アジア近現代史-「世界史の誕生」以後の800年 (中公新書)
本書の副題は「世界史の誕生以後の800年」。ここでは世界史が誕生したのは、チンギス・ハンがモンゴル帝国の初代カアンに就任した1206年である。それ以降モンゴルは中国から東欧に至るユーラシア大陸の大部分を版図に収め、世界史上最大の帝国を築いた。

これはウォーラーステインのいう近代世界システムより300年近く早いグローバリゼーションだったが、モンゴル帝国は200年足らずで崩壊した。中国では1368年に明が元を滅ぼし、中央アジアでは1370年にティムールがモンゴルを滅ぼし、ロシアでは1380年にモスクワ大公がモンゴルに勝利を収めた。

このようにあっけなくモンゴル帝国が崩壊したのはなぜかというのは明快な答のない問題だが、本書はそれを軍事帝国の限界と考える。モンゴルの最大の武器は馬だった。モンゴル兵は馬から弓矢を射て、歩兵との戦いでは圧倒的な強さを発揮した。チンギスやクビライは戦略家としても一流で、敵が戦わずして降伏することも多かったという。

しかしモンゴルには固有の文化がなく、征服した民族を同化できなかった。モンゴル軍に降伏すれば相手を殲滅することはなく、宗教や言語も元のままでよかった。モンゴル帝国の権威を示す建物はほとんど建設されなかった。こういうゆるやかな支配では、土着勢力が同時多発的に反乱を起こすと、少数派のモンゴル人が鎮圧することはむずかしい。

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