世界はありのままに見ることができない なぜ進化は私たちを真実から遠ざけたのか
大した本ではないが、忘れないうちにメモ。本書のメインテーマは「人間の知覚は実在をありのままに見るためではなく、生存に適したものだけを見るように進化した」というFBT(Fitness Beats Truth)理論だ。

理系には素朴実在論を信じている人も多いので、それに対するアンチテーゼかもしれないが、哲学の世界ではヒュームあたりで終わった話である。行動経済学みたいな実験が多いが、こういうバイアスが生存に有益だという推論は実証する価値がある。

後半は量子力学の観測問題のおさらいで、これを著者はITP(Interface Theory of Perception)と呼んでいる。中身はそれほど新しい話ではなく、ベルの不等式が証明されたという話である。

…といっても文系の人には何のことかわからないだろうが、量子力学の教科書でおなじみの2スリット実験と同じである。昔は単なる思考実験だったが、最近日立が本当に電子を1個ずつ発射して証明したらしい。

電子を発射すると、最初は図のbのように1個ずつ痕跡ができるが、電子が増えると図のdのように干渉縞ができる。電子は1個だけなのに、干渉が起こるのだ。この現象は人間が電子がどっちのスリットを通ったか観測すると起こらず、電子は古典的な粒子として観測される。

fig2

これは直観には合わない。人間の認識が世界を決めるなら、私が目をつぶると、世界は消滅するのだろうか。それは理論的にはありうるというのが、最近の物理学の答らしい。ニュートンもアインシュタインもシュレーディンガーも当然と考えた時間と空間の一義性という前提が、間違っているかもしれないという。

続きは8月9日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。