愛国・革命・民主:日本史から世界を考える (筑摩選書)
今が江戸時代の後期だとすると、衰退は200年ぐらい続くことになる。平和でゆるやかに衰退するのも悪くないと思うが、若い世代には耐えられないだろう。かつてそれを変えたのは明治維新だったが、それはいったいどのようにして成功したのだろうか。

私の学生のころは、明治維新は将軍の代わりに天皇が君主になった「上からの革命」だったので本物ではないと教えられたが、300の藩を廃止して統一国家にし、身分制度をやめて支配階級だった武士はほとんど失業したのだから大きな革命だった。

しかし革命のやり方は大衆蜂起ではなく、宮廷革命だった。当時の武士は人口の10%程度の特権階級で、その中で徳川藩から長州藩などに権力を移すだけというのが当初の多くの武士の了解だったので、大した変化だとは思われていなかった。むしろ最初は「攘夷」というナショナリズムが前面に出ていた。

ところが攘夷をやろうとすると、相手が強すぎて歯が立たない。ここで普通なら路線論争とか内紛が起こりそうなものだが、もともと目的がはっきりしていないので、攘夷を捨てて尊皇だけで行こうという西郷隆盛の合従連衡策にみんな乗ってしまう。

天皇が日本の正統的な君主であるということは、武士はみんな勉強して知っていたので、大政奉還には反対できない。最大の分かれ目は江戸城の明け渡しだったが、これも西郷隆盛と勝海舟の話し合いで無血開城してしまう。中国では王朝が代わるごとに前の王朝の宮廷を焼き払ったが、明治政府は江戸城を居抜きで譲り受けて皇居にしてしまった。ここに現代にも通じる秘訣がある。

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