石器時代の経済学 〈新装版〉 (叢書・ウニベルシタス)
人類(ホモ・サピエンス)の歴史を約20万年と考えると、そのうち新石器時代以降の定住社会は約1万年だから、その歴史の95%以上は狩猟採集社会だった。しかもすべての人類が定住したわけではなく、300年ぐらい前までは世界の人口の1/3が移動民だったと考えられている。

しかし今ではそういう移動民は、人類学の観察対象としてもほとんどなくなった。そこから「移動民は飢餓線上で生きていた」とか「獲物をとるために1日中走り回っていた」という先入観があるが、本書は人類学の実証データにもとづいて、それを否定する。

たとえばブッシュマンの6割が食糧生産にたずさわっているが、各人は毎週8~10時間ほど働き、1日暮らせる獲物がとれると仕事を終え、それを料理して食う。あとは世間話をしたり寝たりしている。つまり1日生きていけるだけの獲物をとると休み、それ以上は働かないのだ。これは毎週40時間労働する現代人より合理的な生活である。

もちろん現代人と比べるとブッシュマンが貧しいことは事実だが、それは歴史的に狩猟採集民が農民より貧しかったことを意味しない。ブッシュマンの栄養状態はよく、毎日2000kcal以上のカロリーを摂取していた。遺跡から出てくる骨から推測すると、移動民の身長は農民より10cmぐらい高かったと思われる。

だから「狩猟採集で食えなくなったから農業を始めて定住した」という通念は誤りである。遺伝的には人類の脳も体も移動生活に最適化しているので、定住には向いていないのだ。それが紀元前3000年ごろ逆転したのはなぜだろうか。

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