メルケル 仮面の裏側 ドイツは日本の反面教師である (PHP新書)
アンゲラ・メルケルは東ドイツの牧師の家庭に生まれ、科学アカデミーに就職したが、ベルリンの壁の崩壊でDA(民主主義の勃興)という小政党の結党メンバーになった。これは「改良社会主義」を志向する党で、それが東西ドイツの統一でCDU(キリスト教民主同盟)に吸収されたために彼女はCDUの党員になったが、その政治信条は社会主義的だった。

メルケルの実務能力は高かったので、CDUの中でコール首相の腹心として頭角を現し、副報道官としてスピーチライターになった。CDUは親米保守の立場だったが、当時のドイツではイデオロギーより統一の混乱を収拾することが最大の課題だった。党の実務を掌握したメルケルは東西バラバラの政治と多くの党の合従連衡の中で、派閥抗争を巧みに乗り切って副党首、党首、そして首相と順調に出世した。

その中で封印していた社会主義的な信念が、首相としての権力を確立した2010年代に出てきた。2011年の原発ゼロ、2015年のシリア難民の無制限受け入れは、その当時は世論に歓迎されたが、ドイツ経済の重しになった。

それはメルケルの左傾化というより、今までかぶっていた仮面を脱ぎ捨て、東ドイツ時代の社会主義に回帰しているのではないか、というのが著者の見立てだ。これを読んで、星新一のショートショート「雄大な計画」を思い出した。
三郎という青年がR産業の入社試験を受けたとき、社長から「R産業のライバル会社のK産業にスパイとして入社してほしい」と頼まれ、K産業に入社した。三郎は異例の昇進を果たして重役の娘とも結婚し、とうとうK産業の社長になった。それを見てR産業の社長は「計画どおりになったから帰ってこい」と言ったが…

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