今回の総選挙は、何も争点のない退屈な選挙である。岸田首相が「成長より分配」を打ち出し、野党もバラマキを主張する。外交・国防では、野党も日米同盟を認め、何も対立点がなくなった。もう日本では政党政治は機能しないのかもしれない。

政党は身分制議会でできたものだ。イギリスでトーリー党とホイッグ党ができたとき、前者が地主を、後者がブルジョアを代表する党だった。当初は全体の利益に奉仕する議員が徒党(fraction)を組むことは望ましくないとされたが、エドマンド・バークは、利害の一致する人が政党(party)に結集することに積極的な意義を見出した。

バークは政党を「その連帯した努力により彼ら全員の間で一致しているある特定の原理にもとづいて国家利益の促進のために結合する人間集団」と定義した。社会の全員の利害が一致するまで待っていると何も決まらないので、特定の階級の多数決で決めるのが議会政治である。

ところが日本社会には、こういう利害を共有する大集団(階級)がない。日本社会の単位は人間関係で結びついた小集団(家)なので、それを結びつける共通点は現状維持だけなのだ。「ミスター現状維持」と呼ばれる岸田首相は、その意味では久しぶりに自民党らしい首相である。

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