情報の豊かさは,それが消費するものの稀少性を意味する.情報が消費するものは,かなり明白である.それは情報を受け取る人の関心を消費するのである.したがって情報の豊かさは関心の稀少性を作り出し,それを消費する膨大な情報源に対して関心を効率的に配分する必要が生じる。これは私が1997年に出した『情報通信革命と日本企業』の第1章の冒頭に掲げたハーバート・サイモンの言葉である。本書も第1章にこのサイモンの言葉を引用し、「関心の経済」によって産業構造が大きく変わったと論じている。
インターネットの初期には、自律分散ネットワークで誰もがコンテンツを世界に発信できるようになり、メディアは民主化すると予想する人が(私を含めて)多かった。私は要素技術のモジュール化で、巨大企業の脱統合化が起こると予想した。
このモジュール化という概念はブームになったが、脱統合化は必ずしも正しくなかった。IBMのような巨大企業が敗北し、インテルとマイクロソフトのような「水平分業」が進んだという意味では正しかったが、いま起こっているのはかつてのIBMを上回るGAFAの独占である。その原因は何だろうか。続きを読む