このごろMMTが元気だ。これはアメリカでは誰も知らないマイナーな理論だが、日銀が国債の買い取りで(結果的に)MMTを実験したので、日本で流行した。昨年のコロナ対策では世界中で巨額の給付金がばらまかれ、大インフレになるのではないかと心配されたが、インフレにならなかったため、最近はアメリカでも注目され始めた。

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日本でも昨年は100兆円以上のコロナ対策費がばらまかれたが、何も起こらなかった。しかし昨年大丈夫だったからといって際限なくバラマキを続けると金利が上がる。それを日銀が買い支えるとマネタリーベースが増え、インフレになる「臨界点」が来る。

ところがMMTではこれをどうしていいかわからない。MMTには(その名と違って)金融理論がないからだ。ケルトンは「財政政策でコントロールできる」というが、急に給付金を止めることはできないし、増税もできない。財政政策には、議会の承認が必要だからだ。

では給付金の額を金利や物価に合わせて変動させてはどうだろうか。たとえば全国民に毎月1万円を給付し、その財源はすべて国債で調達し、日銀がすべて引き受ける。何も起こらなかったら2万円、3万円…と増額し、インフレになったら日銀が買い入れをやめ、給付も自動的に止める。

これはフィッシャーの提案したSEFFを長期化し、定額部分と変動部分の「2階建て」にするものだ。正確にいうと給付つき税額控除だが、これはネーミングが悪いので変動ベーシックインカムと呼ぼう。

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