G7の財務相会合共同声明で、「15%以上のグローバル・ミニマム課税にコミットする」と表明した。これは法人税を引き下げる「租税競争」をやめ、15%以下には下げないという課税カルテルだが、その有効性は疑わしい。

chart

図のように世界の法人税率は、この40年、一貫して下がっている。特にG7の共同声明と無関係なアイルランドの法人税率は12.5%であり、グローバル企業のペーパーカンパニーが集まっている。

たとえばアイルランドにあるGoogle Ireland Holdingsはアルファベットグループの広告・検索技術に関する知的財産権を保有しているが、同社の資産管理会社はバミューダ(法人税ゼロ)にあるため、法人税は払っていない。同じくアイルランドにあるMicrosoft Round Island Oneは、昨年3150億ドルの売り上げがあったが、バミューダの「税務上の居住者」なので納税額はゼロだった。

無形資産が企業の最大の資産になった時代には、法人税の低い国に企業が登記上の本社を置くことは容易になった。これを課税カルテルで逆転させるのは無理である。アイルランドが税率を上げても、バミューダに本社を移転すればいい。国内規制で海外投資を規制することはできるが、そんな国からグローバル企業は出て行くだろう。

法人税から炭素税へ

正しい解決策は、法人税を廃止することだ。これは20年前にミルトン・フリードマンなど200人以上の経済学者が、OECDのタックスヘイブン規制についてブッシュ政権に提言したことである。この公開書簡はこう書いている。
  • OECDのねらいは課税カルテルである。各国が効率的な課税を競う租税競争は、自由経済にとって望ましい。
  • 保護主義は国際的な資金移動を阻害し、世界経済を収縮させる。
  • タックスヘイブンを規制しても、非合法な資金は地下に潜るだけで、かえって捜査は困難になる。
  • 法人税は不合理な二重課税であり、そうした税制の歪みが租税逃避を引き起すのだ。
日本の法人税をゼロにしたら、GAFAMの世界本社は日本に集まるだろう。問題はその代わりの財源である。法人所得税をキャッシュフローベースの法人消費税(DBCFT)に変えようというのがAuerbachなどの提案だが、法人税を廃止して消費税を上げると、4%の増税が必要である。

これは政治的に困難なので、炭素税に代えるのはどうだろうか。間接税という意味ではどっちも同じだが、消費税が消費を抑制する副作用があるのに対して、炭素税はCO2排出を抑制する望ましい効果があり、政治的に通りやすい。環境省の進めている「カーボンプライシング」の中身も炭素税である。

いま日本のエネルギーにかかっている税(自動車重量税など)は合計4.8兆円で、これは炭素税に換算すると4000円/トンである。これに8000円/トンの炭素税をかけると9兆円の増収になり、法人税収の穴を埋めることができる。これは炭素税としてはEU平均程度だが、炭素税には野党も反対しないだろう。

財界も税収中立なので反対しないだろうが、「今でも日本は実質的な炭素税を負担している」という不満に対しては、既存のエネルギー課税4000円を炭素税に換算すればいい。増税分と合計すると1.2万円で、これはフィンランド(1.5万円)やスウェーデン(1.2万円)に匹敵する世界最高水準だ。CO2排出46%削減には、これぐらい必要だろう。