まもなく来年度予算の骨格となる「骨太の方針」が出るためか、永田町では「積極財政」の提案がいろいろ出ている。5月31日に開かれたれいわ新選組などの消費減税シンポジウムで驚いたのは、社会保障の専門家である鈴木亘氏が出席して「消費税は逆進的だ。所得税や法人税を上げればいい」とナンセンスな話をしていることだ。

クロヨンなどと呼ばれるように、自営業者の所得の捕捉率は低い。「法人税を累進税率にしろ」などという人がいるが、企業の7割は赤字法人で課税されないので痛くもかゆくもない。法人税こそ不公平で逆進的な税なのだ。消費税は赤字法人でも年金生活者でも払わないといけない税だから、税金をごまかしたい自営業者や政治家にきらわれるのだが、これにサラリーマンが賛成するのがわからない。

一般会計の社会保障関係費35.8兆円のうち21.7兆円をまかなっている消費税が5%になると、10兆円余りの歳入不足が出る。それを埋める方法は、次の三つのうちのどれかだ。

 A. 社会保険料の引き上げ
 B. 所得税・法人税などの増税
 C. 国債の増発

社会保障と財政の危機 (PHP新書)
このうち、いちばん楽なのはAである。社会保険料は源泉徴収で、その引き上げは国会の承認も必要なく厚労省令だけでいいので、減税分は取りやすいサラリーマンから取る。つまり消費減税とは、所得を100%捕捉されるサラリーマンから、税金をごまかせる自営業者への所得移転なのだ。

それは鈴木氏も知っているはずだが、本書では「社会保障関係費の公費負担をなくして100%自己負担にしろ」という。そんなことをしたら、社会保険料は(本書も計算しているように)ほぼ2倍になる。こんな荒唐無稽な案を前提にして消費減税したら、後戻りできなくなり、社会保障は破綻してしまう。

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