長期停滞の現象はゼロ金利とか低成長とか低インフレとかいろいろあるが、本質的な問題は一つしかない:それが一時的な循環か構造的な停滞かということだ。それは誰にも断定できないが、確実に予想できるのは人口減少である。次の図は今後の生産年齢人口増加率の予測だが、2040年まで下がり続け、マイナス2%に近づく。これが長期停滞の最大の原因である。

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2060年までの生産年齢人口増加率の予測(出所:国立社会保障・人口問題研究所)

「マイナス金利になるのは日銀が国債を爆買いしているからだ」という人がいる。そういう面はあるが、現実の実質金利が(実体経済で決まる)自然利子率とそれほど大きく乖離しているとは思えない。金利が人為的に自然利子率より低く設定されたらインフレになるはずだが、インフレ率は1%に満たないので、自然利子率も実質金利に見合う水準(マイナス)だと思われる。現に日銀の資産買い入れは減っているが、長期金利は上がらない。

自然利子率はおおむね潜在成長率に等しいので、生産性が上がると自然利子率も上がる。生産性上昇率は予測がむずかしいが、これを技術進歩率で近似すると、日銀の予測では、自然利子率はベースラインで2060年までに0.5%程度だが、現実の自然利子率はマイナスで、次の図の緑の点線に近い。サマーズの「自然利子率は今後50年マイナスが続く」という予測も荒唐無稽とはいえない。

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2060年までの自然利子率の予測(出所:日銀)

つまり日本の超低金利は、かなり遠い将来まで続くと予想される。それは停滞というマイナス面だけでなく、財政赤字が増えても金利が上昇しないというプラス面もある。アゴラ経済塾「長期停滞の時代」第2部では、日本の長期停滞が今後どうなるのか、どうすればそれを脱却できるのかを歴史的な視野から考える(教室受講の申し込みは木曜午前中まで)。

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