地球温暖化の不都合な真実

「地球温暖化」の不都合な真実
地球温暖化が人類最大の問題かどうかは議論の余地があるが、それが人類の直面する最も複雑な問題であることは間違いない。そもそも温暖化が起こっているかどうかという根本的な科学的事実が確認されていない。

それを疑う人を温暖化懐疑派と呼ぶとすれば、著者はその一人だが、彼は科学者ではないので、IPCCの報告書を反証するデータをもっているわけではなく、それに代わる理論を提示するわけでもない。多くの疑惑を示すだけだ。

国際機関に集まった数百人の科学者が20年以上にわたって嘘をつき続けることは考えにくいが、そのインセンティブはある。地球温暖化が起こるという研究には多額の研究費がつくが、起こらないという研究にはつかないからだ。ホッケースティック曲線をめぐるスキャンダルは、IPCCが疑惑のデータを撤回することで決着した。

そういうバイアスを割り引いて考えても、次の図のようにここ50年ほど地球の平均気温が上がり続けているトレンドは否定できない(2015年以降は下がっているが)。問題はその原因が何かということだ。

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日米地位協定はなぜ改正できないのか

日米地位協定-在日米軍と「同盟」の70年 (中公新書)
独立国の中に外国の軍隊の基地が置かれているのは、異常な事態である。第二次大戦までは、外国の軍隊が駐留しているのは植民地か保護国だった。したがって「日本は今も軍事的にはアメリカの植民地だ」という共産党などの批判は正しい。

その根拠になっているのは日米地位協定(当初の行政協定)だが、これは終戦直後の東アジアで戦争の危機が切迫していた時期に、日本が再軍備するまでの暫定的な「駐軍協定」としてはやむをえない面もあった。問題はそれが本質的に改正されないまま、今日に至っているのはなぜかということだ。

最大の原因は、ほんらい暫定的なものだった憲法が改正できないことだが、問題はそれだけではない。その条文は米軍に治外法権を認めるような異例の規定だが、日米政府はこれを日米合同委員会の合意議事録という密約で「解釈改正」 してきたからだ。

たとえばいまだに沖縄で問題になる米軍の軍人・軍属の犯罪についての刑事裁判権は、日米行政協定では日本政府にあることになっていたが、1953年の合意議事録で日本側が「実質的に重要」な事件を除いて裁判権を行使しない方針を口頭で表明した。この議事録は2000年代に公開されたが、この密約は今も有効である。

続きは12月30日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

自己欺瞞としての反日感情

反日種族主義 日韓危機の根源
今年、出版界で大きな話題になったのは『反日種族主義』がベストセラーになったことだろう。内容は必ずしも一般向けとは言えないが、韓国では11万部、日本では25万部も売れた。韓国人が自国の歴史観をここまで批判的に見ることができるようになったのは、大きな進歩である。

しかし木村幹氏も指摘するように、この本は李承晩学堂の出版物であり、明確な党派性をもっている(その点は編者の李栄薫氏が冒頭で断っている)。いいかえると、これは韓国左派の歴史観に対する右派の批判であり、その目線は韓国の国内政治にある。

したがって文在寅政権のあと右派政権に交代したとしても、韓国の反日感情が大きく変わることは考えられない。日韓請求権協定を否定する徴用工判決のような極端な歴史観はなくなるかもしれないが、日韓併合を否定することは李承晩以来の国是であり、それを否定する勢力は韓国内には存在しない。

つまり日韓の本質的な問題は文政権のような左派イデオロギーではなく、日本の朝鮮支配のおかげで韓国の戦後の発展があったという歴史を隠蔽する自己欺瞞なのだ。

続きは12月23日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

今年の良書ベスト10

韓国「反日主義」の起源今年は不作だった。世界情勢は意外に平穏で、経済もゆるやかに停滞しているので、話題になる出来事も少なかった。そんな中で、日本では韓国との紛争が再燃し、歴史をあらためて考えるきっかけになった。

