物語 ドイツの歴史―ドイツ的とは何か (中公新書)
ドイツはロシアからの天然ガス供給が80%削減される危機になっても、今年末に3基の原発を予定通り停止する方針だ。ここまで来ると世界のエネルギー危機の大きな原因は、合理的な計算なしに脱炭素化という「信仰」に殉じるドイツ人にあるといわざるをえない。

このようなドイツ人の特徴は、それほど古いものではない。阿部謹也によると、キリスト教化する前のドイツ(神聖ローマ帝国)は日本とよく似た部族社会で、贈与・互酬によって個人を「閉じた社会」に埋め込んでいたという。

12世紀ごろ神聖ローマ帝国がキリスト教で統一され、教会が個人の内面を管理するシステムができた。近世以降の戦争の連続の中で人口が移動したため、そのアジール(避難所)として都市国家が成立した。都市では個人は地域や家族から切り離され、神の前で絶対的に孤独な存在となり、不特定多数が出会う「開かれた社会」になった。

ここで社会を統合したのは古代的な「世間」のつきあいではなく、個人という人工的な概念だった。このときアイデンティティの核になったのは信仰だったが、字も読めなかった大衆が、キリスト教の教義を理解して信じていたわけではない。それは伝統的な共同体を徹底的に解体して教会が個人を支配するシステムだったのだ。

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