False Alarm: How Climate Change Panic Costs Us Trillions, Hurts the Poor, and Fails to Fix the Planet (English Edition)
グレタ・トゥーンベリは「私たちは大量絶滅の始まりにいる」と叫び、国連は「残された時間はわずかだ」と警告し、日本政府はグリーン成長戦略を発表した。そこでは地球温暖化は人類に破滅をもたらすと想定しているが、それは本当だろうか。本書は具体的なデータで、こういう終末論を反証する。

「カーボンニュートラル」を目標にする計画が「グリーン」と名づけられているのは皮肉である。炭素は植物の栄養であり、それが増えると森林は増えるからだ。過去35年間の温暖化(CO2増加)で世界の森林はオーストラリアの面積と同じぐらい拡大し、今後も大気中のCO2が増えると、2100年までに50%近く拡大する見通しである。地球はますますグリーンになり、農産物の収穫も大幅に増えるのだ。

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地球上の植生の面積
温暖化で死者が増えるというのも逆である。アメリカの死者のうち凍死など寒さで死ぬ人は6%以上で増えているが、熱射病など暑さで死ぬ人は0.5%で減っている。地球が温暖化すると寒さで死ぬ人が減り、シベリアにも人が住めるようになる。

では何が問題なのだろうか。温暖化で確実に起こるのは海面上昇である。IPCC特別報告書は「海面が10cm上がると海抜以下になって洪水のリスクにさらされる人が最大1000万人増える」というが、今でも世界で1億1000万人が海抜以下に住んでいる。東京だけで150万人が海抜ゼロメートル地帯に住んでいるが、洪水のリスクはない。堤防があるからだ。

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世界の気候災害の死者

世界の気候災害の死者は、図のようにこの100年間で96%減った。それは地球が寒冷化したからではなく、堤防などのインフラ整備が進んだからだ。カーボンニュートラルのコストはそれよりはるかに大きいが、日本が地球の平均気温を下げる効果は0.01℃以下である。

「グリーン投資」は幻想だ

そのコストはどれぐらいか。「グリーン投資」で脱炭素化と経済成長を両立できると日本政府はいうが、脱炭素化が今より低コストなら企業はすでにやっているはずだ。石油危機以降の半世紀で、日本企業はそういう省エネ技術を開発してきた。それを超えて政府が企業に強制する投資の収益はマイナスなのだ

わかりやすいのは、化石燃料に比例してかける炭素税だ。カーボンニュートラルを決めたニュージーランドの試算では、2050年までの平均で6万円/トン。日本だと、これだけで78兆円である。

炭素税は政府の収入になるので、マクロ経済的にはプラスマイナスゼロだが、エネルギー効率が落ちてGDPが下がる。そのコストを推定するにはマクロ経済モデルが必要だが、本書ではスタンフォード大学のEMFモデルを使って、全世界でパリ協定を完全実施するコストはベストケースでも2030年までに毎年1兆ドル以上と推定している。

その効果はどれぐらいか。国連の概算によると、参加各国の約束を完全実施して削減できる炭素排出量は64ギガトン。それを2100年まで延長しても540ギガトンだが、2℃目標を実現するには5340ギガトン、1.5℃目標には6410ギガトン必要で、今の政策を世界中で合計してもその1%しか削減できない。排出実質ゼロでパリ協定の2倍削減できると想定しても1000ギガトン。カーボンニュートラルでは2℃目標さえ実現できないのだ

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日本のコストは1200兆円以上

日本の状況も同じだ。経産省の外郭団体、地球環境産業技術研究機構が計算した80%削減のコストは、毎年43兆円~72兆円。そのコストは30年間で1200兆円以上である。グリーン成長戦略には、こうしたコスト計算がまったく書いてない。それが不可能であることを経産省は知っているからだ。

その資料には「発想の転換、変革といった言葉を並べるのは簡単だが、 実行するのは、並大抵の努力ではできない」と書かれ、最初から完全実施するつもりはない。年末に大急ぎで出したのは、来年度予算の要求のためだ。財務省も「グリーン」というスローガンには弱い。

世の中から化石燃料をなくすことはできないし、その必要もない。80年後に今より気温が2℃上がっても、東京都の気温が宮崎県ぐらいになるだけで、雪国の雪はなくなるだろう。カーボンニュートラルのメリットはほとんどないが、そのコストは天文学的である。