  1. 韓国「反日主義」の起源

  2. 「追われる国」の経済学

  3. 大分断

  4. 反日種族主義

  5. Becoming Human

  6. 平成金融史

  7. Evolution or Revolution?

  8. イスラム2.0

  9. 腐敗と格差の中国史

  10. 父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。

続きはアゴラで。

「社会契約」としての新憲法

はじめての憲法 (ちくまプリマー新書)
安倍政権の残された最大のテーマは憲法改正だが、今のところ自民党内の合意もできていない。公明党の合意は絶望的だ。それでも安倍首相がこの問題にこだわるのは「押しつけ憲法」の改正が自民党の結党以来の悲願だからだろう。

他方で一部の憲法学者は、それが押しつけではなく、終戦で主権者になった日本国民が「八月革命」によって制定したものだというが、この主張に対応する歴史的事実はまったく存在しない。どっちにも共通するのは、憲法が民主的正統性に弱点を抱えているという認識である。

この背景には主権者たる国民が憲法を制定するというドイツ国法学の発想があるが、憲法を書いたのはアメリカの法律家である。彼らにとってはそんな観念論はどうでもよく、憲法は連合国が提案して日本が受諾したポツダム宣言の具体化だった。それは日本と連合国の社会契約だったと著者は考え、この契約を「ポツダム・プロセス」と呼ぶ。

占領で日本の国家主権が制限されたことが国際法違反だというのが保守派の一部の主張だが、当事者の合意した契約は一般法に優先する。日本政府が降伏文書に調印したときポツダム・プロセスが始まり、サンフランシスコ条約で終わった。その根底にあった概念はドイツ的な「主権者」ではなく、英米的な国際法にもとづく契約だった。

続きは12月16日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

年金不安は幻想か

年金不安の正体 (ちくま新書)
日本の年金制度が危機的状態にあるというのは常識だが、本書はその常識に挑戦し、年金危機は「日本人の心の中にある」幻想だという。

これは一見、驚くべきことを言っているようだが、実はそれほど意外な話ではない。厚労省の年金マンガと同じロジックである。終章に出てくる権丈善一氏の話がそれを要約しているので、基礎知識のある人は終章だけ読めばいい。

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経済学者の批判は「超高齢化社会では、賦課方式の年金だと将来世代の負担が重くなる」ということに尽きる。本書もこの事実は認める。積立方式のほうが将来世代の負担が少ないことも認めるが、賦課方式から積立方式に移行するのは巨額の「二重の負担」が発生するので不可能だから、賦課方式で問題はないという。

これは論点のすり替えである。積立方式が政治的に困難であることは、世代間格差が存在しないことを意味しない。世代会計でみると、今のゼロ歳児の生涯所得(受益-負担)が今の60代より約1億円少なくなることは算術的に明らかだ。それが「不公平ではない」というのは厚労省の弁解である。

なお本書は原田泰氏を一貫して「元日銀副総裁」と書いているが、彼は現役の日銀審議委員である。

続きは12月16日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

「イスラム2.0」という宗教改革

イスラム2.0: SNSが変えた1400年の宗教観 (河出新書)
イスラム原理主義は狂信的なテロリストとしか見えないが、コーランには「神も終末も信じない者と戦え」と書かれている。日本では、この点を曖昧にして「本来のイスラムは平和的だ」という人が多いが、むしろ本来のイスラムの教義にもとづくジハード(聖戦)を各国政府が抑圧してきたのだ。

その抑圧がはずれたのが、2010年代の「アラブの春」だった。独裁政権が崩壊して民主化するという期待とは逆に、政府の権力が弱まって国内が混乱すると「イスラム国」のような原理主義の活動が強まった。これを著者は「イスラム2.0」と呼ぶ。

従来のイスラム1.0は、コーランやハディース(ムハンマドの言行録)の解釈の体系だった。そのテキストは膨大で、ほとんどのイスラム教徒は文盲だったので、その解釈は法学者が独占していた。ところが識字率が上がり、インターネットの普及でコーランなどを直接読むことができるようになり、一般の信徒が「真の神の教え」に目ざめたのだ。

