日本人の年収が(ドルベースで)少ないという問題は、最近よく話題になる。たしかに図1のように、G7ではイタリアと並んで最下位である。

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図1 OECD諸国の平均賃金(OECD調べ)

その最大の原因は製造業の空洞化である。これはすぐ隣に中国という「世界の工場」をもつ国としては避けられない運命で、避けるべきでもない。

だが雇用が海外に奪われると、保護主義が強まるのが普通である。アメリカでは1990年代から「メキシコが雇用を奪う」という反発が強まり、トランプは大統領選挙でNAFTA脱退を主張した。ところが日本ではそういう経済ナショナリズムがあまり起こらない(ネトウヨがTPPに反対しても、誰も相手にしない)。

その一つの理由は、失業率が低いことだろう。9月の完全失業率は2.8%。昨年はコロナで3%近くに上がったが、ほとんど変わらない。これは雇用調整助成金などで、行政が社内失業を補助しているためだ。

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図2 職業別の有効求人倍率(ディップ総合研究所)

むしろ警備・建設・介護などの3K職場では、図2のように求人倍率が4~6倍という深刻な人手不足が続いている。この原因は明らかに賃金が安すぎるからだが、図1のように賃金は上がらない。それはなぜだろうか?

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