日本人はなぜ自虐的になったのか:占領とWGIP (新潮新書)
戦後左翼の原点が憲法9条だとすれば、右翼の原点は東京裁判批判だろう。前者はウクライナ戦争でようやくその影響力を失いつつあるが、後者の影響はいまだにいろいろ形を変えて生き残っている。その一つが、江藤淳に始まるWGIP(戦争犯罪情報計画)である。

江藤の話は心情的にはわかるが、WGIPの存在を示す一次資料がなかった。本書がそれを出したのは一歩前進だ。これは高橋史朗氏の発掘した、1948年3月のCIE(民間情報教育局)の広報計画書の草案である。

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この草案にはWGIPという文字列があるが、目的は次の二つである。
  • 日本人が原爆の使用を「残虐行為」だと考える傾向をなくす
  • 日本人が極東軍事裁判の判決を受け入れる
著者も指摘するように、これ以前にWGIPという言葉はアメリカの公文書になく、この後も公表文書には出てこない。WGIPというのは、一時CIEの内部だけで使われた隠語なのだ。

本書のWGIP批判の中身は、江藤以来おなじみの話である。占領軍の言論支配力は圧倒的だったが、それは1952年までの話だ。その後70年も日本の教育やマスコミで「自虐史観」が支配的だった原因をWGIPで説明するのは、ウクライナ戦争を「アメリカのしかけた代理戦争」だというのと同じ陰謀史観である。

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