陸と海 世界史的な考察 (日経BPクラシックス)
地球の表面の7割は海だから、それは本当は「水球」と呼ぶのが正しい。農業社会では、人々の生活は土地に全面的に依存していたため、戦争は陸の中で行なわれたが、それを海に拡大したことが、イギリスが近代化の競争の中で勝者になった最大の原因だった、とカール・シュミットは考える。

ヨーロッパで海を舞台に活躍したヴェネチアの船はオールでこぐものだったが、16世紀にオランダが帆船を開発し、航海術が大幅に進歩した。これによって長距離の航海が可能になり、スペインやポルトガルなどが大西洋を渡って新大陸を開拓したが、最終的に大西洋を制したのはイギリスだった。それを実現したのは海賊であり、彼らが国営化されてイギリス海軍になった。

大陸諸国の戦争は一定の陸地を奪い合うゼロサム・ゲームだったが、大英帝国は世界の海をほぼ一国で支配し、経済の中心を陸から海に広げる空間革命を実現した。それがイギリスが資本主義のリーダーになった原因であり、18世紀以降の産業革命はその結果である。

陸地に依存しないで世界を自由に動くことが資本主義の本質なので、領土に依存した主権国家システムとは矛盾していた。国王や領主は資本を一国にとどめて課税しようとするが、資本は税の安い国に逃げ、高い関税をかけた国は貿易競争で負ける。それが現代にも起こっていることだ。

続きは9月6日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)