菅官房長官の消費税増税発言がネットで炎上しているが、消費税反対派は「消費税を減税して法人税を上げろ」といっている。これはまったくナンセンスな話で、今でもアジアで最高の法人税率をこれ以上あげると、国内に製造業はいなくなる。

Ehox2MNVkAUtWIe

「大企業優遇の法人税を上げて労働者に分配しろ」というが、法人という人はいない。法人税は最終的には、労働者か債権者か株主が負担するのだ。その負担比率は企業によって違うが、約7割は労働者が負担している。法人税を上げると工場は海外に移転し、雇用喪失のコストは労働者が負うのだ。

世界的な課題になっているのは、法人税の改革である。その課税対象となる法人所得は売り上げから経費を引いた利益だから、どんな巨大企業も国内利益が少ないと課税されない。ソフトバンクグループ(SBG)の今年3月期の営業利益は2.3兆円だが、法人税は500万円しか払っていない。

企業の利益ではなくキャッシュフローに課税する

それを改めて法人税(法人所得税)を廃止し、企業の利益ではなく営業キャッシュフローに課税する改革が必要だ。これは企業に課税しないということではなく、消費税率を(たとえば)20%に上げてキャッシュフロー税にするのだ。SBGの営業キャッシュフローは1.1兆円だから、税額は2200億円になる。

これはそれほど奇抜な提案ではなく、EUの付加価値税(VAT)やアメリカ共和党の提案した国境調整税(DBCFT)と同じ考え方で、クルーグマンからフェルドシュタインまで、ほとんどの経済学者が賛成している。これに従って日本の法人税改革案を考えると、次のようになる。
  1. 法人の利益ではなくキャッシュフローに課税する
  2. 減価償却を廃止し、投資はすべて経費として控除する
  3. 消費地で課税し、海外の利益には課税しない
  4. 金利にも配当にも課税する
法人所得は帳簿上の利益なので、操作しやすい。日本の法人の7割は赤字で、個人事業主の大部分は経費を過大に計上している。大企業は法人税の低い台湾やシンガポールに工場を移転しているが、キャッシュフロー税になると、そういう法人税の「さや取り」はできなくなる。製品を輸入して販売したら、国内で課税されるからだ。

投資のキャッシュフローは一挙に生じるが、減価償却はそれを期間配分して課税するので、企業の利益を大きく左右する。税務当局の裁量も大きく、租税特別措置のほとんどは償却を大きく認めて税額を減らすものだが、このような抜け穴もなくなる。

今の法人税では支払い利息を経費として控除する一方、株主への配当には課税するので、企業は株式より借り入れで資金を調達するバイアスをもち、株主は法人税と個人所得税を二重に負担する。

これは法人税が企業と株主に二重課税しているためなので、それをキャッシュフローに統一すると、金利も配当と同じ扱いになる。銀行貸し出しは減るが、投資は促進される。

これは言い換えると法人税を消費税に一本化する改革なので簡素で透明だが、政治的には困難である。特に税金のごまかしができなくなるので、自民党の集票基盤である中小企業が強く反対するだろう。だからこそこの改革は必要なのだ。