今年はマイナス金利が日本から世界に広がった年だった。これを受けて「金利なんか気にしないで政府がバンバン借金すればいい」というMMTが流行したが、これは単に金利をゼロと仮定しているだけなので、ゼロ金利を説明できない。

マイナス金利の原因を自然利子率の低下と考えるサマーズやブランシャールの長期停滞論が大きな影響をもつようになったが、彼らもマイナス金利そのものを是正する政策を提言しているわけではない。金融政策がだめなら財政政策でという発想は、80年前のケインズ理論とほとんど変わらない。当時ケインズは、こう論じた。
資本主義の金利生活者的な側面を、それが仕事を果たしてしまうと消滅する過渡的なものであると私は見ている。そして金利生活者的な側面の消滅とともに、資本主義に含まれる他の多くのものが変貌を遂げるであろう。(『一般理論』)
イギリス経済がだめになったのは、リスクを恐れる金利生活者のおかげで投資が不足したためだ、とケインズは考えていた。だから政府が投資する必要があるが、資本主義が効率的になってリスクがなくなると金利はなくなり、銀行は消滅する。

21世紀の資本主義は、ケインズの予想に似てきた。そこで重要なのは物的資本ではなく、情報や権利などの無形資本なので、金利は価値の尺度にならない。資本は過剰なので物的投資は大きくないが、付加価値は大きい。資本主義がケインズの予想していた道をたどるとすると、銀行の安楽死する日が来るのかもしれない。

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