ヒューマニズム考 人間であること (講談社文芸文庫)
本書の原著は1964年。半世紀以上たった復刊だが、今でも「ヒューマニズム」についての古典として読むに値する。Humanismは「人道主義」という意味で使われることが多いが、原義は聖書を研究する「人文学」という意味である。

ルネサンスのユマニスト(人文学者)は、中世の神学者が些末な論争に没頭しているのに対して「それはキリスト教と何の関係があるのか」と問いかけた。彼らはカトリック教会を批判したが、ルターやカルヴァンのような宗教戦争の指導者とも対立した。ユマニストの批判は聖書にもとづく人文主義的な批判であり、プロテスタントの教義とは必ずしも一致しなかったからだ。

それを象徴するのが、エラスムスの弟子カステリヨンとカルヴァンの対立である。カルヴァンは1553年、三位一体説を批判した神学者セルヴェを投獄し、拷問のすえ火刑に処した。これに対してバーゼル大学の神学者カステリオンは、批判者を処刑するのはカトリック教会の異端審問と同じだ、とカルヴァンを批判したため、教団から追放された。

宗教改革を実現したのはユマニストではなく、カルヴァンの教団の軍隊的な規律だったが、それはヨーロッパに果てしない宗教戦争を生み出した。その戦争を終わらせたのはユマニストの主張した寛容の精神だった、と本書は指摘する。

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