IT

ブロックチェーン革命

Blockchain: Blueprint for a New Economy
銀行は政府の規制に守られて新規参入はほとんどなく、もうかるときは青天井だが、つぶれそうになると政府が救済してくれるおいしいビジネスだ。これは銀行が私企業でありながら決済システムという公共インフラを支えているからで、かつてNTTが公共的な通信インフラを支えていたのと同じだ。

ご存じのように通信に関しては、NTTの中央集権型レガシーシステムは分散型のインターネットに取って代わられたが、銀行はいまだにレガシーシステムで莫大な超過利潤を得ている。今回のマイナス金利をめぐる大混乱は、日銀がコントロールする中央集権的な金融システムの終わりの始まりかも知れない。

ただ低コストで「ベスト・エフォート」のインターネットが電話網を駆逐したように、分散型のブロックチェーンは、ゼロリスクを求められる金融より、本書の紹介しているようなデータの信頼性を保証する一般的なシステムから始まるかもしれない。

たとえば土地や著作物のように所有権をめぐる紛争の絶えないものは、最初にブロックチェーンに登録した人を所有者と決め、その情報を世界で共有して信頼を担保できる。そういうシステムを開発するベンチャーが、シリコンバレーには多数生まれている。

続きは2月15日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

ネットワークは個人を会社から解放する

20151031_FBD001_0今年からアゴラ研究所は、渋谷に移転した。同時に事務所機能はなくし、週1回のミーティング以外はすべてネット上で行なうことにした。GEPRはビル・ゲイツの提案でvirtual thinktankとして発足したが、アゴラ研究所もvirtual companyになったわけだ。

Krepsが1990年の有名な論文"Corporate culture and economic theory"で予言したように、企業活動が一つの社屋で行なわれる時代は、21世紀には終わるだろう。企業の本質は評判の乗り物なので、情報インフラが整備されれば世界のどこで生産してもいい。

たとえばシスコシステムズの生産は世界各地で行なわれているが、それを統合するのは物的資本ではなく、シスコというブランド(評判)である。これを守るためにシスコの社内情報システムはグローバルに統合されており、労働者は世界のどこで仕事をしてもかまわない。

シェアリング・エコノミーの本質も資源を「シェア」することではなく、ネットワークが情報の「ハブ」になって個人を会社から解放することだ。UberやAirbnbは、そういう革命の始まりにすぎない。これから最大の変化が起こるのは、情報サービスの分野だろう。

「ビットコイン」の基礎技術であるブロックチェーンは金融に限られたものではなく、Economistの指摘するように「情報を確認する汎用技術」だ。それはホンジュラスやギリシャでは不動産登記に使われ始めており、財産権を電子的に代替する可能性もある。

続きは1月11日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

「電波共同体のコンセンサス」が帯域を浪費する

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在京AMラジオ局が、FM放送を始めるそうだ。ネット放送で無限のチャンネルが聞ける時代に、FM放送を始めるセンスもNOTTV並みだが、その使う電波が90MHz帯(アナログテレビの1チャンネル)というのは見逃せない。テレビを立ち退かせてVHF帯を「有効利用」するはずが、迷走したあげくにラジオになるとは、とんだ笑い話だ。

このニュースを見て、長谷部氏の「法律家共同体のコンセンサスに国民は従え」という言葉を思い出した。彼はある意味で的確に、日本の官民関係を表現している。電波を動かしているのも、電波官僚の独裁ではなく、官民の電波共同体のコンセンサスなのだ。

2010年に電波部案をくつがえして実現した700/900MHz帯の再編でも、NECや富士通などのITゼネコンが執拗に反対した。ある討論会で私が総務省ワーキンググループの技術者に「電波部案が技術的にナンセンスだということはあなたも認めたのに、なぜそれに固執するのか」ときいたところ、「それしか関係者のコンセンサスがとれないのだ」という。

この関係者とは、電波部とその天下り官僚とITゼネコンの電波共同体だ。彼らはLTEでクアルコムなどに先を越され、国際周波数で競争が始まったら全滅するので、日本だけのガラパゴス周波数で国際競争を阻止しようとしたのだ。

