入門・世界システム分析
岸田政権は何をしようとしているのかよくわからないが、格差の拡大が今の日本の最大の問題だと考えているようだ。その認識は正しいが、バラマキ給付金や所得税の累進課税といったゼロサムゲームでは問題は解決しない。格差は本質的にグローバルな問題だからである。

本書はウォーラーステインが晩年に自分の理論をやさしくまとめた講演で、格差を考える素材にもなる。従来の歴史学では「産業革命」で発展した資本主義が周辺の途上国を支配したと考えたが、ウォーラーステインは資本主義そのものがグローバルな中心/周辺の構造から生まれたと考えた。

これはフランクやエマニュエルなどの従属理論と呼ばれるマルクス主義の学説である。従属理論は新古典派経済学のように先進国が途上国を援助すれば開発によって豊かになり、世界の所得格差はなくなるという「収斂理論」を批判し、現実には格差が拡大している状況を説明する。

フランクが低発展の発展(development of underdevelopment)という概念であらわしたように、発展途上国を発展できない状況に置くことによって先進国の企業がそれを搾取するシステムである。その発想はマルクス主義だったが、今でも先進国が資本家階級で、途上国が労働者階級と考えると、グローバル化で途上国が搾取され、富が先進国の一部の富裕層に集中する現象を説明できる。

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