あまり注目されていないが、今年に入ってマネーストック(M2)が前年比8%以上増えた。この原因はコロナ対策で数十兆円の給付金が支給されたことだが、消費者物価指数はほとんど反応していない。このように大幅にマネーストックが増えたのは初めてではない。図のように1980年代後半にもM2は10%以上増えたが、物価はほとんど上がらなかった。

22704.20200923154110
マネタリーベースとマネーストック(M2)の前年比増加率(日銀)

この図からもう一つわかるのは、マネタリーベースとマネーストックの増加率にはほとんど相関がないということだ。2013年以降、日銀の黒田総裁はMBを激増させたが、M2は反応せず、物価も上がらなかった。

これは80年代後半にM2の増加率がMBを上回ったのと対照的である。当時は公定歩合が自然利子率より低かったため、貨幣の大幅な超過需要が発生してM2が増えた。それに対して2000年代以降はゼロ金利になって貨幣需要が増えなかったので、日銀の量的緩和には効果がなかった。

しかしM2が80年代後半以来の増加率になったのは危険信号である。まだコロナ不況で総需要が低迷しているので物価は上がらないが、需要が回復すると資産バブルが起こる可能性がある。80年代後半も円高不況で物価はほとんど上がらなかったが、そこには落とし穴があった。

続きは9月28日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)。