これはキリスト教の宗教改革に似ている。カトリック教会でもラテン語訳の聖書は教会にしかなく、説教もラテン語で行われたので、一般の信徒にはお経を聞くようなものだった。しかし聖書のドイツ語訳が印刷されると、多くの信徒がそれを読んで教会の教えに疑問を持ち始めた。イスラム原理主義は、キリスト教の歴史を500年遅れで繰り返しているのだ。続きを読む

【再掲】中曽根康弘で終わった「新自由主義」

中曽根康弘 - 「大統領的首相」の軌跡 (中公新書)
中曽根元首相が死去した。世間的にはロッキード事件やリクルート事件で逃げ切った「汚い政治家」というイメージが強いが、政治的な実績は大きい。特に国鉄と電電公社の民営化は、他の政権にはできない大事業だった。これはレーガン政権の「小さな政府」の日本版だが、「新自由主義」という言葉は中曽根が1977年に使ったのが最初だといわれている。

弱小派閥の出身で「田中曽根内閣」といわれたほど政権基盤の弱体だった彼が5年の長期政権になった背景には、日米関係の変化があった。70年代までアメリカの忠実な部下だった日本の位置づけは、レーガン政権で大きく変わった。日本はアメリカの最大のライバルとなり、経済的な「自立」を求められたのだ。

中曽根首相は「戦後政治の総決算」を掲げたが、憲法改正は提案しなかった。彼が総決算しようとしたのは、戦後の「福祉国家」路線だった。その第1弾が民営化で、第2弾が間接税による財政再建だった。そのため中曽根は「売上税」を導入しようとしたが失敗し、「増税できる首相」として竹下登を後継者に選んだ。続きを読む

ヒューマニズムは人道主義ではない

ヒューマニズム考 人間であること (講談社文芸文庫)
本書の原著は1964年。半世紀以上たった復刊だが、今でも「ヒューマニズム」についての古典として読むに値する。Humanismは「人道主義」という意味で使われることが多いが、原義は聖書を研究する「人文学」という意味である。

ルネサンスのユマニスト(人文学者)は、中世の神学者が些末な論争に没頭しているのに対して「それはキリスト教と何の関係があるのか」と問いかけた。彼らはカトリック教会を批判したが、ルターやカルヴァンのような宗教戦争の指導者とも対立した。ユマニストの批判は聖書にもとづく人文主義的な批判であり、プロテスタントの教義とは必ずしも一致しなかったからだ。

それを象徴するのが、エラスムスの弟子カステリヨンとカルヴァンの対立である。カルヴァンは1553年、三位一体説を批判した神学者セルヴェを投獄し、拷問のすえ火刑に処した。これに対してバーゼル大学の神学者カステリオンは、批判者を処刑するのはカトリック教会の異端審問と同じだ、とカルヴァンを批判したため、教団から追放された。

宗教改革を実現したのはユマニストではなく、カルヴァンの教団の軍隊的な規律だったが、それはヨーロッパに果てしない宗教戦争を生み出した。その戦争を終わらせたのはユマニストの主張した寛容の精神だった、と本書は指摘する。

続きは11月25日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

「反日種族主義」という偽のアイデンティティ

反日種族主義 日韓危機の根源本書は今年7月、韓国で出版され、2ヶ月で10万部を超えるベストセラーになったが、中身はそれほどセンセーショナルではない。李承晩TVで行われた連続講義をまとめた、韓国の近代史を論じる論文集である。

その内容は韓国では論議を呼んだが、日本人が読むとあまり違和感はない。日本と韓国の歴史認識が大きくわかれる植民地時代については、本書の見方は日本寄りといってもいい。韓国の教科書に書かれている「土地の40%が朝鮮総督府の所有地として収奪された」という話には実証的な根拠がない。

総督府は朝鮮半島全土の測量事業を行ったが、それは朝鮮人の土地を収奪するためではなく、日本の領土として永久に支配し、朝鮮人を日本に同化させるためだった。そのため測量は精密なもので、そのとき作られた土地台帳は、今も韓国で使われている。

続きはアゴラで。






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