国会は5500万円の「桜を見る会」で大騒ぎだが、 年末に出る今年度の補正予算では真水で10兆円という数字が取り沙汰されている。これは自民党の二階幹事長と世耕参院幹事長が言及した数字だが、2012年以来の大型補正である。大不況でもないのにこんな大規模な財政出動が行われるのは異例だが、その背景には金融政策の挫折がある。

だが日銀の大規模な量的緩和のおかげで長期金利までマイナスになり、財政出動がやりやすくなった。マクロ経済的には、企業が大幅な貯蓄過剰になっている現状では、政府が金を使うのは合理的である。財政赤字が高金利やインフレを招くという批判は、マイナス金利では説得力をもたない。

かつて財政支出は政治腐敗の温床になると批判されたが、今は公共事業などの裁量的支出の比率は低下しており、一般政府でみると財政支出の半分以上を占めるのは社会保障である。これは長期の所得再分配であり、ケインズ的な財政政策にはなじまない。所得再分配を短期的にコントロールするしくみは可能だろうか。

理論的には可能である。いま政府のやっている「5%のポイント還元」を、すべての店舗に拡大して、全国民に配る「ヘリコプターマネー」にすればいいのだ。それを止めるのは財源と関係なく、たとえば「インフレ目標2%に達するまでポイント還元を続ける」と決め、その財源は日銀が国債を買い取ってファイナンスする。

続きは11月25日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。