続きは12月14日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

NOTTV破綻で始まる電波社会主義の崩壊(3)

最初から政治的な取引で、ビジネスとして成り立つはずのなかったNOTTVがつぶれるのは自業自得だ。累損1000億円も、ドコモの毎年8000億円以上ある営業利益で吸収できる。利用者は150万人程度なので、サービスが止まっても大した影響はない。

問題は、国民の共有財産であるVHF帯の電波が、浪費されていることだ。地デジの帯域は、図のようにVHF帯からUHF帯に移される予定だったが、全国100%に普及しているテレビをすべて変更するコストは、置局だけで1兆円を超し、地方局にはとても負担できなかった。

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このため民放連の氏家会長をはじめ、地方局がデジタル化に反対したので、郵政省は2001年度の予算で、UHF帯に移行するためのアナアナ変換(中継局の周波数変更)に3000億円以上の補助金を出した。

これには「私企業の経費を国が負担する違法行為だ」と大蔵省が反対したため、郵政省は「予算の成立後10年以内にアナログ電波を止めて有効利用する」と電波法に明記して国費を投入し、2011年7月に無理やり電波を止めてしまったのだ。

続きは12月7日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

NOTTV破綻で始まる電波社会主義の崩壊(2)

ドコモの特殊なアンテナをつけた端末でしか見られないNOTTVができた背景には、複雑な事情がある。2007年に2.5GHz帯の比較審査(美人投票)が行なわれたとき、4グループの中で、ドコモのグループ(B社)が落選し、ウィルコム(A社)とKDDI(C社)が当選したが、その理由に業界は驚いた。次の表のように「継続的に運営するために必要な財務的基礎がより充実している」という点でウィルコムがトップだったのだ。

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「日の丸技術」であるPHSを通すことにご執心だったのが当時の菅義偉総務相で、その意向でウィルコムが選ばれたといわれる。日本有数の高収益企業ドコモより「財務的基礎が充実」していたはずのウィルコムは、まもなく経営が破綻してカーライル・グループに買収され、さらに経営が行き詰まってソフトバンクに買収された。

このときドコモを落とす代わりに、アナログ放送をやめて空くVHF帯を与えるというのが総務省とドコモのバーター取引だった。VHF帯にはクアルコムが参入しようとしており、これに対して民放連が既得権を守ろうとしていたが、放送局が全国に携帯端末用の基地局を建てることができないため、通信業者の協力が必要だったのだ。

続きは12月7日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

NOTTV破綻で始まる電波社会主義の崩壊(1)

大手メディアがまったく伝えていないNOTTVの破綻だが、話は非常に複雑なので、連載で今までの経緯を説明しよう。まずそれを運営しているNTTドコモと民放連の子会社mmbiの今年の決算は次の通り。

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2015年6月のNOTTVの決算公告

当期純損失が503億円、累積赤字(利益剰余金の赤字)が996億円と、株主資本の2倍の債務超過で、普通の会社ならとっくに清算される財務状況だ。アゴラでも書いたように、これが失敗することは最初からわかっていた。不思議なのは、こんな大赤字になるに決まっているビジネスをNTTドコモの中村社長(当時)がなぜ始めたのかということだ。これには電波社会主義に特有の複雑な事情がある。

続きは12月7日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

ソニーは立ち直れるのか

ソニーがきのう4~9月期の連結損益を発表した。当期純損益は1059億円で、5年ぶりの中間黒字を計上した。ちょうど今夜のアゴラ経済塾ではソニーをテーマにするので、その中間決算の中身を調べてみた。

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ソニーのセグメント別の連結営業利益

これはセグメント別の営業損益だが、増益に寄与した最大の要因は、昨年1722億円もの減損処理をしたスマホの赤字が減ったことだ。画像センサとゲーム機(PS4)の黒字は増えたが、映画は赤字が増え、本業の足を引っ張っている。最大の稼ぎ頭は、一貫して金融(ソニー銀行・生命)である。

