし日本の基本再生産数R0がヨーロッパ並みの2.5だとすると、集団免疫が成立するのは人口の60%が感染したときだから、潜在的な感染が広がっている可能性もある。

続きは3月23日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)。

新型コロナ「日本の奇蹟」はなぜ起こったのか



言論アリーナでは、松村むつみさんに新型コロナについて話を聞いたが、そのときも話題になったのは「世界的にみて日本だけ感染者が異常に少ないように見えるのはなぜか」ということだ。よくいわれるのは「PCR検査が少ないから陽性も少なく出る」ということだが、検査が増えても患者はほとんど増えていない。

続きはアゴラで。

新型コロナウイルスを永久に封じ込めることはできない

インペリアル・カレッジのCOVID-19に関する報告書が16日に発表された。これはイギリス政府の集団免疫政策の根拠になったものだが、日本人にも必読なので、私の理解できた範囲で荒っぽく紹介する。この報告書は次のように要約されている。
2つの基本的な戦略が可能である。
  1. 流行の拡大を遅らせるが必ずしも停止しないことに焦点を当てた緩和(集団免疫):ピークの医療需要を減らしながら重篤な疾患のリスクが最も高い人々を感染から保護する。
  2. 感染の拡大を逆転させる抑制(封じ込め):患者数を低レベルに減らし、その状況を無期限に維持する
各政策には大きな課題がある。最適な緩和政策(疑わしいケースの自宅隔離、疑いのあるケースと同じ世帯に住んでいる人の自宅検疫、および重度の病気のリスクが最も高い高齢者などの社会的隔離を組み合わせること)は、医療需要のピークを2/3に減らし、死者を半分に減らせる

しかし結果として生じる緩和された伝染病は、数十万人の死と健康システム(特に集中治療室)が何度も圧倒される結果となる可能性がある。抑制を達成できる国にとっては、それは政策オプションとして残る。

これが報告書のコアである。緩和と抑制の違いは、抑制が実効再生産数Rをなるべく早く1以下にするために最大限のコストをかけるのに対し、緩和はR=1となる集団免疫状態を長期的にめざし、感染の拡大をコントロールすることだ(何もしないことではない)。

この報告書のシミュレーションでは、基本再生産数を2.4とした場合、感染の拡大は図1のようになる。縦軸はコロナの重症患者に必要なICU(集中治療室)のベッド数で、何もしない場合には、患者数は赤い直線で描かれたベッド数(人口10万人あたり8)の最大30倍になる。これを高齢者の隔離などで軽減すると、青い曲線のように8倍まで下げることができる。

z
図1 「緩和」政策をとった場合の重症患者数とICUベッド数

それに対して全面的な社会的隔離などの規制で封じ込めると、図2のように一時的には感染の拡大を抑え込めるが、5ヶ月で封じ込めをやめると冬に感染爆発が起こり、患者数は緩和した場合より多くなる。つまりゆるやかに感染させてピークを夏にもってきたほうが死者は減らせるのだ。

q
図2 「抑制」政策をとった場合の重症患者数とICUベッド数

封じ込めを永久に続けることはできない。集団免疫が成立するまで、感染拡大は止まらない。規制を解除すると患者数が増えるが、それが冬になると最悪なので、ゆるやかに感染を増やして医療の負担を軽減し、死者を最小化するのがイギリス政府の戦略である。

追記:このレポートは今週になって修正され、最後の部分に「当面は抑制が有効な戦略だ」と付け足している。これは先週、ジョンソン首相が発表した集団免疫戦略に多くの批判が集まったため、彼が書き換えを命じたものと思われる。それ以外の科学的記述はほとんど変わっていない。

続きは3月23日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)。

新型コロナの「封じ込め」から「集団免疫」へ

国の専門家会議は2月24日に「これから1-2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となります」と述べたが、3月9日の見解ではこう書いている。
これまでに国内で感染が確認された方のうち重症・軽症に関わらず約8 0%の方は、他の人に感染させていません。また、実効再生産数(感染症の流行が進行中の集団のあ る時点における、1人の感染者から二次感染させた平均の数)は日によって変動はあるものの概ね1程度で推移しています

これは重要なデータである。実効再生産数は感染力を示す指標で、これが「おおむね1」ということは、新型コロナの感染がピークアウトした可能性を示唆するからだ。新規患者数も死者も、先週で頭打ちになっている。これは検査キットの不足などの原因も考えられるが、感染が飽和した可能性もある。

続きはアゴラで。







記事検索


月別アーカイブ
QRコード
QRコード
Creative Commons
  • ライブドアブログ