ロックダウンには、新型コロナの被害を減らす効果があったのだろうか。科学者の評価はわかれているが、おもしろいのは、イギリスではコロナ以外の呼吸器疾患がロックダウンで減ったというデータだ。


図のように上気道(upper respiratory tract)感染症(黄)や下気道感染症(赤)の感染率が、3月14日以降のロックダウンで大きく減ったが、コロナの感染率(緑)は増えた(インフル(青)はやや増えた)。この最大の原因は、外出禁止でコロナ以外の患者が検査を受けられなくなったためと推定されている。

日本でも同じ傾向がみられる。呼吸器疾患だけでなく、感染性胃腸炎の患者まで今年の第3週から激減し、第16週(3月22日~)にはピークの1割程度になった。ボトムを記録したのは、皮肉なことに緊急事態宣言の出た4月7日で、その後やや増えている。このデータは「接触削減で感染者が減った」とも解釈できるが、コロナだけ増えたのはなぜだろうか?

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東京の感染性胃腸炎の新規感染者数の推移(東京都感染症情報センター)

その最大の原因は、やはり検査がコロナに集中したためだろう。「コロナかそうでないか」の検査が優先され、それ以外の感染症はカウントされなくなった。病院が「三密」とされたため、人々が恐れて外来に行かなくなった。医療スタッフがコロナに動員されたので、ほとんどの手術が延期された。

要するに医療は崩壊したのではなく、コロナだけに片寄ったのだ。これは世界的にみられる傾向だが、これで救われた命と失われた命のどっちが大きいかはまだわからない。

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