日本の新型肺炎の感染者はまだ200人でリスクは小さいというと、「これから指数関数的に増える」という人がいる。それが無限に続くと患者数は無限大に発散するが、現実にはそういうことは起こらない。図のように今シーズンのインフルエンザも昨年12月に毎週約80万人でピークアウトし、今週は18万8000人だ。感染が拡大する原因は直観的にわかるが、それが終息するのはなぜだろうか。

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これを教科書的に説明してみよう。「新型コロナウイルスは感染力が強い」などというのは誤りで、ウイルスの感染力は環境によって大きく変化する。これは基本再生産数R0と書き、

 R0=β×κ×D

という式であらわされる。ここでβは感染確率、κは接触人数、Dは感染期間である。βは病気に固有の変数だが、中国のように不潔な国では高く、日本のように清潔な国では低くなる。Dは治療薬で縮めることができるが、今回のように治療薬がないときコントロールできる変数はκだけだ。感染は単純な指数関数で拡大するのではなく、R0は時間とともに変化する。

 R0>1:感染が拡大する
 R0=1:感染の拡大が止まる
 R0<1:感染が終息する

感染が拡大すると重症患者は死亡し、免疫を獲得する人が増えてβが下がる。そしてR0<1になると感染はピークアウトし、流行は終わる。それは全員が感染したときではなく、一定のクラスタ(集団)の中でR0<1になったときだから、感染初期にはクラスタを隔離する政策が有効で、感染国からの入国拒否も意味がある。

しかし今は国内の感染が始まったので、接触人数κを下げるしかない。これで時間を稼いでR0の増加を遅らせることが、今回の専門家会議の基本方針である。その目的は感染速度をゆるやかにして患者の発生を病院のキャパシティ内に収めることであり、感染をゼロにすることではない。

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