アメリカの政党政治-建国から250年の軌跡 (中公新書)
アメリカ大統領選挙ではようやくバイデンが勝利宣言したが、彼が誓ったように「分断するのではなく団結させる大統領」になれるかどうかはわからない。トランプはアメリカ社会の分断の原因ではなく、その結果だからである。

アメリカの政治システムは「三権分立」といえば聞こえはいいが、バラバラである。大統領には法案提出権も予算編成権もなく、宣戦布告もできない。立法するのは議会だが、上下両院のねじれが恒常化している。今回の下院議員選挙では民主党が過半数を守ったが、上院では共和党が過半数を取り、今後もねじれが続く見通しだ。

民主党も共和党も、他の国の政党とはかなり異質な組織である。トランプは2016年の大統領選挙に出馬したとき共和党員ではなく、サンダースも民主党員ではないが、予備選挙に勝てば大統領候補になれる。組織も指揮系統も地域ごとにバラバラの個人の集合体なのだ。

この状況を変え、大統領の権限を強化したのがルーズベルトだった。彼は戦時体制で「ニューディール連合」をつくり、議会の多数派を民主党が占めた。戦後アメリカ経済は急速に成長したので、その恩恵を貧困層に分配する「大きな政府」が半世紀にわたって主流になり、共和党が上下両院で多数派になったのは2回だけだった。

しかしベトナム戦争やスタグフレーションで1970年代には政府への信頼が失われ、レーガン大統領が「小さな政府」を提唱して、共和党が連邦議会の多数派になった。他方で貧富の格差が拡大し、オバマ大統領がマイノリティの支持を集めて当選したが、連邦議会は共和党が多数のままで、提出された法案の成立率はわずか2.7%に低下した。

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