地球に住めなくなる日 「気候崩壊」の避けられない真実
アゴラで紹介したIEAのレポートは、色々な反響を呼んでいる。従来0.6℃から6℃まで大きな隔たりのあった温暖化予測(産業革命以降)が、最大でも3℃上昇に縮まったことは、各国の政策協調にとっても望ましい、とWSJは歓迎している。

だがベストセラー”Uninhabitable Earth”の著者Wallace-Wellsは困惑している。それでは「地球はもう住めなくなる」という彼の本が売れなくなるからだ。

これまで地球温暖化に悲観的だったIEAの予測が大きく変わった一つの原因は再エネ(特に太陽光発電)の爆発的な普及だが、もう一つの原因は天然ガスの急成長と石炭の減少である。2000年代から始まった「シェール革命」で天然ガスの生産量は倍増した。

cb
IEAの予想した1次エネルギー構成比(Carbon Brief

今後のエネルギー消費の増加の49%を再エネが占め、30%を天然ガスが供給するだろう。石炭の消費量は2014年をピークとして下がり始め、2030年には天然ガスが石炭を抜く、とIEAは予測している。同じころ再エネが原子力を抜いて非化石電源の主役になる。

これは人類にとってはグッドニュースだが、「このままでは人類は滅亡する」と騒いできたWallace-Wellsのようなアラーミスト(警告派)にとってはそうではない。今後2℃ぐらいの温暖化は、先進国では大した問題ではないからだ。
まず気温だけを考えると、東京では今まで100年で気温が3℃上がったが、それに気づいている人はいない。今後2℃上がると、2100年には鹿児島ぐらいの平均気温になるわけだが、そのときは3世代ぐらい交替している。われわれの曾孫が「東京は暑くなった」と思うことはないだろう。札幌は仙台ぐらいの気温になり、日本海側も雪が減って住みやすくなる。

東京は4m以上「海面上昇」した

確実に予想される唯一の変化は海面上昇だが、これも先進国では問題にならない。 次の図のように、東京では20世紀に地下水の汲み上げで最大4m以上も地盤沈下した。これは相対的に海面が4m上昇したということだが、護岸工事で対応してきた。60cm程度の上昇は大した問題ではない。

000015050

異常気象が増えるという問題も、温帯では大した影響がない。少なくとも日本ではこの100年、熱帯低気圧が増えたわけではない。温暖化で雨量は増えたが、雨そのものは問題ではない。人的被害も大きく減り、台風で何千人も死ぬことはなくなった。

ただし異常気象の経済的被害は増える可能性がある。都市化で多くの人が低地に集中して住むようになったからだ。これは自然現象ではなく社会現象であり、CO2削減よりインフラ整備に 金をかけたほうがいい。

他方、熱帯では大きな被害が出るだろう。Wallace-Wellsもいうように、気温上昇が3℃で止まるとしても、IPCCが中位シナリオ(RCP6.0)で予想している洪水や干魃の被害は出る。熱帯が住めなくなって「環境難民」が大量に出ることも予想される。

だが、それは途上国の開発援助の問題である。今でも感染症や水汚染は深刻であり、援助が必要だが、それは温暖化のように「セクシー」な問題ではない。だから先進国が温暖化対策と称して、途上国のインフラに投資することは意味があるかもしれない。