9条入門 (「戦後再発見」双書8)
憲法第9条をめぐる果てしない論争の最大の争点は、それが自衛権を放棄しているのかどうかである。その答は常識的に考えると明らかだ。およそ国家がその自然権たる自衛権を放棄することはできないので、日本国憲法も自衛権を放棄しているはずがない。

ところが憲法9条2項は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と明記している。これは素直に読むと、自衛のための戦力も保持しないと解釈するしかない。これは常軌を逸した規定だが、その原因は1946年2月にマッカーサーの書いたメモ(マッカーサー・ノート)にあった。その第2項目には、こう書かれていた。
国権の発動たる戦争は、廃止する。日本は、紛争解決のための手段としての戦争、さらに自己の安全を保持するための手段としての戦争をも、放棄する。日本はその防衛と保護を、今や世界を動かしつつある崇高な理想に委ねる。日本が陸海空軍を持つ権能は、将来も与えられることはなく、交戦権が日本軍に与えられることもない。
憲法草案を起草したケーディスは、これを非現実的と考えて「自己の安全を保持するための手段」という部分を削除しが、吉田首相は第9条は「自衛戦争も放棄したものだ」と答弁した。この捨て身の平和主義が今に至る混乱の原因だが、それは単なる理想主義ではなく、マッカーサーの大統領選挙キャンペーンの一環だった、というのが本書の仮説である。

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