深刻なコロナ感染が心配されていたアフリカでは、ほとんど死者が出ていない。これは単に検査数が少ないという原因も考えられるが、結核の感染率と鮮やかな逆相関がある。これはBCG接種の効果も考えられるが、そもそも途上国にはいろいろな感染症があり、人々の自然免疫が強いことが考えられる。

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世界のコロナ感染率

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世界の結核感染率

コロナは予防接種を否定した先進国の盲点だった。ヨーロッパでBCGをやめたのは、1980年代には公衆衛生が完備し、結核の感染率が低くなって、危険な予防法(副反応のリスクがある)を使う必要がなくなったからだ。

感染症の専門家は警告していたが、SARSもMERSも幸いパンデミックにはならなかった。それはグローバルな人の移動がそれほど多くなかったからだ。しかし中国人観光客が世界中に大挙して押しかける時代には、コロナのような感染リスクは大きくなる。今回のような問題は、今後も起こるだろう。

コロナはヨーロッパの「原罪」

コロナは公衆衛生の考え方に大きな転換を迫っている。かつて感染症は害虫や病原菌を駆除して「撲滅」するものだったが、ウイルスを撲滅することはできない。それはかつては特定の地域の中で流行して終わるものだったが、今は世界中に広がるリスクがある。

それを防ぐには従来のように病原体を排除して社会を「無菌状態」に置くのではなく、むしろ多くの病原体に普段からさらして抵抗力をつけたほうがよい。アフリカでは毎年、500万人以上がウイルス性肝炎、結核、エイズ、マラリアで死んでいる。

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こういう強烈な感染症がいつも流行している地域では、コロナは感染症としてはかわいいものだろう。エチオピア出身のテドロスWHO事務局長が、当初コロナを軽視したのも、そういう事情があるのかもしれない。

ひるがえるとヨーロッパ人が新大陸を征服したとき、最強の武器は彼らの身体だった。アステカ帝国にスペインから来たコルテスの軍勢は600人しかいなかった。それが1年足らずの間にアステカを征服し、人口は1割ほどに激減した。この原因は戦争ではなく、スペイン人の持ち込んだ天然痘だったのだ。

ヨーロッパは感染症の多い地域で、多くの病原体の免疫をもっている人しか生存できないが、新大陸は数万年前に進化で分岐し、そこに住む人々は病原体の少ない環境で育ったため、感染症に弱かった。逆に新大陸からヨーロッパに「輸出」されたのが梅毒である。

こう考えると、コロナは汚れたヨーロッパ人がその汚れによって世界を征服したあげく、自分の汚れを除去したため、逆にかつての新大陸のように感染症に弱くなってしまったともいえる。コロナはヨーロッパの「原罪」へのウイルスの罰かもしれない。