明治維新の意味(新潮選書)
明治維新は、世界史でもまれな奇蹟だった。アジアの東端の発展途上国だった日本がほとんど内乱なしに「無血革命」をなしとげ、驚異的なスピードで近代化に成功したのはなぜか――本書はこの古い問いに対して新しい答を出しているわけではないが、バランスのとれた概観である。

第一の要因は、江戸時代の長い平和の中で成熟した官僚機構である。幕末に活躍した幕府の官僚は、勝海舟や川路聖謨など、下級武士や農民の出身で、身分制度は実質的に崩れていた。そういう実力主義の中で、下級武士が実権を掌握する「宮廷革命」として明治維新は起こった。

第二の要因は外圧である。中国がヨーロッパ諸国に敗北したことは、当時のエリートにとっては衝撃だった。彼らは軍人だったので、ペリーの黒船を見ただけで、戦争をしても勝てないことを即座に理解した。その後も政府の指導者が1年以上ヨーロッパに視察に行き、西洋のシステムを丸ごとコピーした。

第三の要因は天皇である。尊王攘夷というのはスローガンにすぎず、明治政府の指導者がそれを信じていたわけではないが、各藩を超えた「日本」という国家の存在を民衆に意識させる記号として天皇を利用した。明治政府の実態は薩長の藩閥政権だったが、それを儒教的な秩序で正統化することに成功した。

しかしこの制度設計は内乱を指導した元勲のカリスマ性に支えられていたので、その中心だった大久保利通や伊藤博文が暗殺され、山県有朋が世を去ると、硬直化した官僚機構を統合する権威が失われ、国のバランスが狂ってゆく。

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