暗黒の啓蒙書
日本の行き詰まりの原因は、人々を会社に囲い込んで退出を許さない「閉じた社会」が、グローバル資本主義に適応できなくなったことだ。これは日本だけの問題ではなく、パトリ・フリードマンは「自由なexitこそ唯一の普遍的人権である」と宣言する。

これは人々のvoiceを集計するデモクラシーを否定し、そこから脱出しようとする思想である。本書は日本以外では出版されていないが、ウェブサイトで原文がすべて読める。パトリはミルトン・フリードマンの孫で、Seasteadingという自由な民営国家をつくろうとしている。



これはユートピアのようだが、歴史上の多くの国家を支えたのはexitの原理だった。ヨーロッパでは軍事費をまかなう重税に対して国民が議会でvoiceを組織して抵抗したが、中国では重税をきらう商人は他の地域にexitしたので税率は5~10%で、ヨーロッパの都市国家の30%以上よりはるかに低かった。

Voiceは政治的交渉なので紛争が発生するが、exitはパレート最適な経済行動なので、後者のほうが効率的だ。仮想空間ではインターネットのプラットフォームが、かつて国家のやっていた情報統制を民営化している。パトリがグーグルの技術者だったことは偶然ではない。

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