アベノミクスの指導者である浜田宏一氏が、MMTを意外に高く評価している。MMTは彼が1970年代に教えていた(私も学生として聞いた)素朴ケインズ主義である。おもしろいのは、彼がリフレ派を卒業したと明言していることだ。
金融緩和の効果がいろんな意味で薄れてきているのは事実です。デフレ脱却では、金融政策だけでなく財政政策も両方が必要なことは、私も「シムズ理論」にふれるまでは、十分、理解していたわけではありませんでした。
そして「私も国際的なマネタリズムという視点でみてきたわけですが、なかなか貨幣の需給だけでは説明が十分でないところが出てきています」という。「国際的なマネタリズム」という言葉は初めて聞いたが、たぶんかつて彼が力説していたマンデル=フレミング理論のことだろう。

これは「変動相場制では財政政策はきかないが金融政策はきく」という理論だが、実際に起こったのはその逆だった。その原因は単純である。金利がゼロに張りついた状況では、利下げで円安にもインフレにもできないからだ。彼もようやくそれを認めたわけだが、こうして誠実に間違いを認める人は少ない。

リフレ派は今、MMTを否定する分派と転向する分派で大混乱だ。財政政策の効果を認めない原理主義的リフレ派は旗色が悪く、間違いを認めないで「本当のMMTはリフレ派と同じだ」と称して転ぶ上念某のような手合いが多い。今後アベノミクスも「第2の矢」の財政政策に重心を移すだろう。

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