日経新聞の「スタグフレーションに身構える欧州」という記事に「気候変動は景気悪化の要因」という小見出しがついているが、本文には「脱炭素が欧米景気に与える影響についてモデル分析した」と書かれている。脱炭素が景気悪化をもたらすという話は日経の「カーボンゼロ」キャンペーンに都合が悪いので、整理部が改竄したのだろう。

この記事で紹介しているチェコ中銀のレポートが分析しているのは、脱炭素化の世界経済への影響である。具体的には2050年に炭素税を700ドル/トンまで上げ、化石燃料の消費を80%以上減らした場合のシミュレーションだ。

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脱炭素化による世界のGDPの変化(チェコ中銀)

その結果は上の図の右のように、炭素税だけのdelayed transitionでは、エネルギーコストが上がって消費が大幅に減るので、実質GDPがマイナス7%になる。青の部分は気候変動による洪水などの物理的ショック、赤が化石燃料削減のショックだが、気候変動ショックより脱炭素ショックのほうが大きい

そのショックを政府の補助金(オレンジの部分)で埋めると、左のようにプラスマイナスゼロになるが、物価が上がるので、長期的なスタグフレーションが起こる。今の資源インフレは、その序幕にすぎない。

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