王国と楽園
アル・ゴアは1990年代から地球温暖化を警告し、21世紀には海面が6メートル上昇すると『不都合な真実』の初版で予言した。それが本当なら人類の脅威だが、現在のIPCC報告書では、今世紀末に60cm上がるかもしれないという程度である。

ところが環境原理主義は過激化し、化石燃料の禁止による資源インフレで世界経済が大混乱に陥っている。このようなカルトがヨーロッパで流行するのは、科学的には説明できないが、キリスト教的な贖罪意識だと考えると理解できる。

人類は無垢な自然を破壊し、楽園を失った。その原罪は永遠に消えないが、それを悔い改めることで救われるという発想は、パウロ書簡にも福音書にもない。それは4世紀にアウグスティヌスが確立し、その後ずっと正統派の教義となった。世界の本質が疎外されるという論理は、ヘーゲル以降の近代哲学の原理になった。

アガンベンが本書で批判するのは、原罪の概念が矛盾していることだ。アダムとイブの罪は、彼らが楽園を追放されたとき終わった。その罪が今も受け継がれているとすると、先祖から遺伝したと考えるしかないが、それは自由意思とは無関係である。自分がおかしてもいない罪を悔い改める必要はない――アウグスティヌスの論敵、ペラギウスはこう論じた。

それに対するアウグスティヌスの答は明快ではない。原罪はアダムとイブの罪だが、それは堕落した子孫にも受け継がれた罪深い人間本質である。人々の悪行はすべてこの本質の現前であり、教会しか癒やすことのできない病のようなものだという。これは自由意思を否定し、教会による秘蹟を正当化する護教論だった。

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