来年度の当初予算は107兆円という空前の規模になったが、いまだに「もっと財政バラマキを」という声が強い。こういう人々は「緊縮財政」を悪の代名詞のように使っているが、それは誤りである。この点をブランシャールが、去年11月に日銀で行った前川レクチャーで明快に整理している。

スクリーンショット 2022-01-04 182514

図のように最近の実質金利(10年物国債)は日米欧でほとんどゼロだが、これが動学的に非効率(投資の配分が効率的でない)かどうかがマクロ政策にとって重要である。長期金利をr、名目成長率をgとするとき、動学的効率性の定義は

 r>g

だが、何をrと考えるかで不等号の向きが変わる。Mankiwなどの有名な論文以来、多くの実証研究ではrを資本収益率と考えたので、ほとんどの先進国は動学的に効率的とされたが、政府債務を考えるときは、rは国債金利と考えたほうがいい。

もう一つの条件は、ゼロ金利制約があるかどうかだ。これがない場合には金融政策で総需要が調節できるが、名目金利がゼロになると金融政策がきかなくなるので、財政・金融政策の有効性について次のような3つの場合が考えられる:
  1. r>g>0:動学的に効率的
  2. g>r>0:非効率的・低金利
  3. g>r=0:非効率的・ゼロ金利制約あり
1の場合には財政赤字は民間投資をクラウディングアウトして将来世代の所得を減らすので、緊縮財政が望ましい。金利は自由に動かせるので、総需要は金融政策で調節すべきだ。これが標準的なマクロ経済学の想定している環境だが、現在の世界はそれとはほど遠い。

続きは1月10日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)