毎度お騒がせの「8割おじさん」西浦博氏が、今度は「新型コロナで42万人死ぬ」というシミュレーションを発表した。今度は厚労省クラスター対策班としての記者会見なので、これが政府の正式見解と受け取っていいのだろう。それにしては、あまりにもお粗末な計算である。

日本経済新聞によれば、彼のモデルでは実効再生産数を2.5と仮定した場合、60日後に重症患者が累計85万人になり、その49%(約42万人)が死亡すると予測している。

その中身はわからないが、疫学でよく使われるSIRモデルだとこういう結果が出る。これは次のような単純な微分方程式である。R0を基本再生産数、xを感染者、yを治癒者の人口比とすると、

 dx/dt=R0(1-x-y)x-x
 dy/dt=x

ここでx+yが十分小さいと仮定すると、次のグラフのようになり、西浦氏の図と一致する。ここでR0を突然80%減らすと、次の図の最下部のカーブのようになる。

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これは計算としては間違っていないが、現実のデータとまったく合わない。次の図は各国の累計死者の推移だが、世界最悪のイタリアでも300人(人口100万人あたり)程度である。日本の死者が62日後に42万人になるとすれば3300人(同)で、次の図のように世界の断然トップになる。

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世界各国のコロナ死者の人口比(札幌医科大学)

ここで接触を80%削減しても、42万人の死者が8万人になるだけだから、今のイタリアの2倍以上で、こんな感じだろうか。西浦氏のモデルの中身がわからないので正確なことはいえないが、荒唐無稽というしかない。

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