原子力と政治:ポスト三一一の政策過程
アゴラにも書いたように、核燃料サイクルがビジネスとして成り立たないことは、電力会社の経営者も技術者もわかっている。役所も2004年に「19兆円の請求書」を出したときからわかっていた。それなのに、なぜ20年近く止まらないのか。

それは「使用ずみ核燃料は青森県六ヶ所村の再処理工場に送る」という前提で、全国の原発が動いているからだ。これを知らないで2012年に「革新的エネルギー・環境戦略」で「原発ゼロ」を打ち出した民主党政権は、青森県知事に拒否権を発動されて挫折した。

青森県と電力会社の結んだ協定では、六ヶ所村でつくるプルトニウムは、他に運んで核燃料として利用することになっていた。しかし原発ゼロにするなら核燃料サイクルもなくなるので、再処理は必要ない。六ヶ所村にあった約3000トンの核廃棄物は「すべて発電所に送り返す」と青森県知事は通告したのだ。おかげで民主党政権は「戦略」を閣議決定できなかった。

もし河野太郎氏が首相になると、同じ問題に直面するだろう。彼が「核燃料サイクルをやめる」と決めると、青森県は「使用ずみ核燃料を送り返す」と通告するかもしれない。河野氏は民主党政権と違ってこの分野のエキスパートだから、その対策は考えているはずだ。

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