世界的にインフレ懸念が強まってきた。アメリカの消費者物価指数(CPI)上昇率は6.2%だが、日本は0.1%と異常に低い。企業物価指数は8.0%と40年ぶりの水準なので、これが波及してくるのは時間の問題だと思うが、なぜCPIはこんなに動かないのだろうか(テクニカル)。

その一つの説明は、屈折需要曲線のようなしくみで、需要が多少変動しても価格が動かなくなっていると考えることだ。多くの企業が価格を「定価」として固定すると、コストが上がっても価格に転嫁せず、需要が増えると増産する数量調整を行う。

これを次のような図で考えよう。これは経済学でおなじみのエッジワース・ダイヤグラムで、横軸が労働市場、縦軸が財市場。上に凸の曲線Tが企業の生産可能曲線、下に凸の曲線Uが消費者の無差別曲線、斜めの直線Lが相対価格である(Clower 1965)

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教科書では、価格Lで需要U2と供給Tが一致しないと、無差別曲線U1と生産可能曲線Tが接するように財の相対価格が上がって賃金が下がる。しかし数量調整が行われると、財の需要dgが供給sgより大きくても定価が上がらず、供給制約で超過需要が発生する。

他方、賃金の硬直性が大きいと、労働供給sfに対して労働需要dfが少なくても賃金が下がらず、超過供給(失業)が残る。ところが失業した労働者(sf-df)には所得がないので、その需要は有効需要にならず、不均衡が均衡として正当化されてしまう。

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