リスク、不確実性、利潤 (単行本)
20世紀の経済学の古典の、100年目の新訳である。リスクや不確実性の意味について本書の提起した問題には、いまだに答が出ていない。拙著『古典で読み解く現代経済』から紹介しよう(原著はセントルイス連銀のウェブサイトからダウンロードできる)。
------

リスクというのは、サイコロとかコイン投げのように、母集団がたくさんあって、どういう確率で何が起こるかがよくわかっている事象です。これは事象の数を母集団で割るだけで簡単にリスクの確率は計算できます。客観的に確率がわかっているので、保険とか金融商品でヘッジすることができます。それに対して不確実性というのは、同じことが二度と起こらない。例えば北朝鮮からミサイルが飛んでくるかどうかとか、新製品がヒットするかどうかというのは、前例がないのでわからない。
 
ブッシュ政権の国防長官だったドナルド・ラムズフェルドの言葉に、known unknownsとunknown unknownsという区別があります。「わかっている未知数」と「わからない未知数」とでも訳せばいいのでしょうか。この分類でいうと確率のわかっているリスクはknown unknownsですが、起こるかどうかがわからない不確実性はunknown unknownsです。
 
でもわからないということは、いいことでもあります。リスクは保険のような方法でヘッジでき、保険金をどう計算するかはわかっているので、あまり大きな損をすることもないが大きな利益を出すこともできない。リスクはコモディタイズ(日用品化)しているわけです。
 
他方、不確実性は予測できないので、大きく当たればイノベーションになるが、大きく外れると金融危機が起こる。もうけても損しても非常に大きいということが不確実性の特徴です。しかも、それを客観的に測る物差しがないので、経営者が判断するしかない。そこに経営者の役割があるというのがナイトの主張です。

続きは8月23日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)