昨今の日本人のコロナに対する反応をみていると、日本人のゼロリスク体質は、ほとんど遺伝的なものだという気がする。もちろん文化が遺伝することはありえないが、最近の進化生物学では、文化的遺伝子(ミーム)は単なる比喩ではない。

たとえば最近よく話題になる「ファクターX」について、それが遺伝的な自然免疫だという説と、東アジアの「風土病」だという説がある。両者の中間として、東アジアの人々は毎年、中国から出てくるコロナ系のウイルスにさらされ、コロナに対する訓練免疫ができるというのが、宮坂昌之氏の仮説である。

日本人のリスク回避体質も、かなり長い(少なくとも江戸時代以降の)免疫力のようなものだ。1930~45年の「特異期」を除くと、紛争をきらい平和を好む傾向は一貫している。それは集団の中でリスクを好む人を病原体のような異物として淘汰し、平和を守る「自己免疫」ができている。

そう考えると、憲法が改正できない理由もわかる。自衛権はあるが軍はもたないという論理的に成り立たない憲法を75年にわたって支えてきたのは、日本人のゼロリスクの遺伝子なのだ。それを変えようとした安倍首相も挫折し、彼が引退するまでに改正は不可能である。そのあと改正する首相はいないだろう。平和憲法は、日本人の「システム1」に刷り込まれてしまったからだ。

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