医師会などの騒いでいる「医療崩壊」は、アゴラでも書いたように医療資源の絶対的な不足ではなく、医療資源の配分のゆがみである。これは経済問題としては単純で、安倍政権の専門家会議の方針のように、感染症対策の目的はウイルスの撲滅ではなく流行のピークを下げることである。

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上の図の横軸を場所と考えると、ある地域の感染が「医療対応の限界」を超える場合には、その患者を他の地域に移すか、他の地域からの応援で片寄りをフラットにしてピークを下げればいい。ところが日本の医療法では、行政が民間病院の医療資源を配分できない。

この問題を解決する便法として厚労省が使っているのが指定感染症だが、これも指定医療機関にコロナ患者の受け入れを強制できない。感染症法19条は「都道府県知事は感染症指定医療機関に対し当該患者を入院させるべきことを勧告することができる」と定めているだけで、指定医療機関がその勧告に従う義務も罰則もない。

いまだに「ロックダウンしろ」という人がいるが、日本ではヨーロッパのようなロックダウン(罰則つきの外出禁止令)はできない。特措法45条は都道府県知事が住民に「みだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる」と定めているだけだ。

ロックダウンは「移動の自由」という基本的人権の侵害なので、非常事態条項がない憲法では不可能だ。立法論としてはありうるが、やるなら憲法を改正するしかない。その歯止めなしで政府が恣意的にロックダウンすることは危険である。

要するに日本では、非常事態に政府が民間に命令できる根拠法が何もないのだ。これは憲法で戦時体制を想定していないことが原因だが、本物の危機になったとき、これで大丈夫なのだろうか?

「コロナ患者の診療拒否」がタブーになっている

最大のボトルネックになっているのは、一般病院を含むコロナ患者の診療拒否である。日本は国民皆保険で国が医療費の7割以上を負担しているのに、病院の8割を占めるのが民間病院で、医師会の政治力が強く、彼らがコロナ患者を受け入れると患者がよりつかなくなるので診療拒否するのだ。

これについては昨年末に厚労省が、医師法の「応召義務」の解釈について「第1類・第2類感染症相当の患者は拒否してよい」という意味の通知を出したため、2類相当の指定感染症であるコロナの診療を拒否する正当な理由ができてしまった。

この点で指定感染症が逆効果になっている。法改正となると大変なので、官僚としては指定感染症でグリップをきかせておこうというのは、当面の対策としてはわかるが、一時しのぎである。

本筋は特措法を改正して非常時の診療拒否に罰則(たとえば健康保険指定医療機関の指定取り消し)を設けることだが、特措法31条の「要請」を拡大解釈して(飲食店にしているように)命令に近い要請をすることも考えていいのではないか。