スタンリー・キューブリックのDr. Strangeloveは、私の歴代映画ベストワンである。日本では「博士の異常な愛情」という変なタイトルで公開されたが、原題は"Dr. Strangelove: or How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb"。タイトルは主人公の名前である。

あらすじ:アメリカ空軍の司令官が精神に異常をきたし、警戒飛行中だった戦略爆撃機34機に対し、ソ連への核攻撃を行うよう命令した。空軍司令部は爆撃機の大部分を呼び戻したが、一部の爆撃機に連絡する暗号がわからない。これを知った米大統領や軍高官、大統領科学顧問のストレンジラブ博士は、ペンタゴンの戦略会議室に集結して対策を協議した。

大統領はソ連の首相に「連絡がとれなかったら爆撃機を撃墜してほしい」と電話するが、ソ連首相は、核攻撃を受けた場合、自動的に大量の核兵器を発射して人類を全滅させるドゥームズデイ・マシンという装置を実戦配備したことを告げる。米大統領はストレンジラブ博士に対策を相談するが、彼は「全国民が地下シェルターの中で暮らすしかない」と告げる…

公開は冷戦初期の1964年。米ソが人類を全滅させられる量の核兵器を保有するようになった時期である。この映画は、自動的に報復して相手を全滅させる相互確証破壊(MAD)という戦略がいかにバカげたアイディアかをブラックコメディとして描いたものだが、ウクライナ戦争でもMADの危険性が明らかになった。

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