これは典型的なコングロマリットの末期症状だ。過去にも映画部門を売却すべきだという株主の要求があり、「スパイダーマン」のような大ヒットを出したときは投資家からも「映画部門だけなら買う」という声があったが、最近では金正恩暗殺を描いた映画がサイバーアタックの対象になったりして、お荷物になっている。

ソニーの技術力はまだ高いが、1240社も連結子会社を抱えた水ぶくれ構造では、平井社長のような「みこし」型のCEOが全体をコントロールすることは不可能だ。むしろ大胆な事業売却によって、資本の論理で再生できる可能性がある。

続きは11月2日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

電波開放を阻む民放連

300px-Tokyo_Sky_Tree_2012JBpressに書いたMVNOの話を補足しておこう。世界的にみると、MVNOが成功した例は少ない。ボトルネックになる電波をキャリアに握られているからだ。

これは固定通信網でDSLが挫折したのと同じで、NTTなどの既存キャリアが加入者線(last one mile)をもっている限り対等な競争はできない。規制当局は電波の「オープン化」を進めようとするが、スマホが増えて帯域は満杯になっている。

公正競争を実現するには、UHF帯をスカイツリーのように整理して電波を開放すればいいのだが、民放連が死守している。「チャンネルがあくと大資本が入ってくる」と恐れているからだが、今どき滅びゆく地上波ビジネスに参入する企業はない。

世界的にみても、オークションで開放されたUHF帯は、すべてスマホの帯域だ。しかし民放連の政治力は強いため、自民党は彼らの既得権を守り、電波部はそれに絶対服従だ。民主党政権が電波法改正でオークションを可能にしたが、自民党政権は封印してしまった。

続きは10月26日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

携帯料金を下げる方法

iphone机から床に落としただけで、iPhone5sのガラスが割れてしまった。最初はガラスを取り替えればいいだけだろうと思って、近所のショップに持って行ったら、液晶ごと替えなければならないので、純正でなくても1万4800円かかるという。

しょうがないから買い換えようと思ったが、iPhone6sの価格は8万4000円。しかしヤマダ電機では、SIMフリーのHuaweiの端末を1万7800円で売っている。そこでまず考えたのはSIMフリーの端末にauのSIMカードを差すことだ。念のため実際に私のSIMを差してみたが、動かない。どうもauのSIMには細工がしてあるらしく、日本のSIMフリー端末はSIMフリーではないのだ。

そこで発想を転換してMVNOの格安SIMに乗り換え、安倍政権の政策課題である「携帯料金の引き下げ」を実践してみようと思って、いろいろ試してみた。今のauでは毎月8000円~1万円とられている料金が、どこのMVNOでも基本料は2000円程度になる。ただ気をつけなければいけないのは、低価格で十分な機能があるのかという点だ。

続きは10月12日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

ビジネスマンのためのタコツボ入門

最近の記事は政治史トリビアみたいになってきたので、これはビジネスにも応用できることを示しておこう。タコツボ型という言葉は、丸山眞男が『日本の思想』で学問体系について使ったものだが、日本の組織を表現する概念としても使われる。たとえばソニーが「カンパニー制」で失敗したのも、もともと閉鎖的な事業部を完全なタコツボにして、全体を統括するのが出井伸之氏のような「弱いリーダー」だったからだ。

湯之上隆氏が日本の半導体について指摘しているのも、同じ問題だ。要素技術としてはいいものがつくれるのに、全体の戦略を立てて実行するリーダーがいない。これが日本型だとすると、いくつかの部門を統合した企業がグローバルに競争する英米型(丸山の言葉でいうとササラ型)の資本主義、中国型の国家資本主義は次の図のようなイメージだ。

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日本型はデバイスのようなタコツボの中で完結する製品では強いが、全体のアーキテクチャや世界戦略が勝負のPCやスマートフォンでは、国際分業を統括できる英米型が強い。しかし国家資本主義型のインフラ産業やエネルギー産業では、日本も強い。ではグローバル企業のトヨタが強いのに、半導体が全滅したのはなぜだろうか?

続きは今夜23時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。






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