コロナ騒動は、誤った学説のもたらした人災だった。人類の60%が感染するまで感染爆発が終わらないという理論にもとづいて、ヨーロッパではロックダウンが行われたが、感染率20%未満で流行は収束し、日本では1%未満で収束した。

免疫学の宮坂昌之氏は、世界中どこでも同じ数学モデルを当てはめる集団免疫理論を批判している。

個体レベルではウイルスに対する防御は2段構えであって、自然免疫と獲得免疫がウイルス排除に関与します。もし自然免疫がうまく働けば、少数のウイルス粒子が侵入してきても自然免疫だけでウイルスを排除できる可能性があります。

実際、最近の研究結果から、自然免疫はさまざまな刺激によって訓練され、強化されることがわかっています。例えば、結核ワクチンであるBCGは結核菌に対する免疫だけでなく、一般的な細菌やウイルスに対する反応能力を上げることが指摘されていて、その作用機序として、BCGが自然免疫を強化・訓練することが示唆されています。

一部の人たちは自然免疫と獲得免疫の両方を使って不顕性感染の形でウイルスを撃退したのかもしれませんが、かなりの人たちは自然免疫だけを使ってウイルスを撃退した可能性があるのかもしれない。そのために多くの人は集団免疫が成立する前にウイルスを撃退したという可能性です。

素人の私が読むと、これはごく自然な説明だが、今まで感染症の専門家は特定の病原体に対応する獲得免疫だけを研究し、それを世界に普遍的なモデルとして一般化する傾向があったようだ。たとえば専門家会議の資料には「自然免疫」という言葉が一度も出てこない。

西浦氏は「Ro=2.5」を撤回した

これについてきのう西浦博氏は、Facebookで宮坂氏に次のように答えている。

西浦を含めて理論疫学者が言及しているRo=2.5だと、単純計算だと人口の60%が免疫を獲得しないと流行が自然に下火にならない、がそれは架空のものすぎる、と言うものである。

実はこれは全くもって御意であり、元々の私らのコミニケーションが悪い訳である。[…]

これは異質性に帰結する。同じRoでも年齢や社会構造、接触ネットワークによってFinal sizeは小さくなることがずっと知られてきた。

実際クラスター対策でも注目してきた1人あたりの感染者が生み出す2次感染者数のバラつきが大きいときは、Herd immunity[集団免疫]の閾値も低くなることが最近になってやっと示された。

年齢別の異質性もわかってきた。こちらでも60%でなくって、同じような条件で計算したら40%台で大丈夫である、ということである。

にゃんと、こういうことは最近になってやっと計算されて実装されつつある、ということである。私たちからも日本に流布しなければならないものだと認識している。そして、その異質性の原因は環境とか年齢だけでもなさそうであるので、私たちはいまその特定をしようと必死にやっている。

ここで西浦氏は、基本再生産数Ro=2.5で集団免疫の閾値が60%だという理論を「架空のもの」と認めている。つまりこれで計算した「42万人死ぬ」などのシミュレーションは間違っていたということである。

西浦氏はその問題を「異質性」を導入して打開しようとしている。これは直観的にいうと、最初にかかるのは高齢者など感染しやすい人だから、初期のRoは高く出るが、流行が広がるにつれて感染しにくくなり、実効再生産数Rtが小さくなるということだ。

ここで彼が4月に政治家やマスコミに売り込んだシミュレーションの前提となっているRoの値を自分で否定していることは重要である。こういう異質性を考えると、Roという概念は無意味になる。これはSIRモデルの計算で使う初期値で、変化率が一定でないと意味がないからだ。

BCGによって免疫機能に異質性がある場合も同じである。ヨーロッパのように自然免疫の弱い国で感染しても、日本で感染が拡大するとは限らない。西浦氏がドイツのRoを日本にも適用したことが、致命的な誤りだったのだ。