EV(電気自動車)推進の罠 「脱炭素」政策の嘘
テスラの時価総額が1兆ドルを超えた。日本の自動車メーカー9社の時価総額の合計の3倍である。このままでは製造業の最後の砦である自動車産業が世界に取り残される――という批判が強いが、本書はそれに対する反論である。

私も本書の指摘そのものは正しいと思う。EVはガソリン車でもハイブリッド(HV)でも日本車に負けたヨーロッパの偽装された保護主義である。今のEV(バッテリー駆動の電気自動車)の性能も価格も利便性も内燃機関に及ばず、消費者の選択としては2030年まではHVがベストだろう。

しかし2050年までの産業政策としてはどうだろうか。これはかつての大型コンピュータからPCへの転換に似ている。1981年にIBM-PCが登場したとき、それはおもちゃのようなもので、IBMもそれが実用になるとは思っていなかった。しかし半導体技術の驚異的な進歩(ムーアの法則)によってIBMは10年で倒産の瀬戸際に追い込まれ、メインフレームはPCに置き換わった。

これは一種のイノベーションのジレンマである。トヨタは、1980年代のIBMに似ている。それは当のトヨタが一番よく知っているだろう。このジレンマの原因は、顧客を無視して高度な技術を追求することではない。逆に、顧客に忠実なすぐれた商品を作り続けることで、その罠にはまってしまうのだ。

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